第9話 PHASE1 その5 気分は新婚さん?

「ねぇ、今日の夕飯どうする?」


夏子は冬馬に聞いてみた。しかし冬馬は即答できなかった。


「あー、特に決めてなかったな」


と返事をする。すると夏子が口を開いた。




「ならさ、もう一回一緒に買い物に行かない?


私、冬馬くんと一緒にお買い物したいな。冬馬くん、食べたいものとかある?」


「え?うーん、そうだな……」


冬馬は少し考えた後、答えた。


「焼き肉かな」


夏子はクスッと笑って言った。


「そっか、やっぱり男の子だもんね。じゃあ、お肉屋さんに行ってみようか」


「ああ、そうだな」


そう言って冬馬は玄関に向かった。 そしてその後ろに夏子もついて来る。


彼女は俺の腕に自分の腕を絡ませてくっついてきた。 その仕草にドキッとする。


(ったく、可愛い奴め)


と心の中で呟きながら、俺達はまた外に出て行きつけのスーパーへと向かった。




スーパーでは、夏子があれこれと食材を選んでいた。


「ねぇ、これオーストラリア産だけど広告の品みたい。大きい割に安いし。


あ、これ半額だって♡焼肉じゃなくてトンテキになるけどいい?」


「うん、任せるよ。美味しいものなら文句はないさ。」


「ありがと。じゃあ、蒸し野菜も一緒に作ろうかな? うちに蒸し器とかあるの?」


「シリコンスチーマーがあったはずだけど。それでいいか?」


「わかった。野菜も買おうよ。」


普段は一人で買い物をするのだが、こうして二人一緒に買い物するのも


いいものだなと、冬馬は感じていた。






「あとは、お酒とかも買っていい?」


と夏子がおねだりをしたので、一緒にお酒売り場へ向かった。


専門店ではないので、ありきたりなものばかりだったが、


良さそうなイタリアンワインがあったので選んでみた。


冬馬は普段は飲酒する習慣はないが、たまにはいいだろうと、


レジに持って行って会計した。


帰り道、夏子は何気に俺の腕にしがみついてきた。


彼女の胸が腕に当たる感触にドキドキする。


(まぁ、これも悪くないな)




そして家に帰り着くと、早速夕食の準備に取り掛かった。


まずは肉を焼くためにフライパンを火にかける。


その間に野菜を切ってシリコンスチーマーに入れて、


それを電子レンジで加熱していった。


冬馬は、お米をといで炊飯器に入れて早焚きをした。


ちなみに冬馬は、お米は毎月頒布会で注文している。


今月は、宮城の「だて正夢」という品種を頼んでいた。


結構お気に入りだったりする。


夏子は楽しそうに鼻歌を歌いながら、料理を作っている。


その様子を見ていると、なんだか幸せな気分になってきた。


(世の中のカップルって、こんな気持ちでいるのかな?)


と思いながら、冬馬はワインを飲んでいた。




暫くすると夏子が近づいてきた。 どうやら料理が出来たらしい。


彼女は冬馬の隣に座ると、身体を寄せてくる。 そして肩に頭を乗せてきた。


その仕草にドキッとする。


夏子は冬馬を見つめながら、優しく微笑んできた。


その笑顔にドキッとした冬馬は、思わず目を逸らしてしまう。


すると彼女は冬馬の腕を取り、自分の胸に押し当てた。


柔らかい感触と温もりが伝わってくる。 そして耳元で囁いた。


「ねぇ、おっぱい触りたい?」




「えっ!?」


冬馬は驚きの声を上げる。 しかし彼女は構わず続けた。


「だってさっきからずっと見てるじゃん」


と悪戯っぽく笑う。 そしてさらに強く押し付けてきた。


(これはまずいな)


と思いつつも、冬馬は彼女の誘惑に抗えなかった。 夏子の胸に手を伸ばす。


「んっ、あっ、そこぉ……」


夏子は身体をビクビクさせながら、甘い吐息を漏らす。


そして冬馬に向かって微笑みかけてきた。 その妖艶な笑みにドキッとする。


(ったく、本当にしょうがない奴だ)


と思ったのだった。




「料理、冷めないうちに食べようか。」


「うん、そうだね。」


夏子は恥ずかしそうに俯くと、そそくさとキッチンに戻っていった。


(まったく、照れ屋な奴め)


と思いながら、冬馬は夏子の後を追っていった。

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