第5話 隠し事はすこしずつバレて行く


日曜日に一度戻ります。


―――――


 私は日曜日、隆との楽しかったデートから帰って来るとお父さんから呼ばれた。


「加奈子、ちょっと来なさい」

「疲れているんだけど」

「いいから来なさい」


 帰って来たばかりで隆との事で気分が良くなっていたのに何だろうと思ってリビングに行くとお父さんとお母さんがソファに座って怖い顔をしている。

お母さんが、


「加奈子、昨日、今日と誰と会っていたの?」

「えっ、雄二に決まっているじゃない。思い切り二人で遊んで疲れているのよ」

「そう、雄二君と今日のお昼に家の前で会ったんだけど」

「えっ?!」


「それで、お母さん聞いたのよ。加奈子と一緒じゃないのって。そうしたら雄二君、昨日も今日も貴方とは会っていないと言っていたわ。どういう事?」



 まさか、こんな所でバレるとは。

「仕方ないじゃない。雄二、最近私に冷たいから、クラスの友達と会っていたのよ。お母さん達には雄二と会っていると言った方が安心出来るでしょ」


 今度はお父さんが

「何を馬鹿な事を言っているんだ。雄二君がお前に冷たくなったのはそれなりに理由があるからだだろう。その理由を聞いたのか?」

「聞かないわよ。そんな事」

「何でだ?」

「スマホの連絡先ブロックされたし、学校でも話してくれないし」

「何だって。あの雄二君がそんな事するなんて…。よっぽど理由があるんじゃないのか?」

「さぁ、新しい彼女でも出来たんじゃない。私もどうしても雄二って訳じゃないし」



「加奈子、雄二君は、ご両親が亡くなられて親戚からも追い出されて、辛い思いをして帰って来たんだ。

 だからこそ、お父さんは幼い頃から知っているお前があの子の心を慰めてあげればと思って、お前に雄二君と仲良くなれって言ったんだ。

 お前だって最初は、雄二君と上手く行っていただろう」

「お父さんは、雄二がお金持ちだからあいつと結婚すれば幸せになれるなんて言うけど、そんな保障ある訳ないじゃない。お父さん達が、あいつのお金を欲しいんじゃないの?」


 バシッ!


 私の頬に痛みが走った。


「親になんて事言うんだ。お父さんはお前の事を思っての事だ。もし雄二君がお金が無かったら、一人でいる事に困るなら、俺が養子に貰ってもいいと思っていた位だ。

 高槻さんとは、いつか親戚に慣れるといいですねって言っていた時があった位、俺と高槻さんは雄二とお前の事を大事にしていた。だからお父さんも雄二君の事が大切なんだ」


「そうよ加奈子。雄二君がどういう理由で、連絡先をブロックしたのか、理由をきちんと聞きなさい。もしお父さんとお母さんが納得したならそれでも構わないわ。

今日いきなりは失礼だから、学校で聞くなり明日の夕方でも帰ってから聞きなさい。もし聞くのが一人で嫌だったら、お母さんが付いて行ってあげてもいいわ」

「えっ!」


 不味い、不味い。そんな事したら私が隆と付き合っていた事がばれてしまう。何としても雄二が悪い様にしないと。


「分かった。もう一度話をしてみる。でもこんな状態だから直ぐに出来るか分からないからちょっと待ってよ」

「ああ、そうしなさい」



 夜になり、お風呂に入り終わった私はベッドの上で考えていた。


 なんか面白くない。親は勝手な事を言っているけど、雄二がいない時、先に知り合ったのは隆、そして仲良くなっていた時に雄二はいきなり戻って来た。


 私だって雄二のあの時の顔を見たから、幼馴染として同情した。だから両親の言う通りに雄二に接したけど、勝手に恋心を抱いたのは雄二。


 確かに私も彼の心をへこませない様に言葉を合わせたけど、だからって今になって雄二を裏切ったなんて可笑しい話。


 だって、先に知り合って好きになったのは隆。でもまあいいわ、雄二にはっきり言ってあげればいい。まあ、言い方考えないといけないけど。


 大体、クラスの中でも両親が居なくて親戚に追い出された事をいつまでも売り物にしている陰キャなんて、付き合う気なんてない。


 背が高いだけで、髪の毛はボサボサ、デートすれば景色見るとかだし、ゲーセンもゲームもしない男なんて。相手されている方が奇跡と思って欲しい。


 まあいいわ、一度雄二とはっきり話して、調子に乗んな、勝手にうぬぼんれんよ位言えば目が覚めるだろう。


 私が隆と会っていた所を見られたんだって、単にデート中に鉢合わせしただけ。まあこれでいいわ。とにかく雄二と話ししないと。まあちょっと悪かったわ位の雰囲気で話せば、あいつなんて直ぐに首を縦に振る。




 翌日、私は登校してクラスに入って行くと雄二が坂口と話をしている。あいつも陰キャの一人だ。

 陰キャ同士でつるんでいるのは良いが、あいつが居ると声を掛けづらい。昼休みは、あの二人が学食にでも行ったのか、直ぐにクラスから出て行った。


 昼休みの終わり近くに二人がクラスに戻って来たので、雄二と話そうと思って近づくと、また二人で出て行ってしまった。


 今度は放課後に話そうと思って、授業が終わった後、近付くと直ぐにクラスを出て行ってしまった。


 これでは、話のしようが無い。仕方ない。最後はあいつの家の前で待ち伏せするか。上手く会えるかなんて分からないけど。


 それともクラスの友達に手を貸してもらって話をつけるか。でもこちらは、両刃の危険がある。隆と付き合っている所を皆に知られたくない。とにかく外で会う事を考えるか。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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