第4話 証拠はしっかりと取らないと


時間を置いてしまいました。急ぎ投稿です。


-----


 俺は、加奈子の後を付かず離れずついて行く。可愛い洋服を着ている。俺と会う時には見た事のない服だ。あいつ用なのかな。


 駅から電車に乗った。車両を変えて乗っているので彼女が気付くとは思わないが、なるべくジッと見ない様にしている。加奈子の周りの乗客が彼女をジロジロ見ているのが分かる。


 二駅目で降りた。やはりこの前と同じ場所の様だ。俺は人混みに紛れながら後ろをついて行くと家電製品ショップの前であの男が待っていた。

 加奈子が笑顔で何か言っている。直ぐに腕を組んでそのまま坂を登って行く。間違いない様だ。


 少し離れてついて行くと右に曲がり坂道を登って行った。俺は直ぐにスマホを録画モードにして後ろから付いて行くと一軒のラブホの前で二人は立ち止まり顔を見合わせて微笑むと中に入っていた。



 吐き気がするような気分だ。分かってはいたが、事実を目の前に突き付けられると気持ち悪くなって来る。


 このまま立ち去っても良いが、これだけでは証拠として弱い。入った時刻が分かる以上、出てくる時も撮って何時間居たかも分かれば十分だろう。


 かと言って、この辺に全く疎い俺は、元来た道を少し戻ると丁度喫茶店があった。中に入ると数人の客とたばこの匂い。


 好きではないがここからならあいつらが入ったラブホの入口が見える。その上スモークガラスになっているから外からは見えない。


 中に入って窓際の席に座ると、丁度腹も空いて来たところなので、カツカレーの大盛りを頼んだ。多分直ぐには出て来ないだろうから飲み物は順番ずつにするつもりだ。



 カツカレーの大盛りをゆっくり食べて、コーヒーを飲んで、そしてまたジュースを飲んで、何とか引っ張って二時間半。まだ出て来ない。店の中はそんなに混んでいないので注文している限り大丈夫そうだ。


 経験のない俺は、そんなに長くするものなのか時間の検討も付かずに待っていると次のジュースを頼もうとしたところで出て来た。なんと三時間もあの中に居たんだ。


 出て来た時の加奈子の顔は嬉しそうに自分の腕を男に巻き付けて男の腕に顔を付けている。

 喫茶店の窓の内側からスマホを録画モードにしてずっと喫茶店の前を通り過ぎるまで撮った。


 俺は、一度録画を止めると直ぐに会計をして喫茶店の外に出た。ここまで撮れば十分だろうと思ったけど、距離を取りながら二人を付けて行くと、何とビルの合間に入って行った。


 何する気だ?そのまま俺もそこに入って、切れ目でちょっと様子を覗うと二人でキスをしている。

 直ぐにスマホを録画モードにして撮っていると、男の手が加奈子のお尻を触ってスカートの中に入れた。


 後は、言うのも呆れる事をし始めた。そろそろ終わりになりそうな時、俺はスマホの録画モードを止めて、元の道へ戻った。



 もう十分だ。あんな女だったとは。俺はキスも結婚するまで駄目と言われたから彼女は清廉な女性だと思っていた。これじゃあ、なんて言うんだ、世の中で言うとビッチってやつか。


