第12話(3)戦隊共闘

「雑魚戦隊じゃないよ! 遊戯戦隊エレクトロニックフォースだよ!」


 シアンが声を上げる。


「そんなことはどうでもいい……」


「ど、どうでもいいって……」


「前回わざわざ見逃してやったというのに、性懲りもなくまた来たのか……」


 狼怪人が両手を広げて呆れた仕草をする。


「ぜ、前回とは一味も二味も違うよ!」


「そういうのは大抵あてにならん……」


「えっ⁉」


「この歴女戦隊もとんだ期待外れだったからな……」


 狼怪人が倒れているヒストリカルガールズを指し示して笑う。


「そ、それは、連戦の疲労が溜まっていたから……!」


「はっ、言い訳だけは達者だな」


「なっ⁉」


「大体、集団で一体の怪人を相手にしている癖に何が疲労だ?」


「む……」


「戦隊ヒーローは戦隊疲労の間違いか?」


「……それはあまり面白くないかな」


 シアンが首を傾げる。


「べ、別に面白さは狙っていない……!」


 狼怪人が少し恥ずかしそうにする。


「あ、そうなの……」


「そ、そうだ……」


「ごめん、どうぞ続けて……」


 シアンが話の続きを促す。


「……と、とにかく何が言いたいかと言うと、貴様ら戦隊ヒーローという存在はヒーローの風上にも置けんということだ」


「……!」


「違うか? 一人では何も出来ない。群れていなければ相手にも立ち向かえない。これのどこがヒーローだ? ただの雑魚だな。いいや、雑魚という言葉を使うことすら雑魚に失礼か」


「……‼」


 シアンが狼怪人に飛びかかる。狼怪人の反応が遅れる。


「むうっ⁉」


 シアンの拳が狼怪人を殴り飛ばす。


「うおおっ!」


 シアンがそこに追い打ちをかける。


「ちいっ!」


 狼怪人が体勢を立て直す。


「はああっ!」


「くっ!」


 シアンがラッシュをかける。狼怪人が防戦一方になる。ブラウンが叫ぶ。


「シ、シアンが押しとる!」


「いや、あれではマズい……」


「えっ⁉」


 ブラウンがグレーの方に顔を向ける。


「……ふん!」


「ぼはあっ……!」


 狼怪人の爪による攻撃が決まり、シアンが後退して膝をつく。オレンジが驚く。


「カ、カウンターを食らった⁉」


「怒りに任せた攻撃だけにパターンが読みやすい……!」


「そういうことだ……」


 パープルの言葉にグレーが頷く。狼怪人が爪をかざす。


「ふ、ふん、短期間で驚くべきほどの成長だな。ここで消しておくか……」


「ア、アカン! 援護せんと!」


「!」


 ボールとバットを出現させたブラウンが、バットでボールを打つ。


「『パワフルバッティング』!」


「おっと!」


「か、かわしよった⁉」


「大技はかわしやすいん……だよ!」


「がはあっ……!」


 爪の斬撃でブラウンが倒れる。パープルが赤い玉を四つ出現させ、炎を巻き起こす。


「炎で焼き尽くしてあげますえ!」


「風で消すまでだ!」


「ぶはあっ……!」


 爪の斬撃が炎を消し、斬撃を食らったパープルも倒れる。オレンジが銃撃する。


「! 正確な射撃だな! それ故に読みやすい!」


「ぐはあっ……!」


「ちっ!」


「悪くはないが、その程度の鞭など当たらん!」


「ごはあっ……!」


 狼怪人の放った爪の斬撃で、オレンジとグレーも倒れる。狼怪人が呟く。


「……少々焦ったが、所詮はこんなものか……」


「ま、まだだよ……」


「⁉」


 狼怪人が振り返ると、シアンが立ち上がっていた。


「……じゃない」


「何?」


「弱いから群れるんじゃない……絆の力で戦う為に集まっているんだ……!」


「はっ! わざわざ立ち上がって言うことがそれか! 目ざわりだ、消えろ!」


「そうはさせないわ!」


「なにっ⁉」


 狼怪人の振り下ろそうとした爪をヘイアンジュウニヒトエが防ぐ。


「間に合った……」


「き、貴様、まだ立ち上がれたのか⁉」


「私だけじゃないわよ!」


「なんだと⁉ はっ⁉」


 狼怪人が周囲を見回すと、倒れていたヒストリカルガールズが立ち上がっていた。


「えいっ!」


「むうっ⁉」


 ヘイアンジュウニヒトエが狼怪人を突き飛ばし、倒れそうになるシアンを支えて、さらに周りに声をかける。


「こんなものじゃないでしょ⁉ エレクトロニックフォ―ス!」


「……ええ」


 オレンジがすくっと立つ。


「………そうどすなあ」


 パープルがゆっくりと立ち上がる。


「…………ええ準備運動やったわ!」


 ブラウンが飛び上がる。


「……………仕切り直しだね」


 グレーが体勢を立て直す。


「ふふっ、そうこなくっちゃね……!」


 ヘイアンジュウニヒトエが笑う。


「なっ……」


「さあ、戦いはまだこれからよ!」


 ヘイアンジュウニヒトエが叫ぶ。


「ふん……何度やっても同じことだ!」


 狼怪人が爪を構える。


「行くぞ! 飛ばせ!」


「ほいきた!」


 ブラウンがブレイクダンスで、地面の石をいくつも蹴り上げる。それをセンゴクレッドが槍で突き、狼怪人に向けて飛ばす。


「うおっ⁉」


 狼怪人は石礫を食らい、後退する。


「援護は任せるぞ!」


「了解!」


 オレンジの射撃とバクマツダンダラの剣による攻撃が同時に繰り出される。


「ぐおっ⁉」


 連携攻撃を食らった狼怪人はよろめく。


「頼むぞ! 『金閣寺フラッシュ』!」


「……それっ!」


 ムロマチゴールドが輝きを放って、狼怪人が目をつむったところをグレーが鞭を振るって、足を絡め取り、空中に投げ飛ばす。


「むおっ⁉」


「今よ!」


「ええ!」


 モモヤマピンクがバラの花を咲かせ、緑の玉を四つ合わせたパープルがその花を吹かせる。バラの花吹雪は空中で身動きが取れない狼怪人に刺さる。


「ぶおっ⁉」


「とどめよ!」


「は、はい! どうすれば⁉」


 シアンがヘイアンジュウニヒトエに問う。


「雰囲気で!」


「ふ、雰囲気で⁉」


「『キモノアタック』!」


「『琵琶湖の波紋』!」


「ぬおおっ⁉」


 狼怪人が地上に落下する。エレクトロニックフォースがシアンの下に駆け寄る。


「波紋どすか……」


「もうちょっとなにか無かったのか?」


「ビシっと決めて欲しかったね……」


「アドリブ弱いな~」


「み、皆が強すぎるんだよ! うん⁉」


 狼怪人が立ち上がる。

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