第3話「ステルスキッド」
「ステルスキッド…?」
「まぁ、上手く言葉から推測してくれ。」
この人…俺が英語できねぇの知ってて言ってんのか…?無意識でもムカつく。
「すいませんね。馬鹿なもんで英語の意味もわかりません。」
「こんな初歩的なものが…?君は本当にあの人の子供か?君の母親は性格こそ大雑把だったが非常に知能レベルは高かったぞ。」
どうやらこいつ、煽りレベルは80くらいあるようだ。
「まぁ、簡単に説明しよう。ステルスとは
隠密などの意味合いで、キッドというのは
キッズとまぁほぼ同じ意味…と捉えてくれて構わないよ。隠密、子供。未成年のスパイといった感じだ。」
「未成年がスパイに…?いや、まぁさっきからの発言を聞くとそういうことなのでしょうけど…いやいや、できるんですかそんなこと。」
「できる。保護者等の問題はあまりないしな。稀に親がいる子もいたりするが。」
聞けば聞くほど謎が深まるとはこのことだろう。情報量が多すぎて頭が痛い。
「まぁ軽く説明しよう。我々の所属する組織は「KAGUYA(カグヤ)」という名称でな。
世界的な巨大諜報組織だ。政府には属していない。その分色々自由にできるわけだが。」
カグヤ…はぁ。全部嘘と言われたら一瞬で
納得できるほどの設定。そしてネーミングセンスがなさすぎる、この人たちは。カグヤなんて最初につけたやつの気がしれない。
「まぁ名前からも推測できる通り日本由来の組織なのは分かるだろう。俺もあまり詳しいカグヤの歴史はわからないのでそこは省かせてもらう。そして本部はかの超大国、アメ
リカ。もちろんそれぞれの所属国にその国のカグヤ本部は存在するぞ。いや、支部と言った方が正しいか。まぁ、大元はアメリカにあるとだけ覚えてくれ。」
聞けば聞くほど厨二病かなんかなのかと疑ってしまうが今は疑いの思考を捨てて話を聞くとしよう。
「そんでまぁわかるだろうが我々諜報員は
人手不足なのだよ。この情報戦の世の中だというのにね。カグヤに限らず世界的にだ。まぁ危険な仕事だしそれに見合う人材を引き込むのが難しい。」
「カグヤはわりと人手が充実してる方なんじゃないんですか?世界的巨大組織言うてたし。」
「まぁ。そうだな。確かに他組織に比べれば充実…とまではいかないが安定はしている。しかし人手が必要なのには変わりないしこのままだと新しい人材が減っていく一方なわけだ。そこで我々が導入した制度がステルス
キッドというもの。未成年に諜報活動をさせるという馬鹿げた制度だ。おそらく世界でも我々が初だろう。」
確かに馬鹿げている…漫画の世界かなんかだけだろうそんな制度は。カグヤの上層部は
よっぽどの厨二病なのだろうか。
「しかし世界の途上国では子供が徴兵されるといった話も聞くだろう。案外普通なのかもしれない。そういった話は。」
いやいやいや、どう転んでも普通ではないだろうな。
「それだけ新たな人材が減っているんだよ。諜報界は。といってもカグヤの総人員は8万人ほどいるがね。」
「8万っ!?めちゃくちゃ多いじゃないすか、わからんけど…」
「数年前までは10万人超もいたんだぞ!なのに今じゃこのありさま。最近危険な仕事もも多いからね。死亡者も後をたたないしやめてしまうやつらも多いんだよ。」
「えぇ、辞退できるんですか?」
「まぁ特殊な人間でない場合途中辞退は記憶を消し、いたという証拠やそいつの身の回りからも色々とうまい具合に我々の存在を消させてもらうことにはなるが。」
「入るのも出るのもリスクが必要…」
「大したリスクじゃないさ。そんでね、人数比率は大人のエージェントの方がちょっと上回るくらいかな。ステルスキッドも大人の
連中も4万:4万くらいだよ。」
「世界に未成年のエージェントが4万人も…。」
「これは全くの偶然だが、君の身近にもステルスキッドはいるよ。」
「…情報量が多すぎて驚きもでないっす…
さっきから驚きも重なって…頭壊れますよ
俺マジで。」
「ハハハ、勝手に壊れろ。」
なんだこのおっさんマジで。
「そしてステルスキッドの加入条件はほぼ
ブレない。まず人よりめちゃくちゃ優れた
能力。そして他の我々が必要とする特殊な
能力。これは絶対だ。そしてステルスキッドには全体的に見てなんらかの理由で親がいない者が多い。おそらく全体の6割以上はそうだ。その他の4割弱は様々な理由で諜報活動に理解がある親を持っている。」
「親が諜報員とか…?」
「あぁそれはない。任務等以外で恋愛や結婚するのは我々の組織では禁止だよ。もちろん君らもそうだ。可愛い子見つけても手を出しちゃいけないぞー?」
ウヨウヨと気持ち悪い手の動きをしながら男は言う。いちいち尺にさわるなこの人。
…見逃していた。俺はいきなりとあることに気がつく。
「じ、じゃあ母さんは…?母さんはなぜ…」
「…。まぁ、色々あったんだよ。君みたいなガキには到底理解できないことさ。」
「なんだよそれ…一番だるいやつ。」
「君が一人前のエージェントになったら、
いつか教えてやるよ。」
「いや、俺が一つの任務をこなした後でも
なぜエージェントになると断言できるんですか。」
「わかるからさ。君はなる。断言しよう。」
俺はこの時心に決めた。絶対にエージェントなんぞにはならん。さっさと一時加入して
パッと任務をこなして母さんのこと聞いて
また日常生活に戻ろう。
「詳しい原則などはまた後でだ。とりあえず君の実力を見ようか。もう知能はわかっているし、その身体能力とやらを見せてもらおう。」
「なんでもいいっすけど…早く終わらせてくださいね。今日金曜だけど宿題意外と多いんすから。」
「いや、それは無理だ。とりあえずここから
1時間ほど離れた場所にレッツゴーだね。」
俺…今日親死んだのにちょっとも休めないのか…。心の整理つける暇ないのか…。
「おっとその前に軽く自己紹介といこうか。僕の名前は花山将吾。これから君の先輩になる男だ。こき使うつもりだからそこんとこよろしく。」
やっぱ尺に障るんだよなこの男…否、花山
さん。
「あ、遠藤正木っす。中2でサッカー部っす。」
「うん。知ってる。」
そして流れるよくわからない沈黙。
「さ、いこうか。中坊がレクサスに乗れる
機会なんてそうそうないぞ。ありがたく思うんだな。」
「はいはい。」
「なんか反応軽くなってきたね。このまま
舐められていくと先輩としての威厳が失われていく気がするんだが…。」
そう言いながら立ち上がり玄関へ向かっていく花山さん。
「あ、コップ洗っといて。」
一つ分かったことがある。俺はこの人が嫌いだ。性格、人間性が俺の嫌いな人種そのものだ。
「はい…」
「先に車出しとくからさ。コップ洗い終わったらスマホだけ持ってきてくれ。他に持っていくものはない。早くしてくれよ。」
「はいはい…」
そして手早くコップを洗い日中充電してあったスマホを取り玄関へ向かおうとしたその時だった。
「しつれーしまぁーす。」
玄関の開く音とともに家の中に入ってくる
謎の声。花山さんではない。
おそるおそるリビングのドアを開け玄関を覗く。
「あ、遠藤正木くん?殺しにきましたぁ。
よろしくね。」
そこには目の下に真っ黒なクマがある高身長な男が立っていた。直感でヤバいと、俺は感じた。
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