 俺の心の中で加奈子のイメージがドロドロな黒色で染められて行った。




 日曜日、スマホの録画をPCにもコピーした。万一がある。加奈子は日曜日も出かけたが、もうストーカーは止めた。これで充分だ。



 午前十二時過ぎたところでお腹が空いて来た。今日のお昼分と今週一週間分の食べ物の買い出しに行くか。


 前までなら加奈子と一緒に買い物に行って、二人で食べた時も有ったけど、もうそれはあり得ない。

 玄関を出て駅の方に向かおうとしたところ隣の家から加奈子のお母さんが出て来た。


「あら、雄二君、加奈子と一緒じゃなかったの?」

「いえ、約束していませんけど」

「おかしいわね。あの子今日も雄二君と会うんだと言って出て行ったのに。昨日は一緒だったんでしょ?」

「いえ、会っていません」

「えっ、それ本当なの?」


「あの、急ぐんでもう行っていいですか?」

「あっ、ごめんなさい」

 そう言うと加奈子のお母さんは家に戻ってしまった。



 俺は駅の近くのスーパーで今週のメニュー、と言ってもあまり料理の出来ない俺はほとんどレトルト食品や冷凍食品、缶詰やインスタント味噌汁やスープ、カップ麺まで買うとレジで精算してエコバッグに入れた。結構パンパンだ。



 家への帰り道、また加奈子のお母さんと会って何か言いたそうな顔をしていたけど、何も言われなかったのでそのまま家に帰った。


 買って来た食品?を棚や冷凍庫に仕舞って、昼の支度…カップ麺のお湯を沸かしながら


 もう加奈子と会う事も無いな。どうしようかな。勉強でもするか。

 普段から予習、復習はしているけど、なんか足りない感じだ。担任の先生からは進路を早く決めろと言われている。


 俺の事情も分かってくれているので今まで無理は言って来なかったが、流石に学校側でも色々有るのだろう。

 まあ、模試の成績は良いし、適当な大学には入れそうなんだけど。


 でも保証人いないしな。前なら加奈子の両親が、保証人になってくれる様な事言っていたけど、もう流石に無理だろう。どうしようかな。


 塾に行くのも保証人いるし。そうだ前田さんに頼むかな。でも財産管理お願いしているからって、保証人をお願いするのはどうなんだろう。取敢えず相談してみるか。お金取られるかも知れないけど、仕方ないや。


 土日、家に一人で居ても仕方ないし、普段帰宅部の俺は早く帰ってもする事が無い。


 沸騰したお湯をカップ麺に注いだ後、直ぐに前田さんに電話入れた。塾が決まったら教えてくれと言われた。

 

 俺の事は信用できるし、この位なら金はとらないと居てくれた。嬉しい限りだ。




 翌朝、学校に行くと

「おはよ雄二」


 いつもながら竜馬は学校に来るのが早い。

「おはよ竜馬」

「雄二、証拠何とかなりそうか?」

「ああ、昼休みに見せるよ」



 昼休みになり、俺は竜馬と一緒に学食に行く事にして席を立つと加奈子が気まずそうな顔をして俺を見ている。それを無視して竜馬と学食に行くと


「雄二、なんか深山さん、先週と違った雰囲気だったな。心当たり有るか?」

「さあ、もう口にも出したくない」

「そうか、もうそこまでになったか」



 昼休みが終わった後、校舎裏の花壇の前にあるベンチに行った。幸い先客は居なかった。

「見てくれ、これ」


 俺はラブホの方を先に見せると

「うわっ、本当だ。これで充分だな。もし話がこじれてもこれが十分な証拠になる」

「もう一つ見せてやる」


 俺はビルの陰で行為していた二人の録画も見せた。


「こ、これって。俺、深山さんの見方、百八十度変ったわ。こんなん人だったとは。でもこれネットで売れそうなくらい酷いな」

「なんだそれ?」

「いやな、こういうの買ってくれるサイトがあるんだよ」

「ふうん」


 そこまでする気は無かったので竜馬からの話はここまでにして終わった。それから俺達が教室に戻ると加奈子が俺に近付いて来た。


「竜馬、ちょっとトイレ、行くか」

「おう」



 男子トイレの中で

「竜馬、加奈子が俺に近付いてきたら、何でもいいから俺に話しかけてくれ。あいつを遮る様にしてくれ」

「それは構わないが俺もずっとお前の傍に居る訳じゃ無ないぞ」

「その時は、自分で何とかする。逃げるしかないけどな」


 その日は、授業が終わると加奈子が俺に近寄って来そうになったので、急いで学校を出た。パソコンで調べた塾に行く予定も有ったからだ。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る