第12話(2)エレクトロニックフォース、出動!

「……バッファロー怪人まで再生していたか……」


 月曜朝の喫茶店で報告を受けた彩があらためて呟く。秀が頷く。


「ええ、前回の対戦時よりも強力になっていました」


「それは厄介な話やな……」


「ほんまどすえ……」


 彩の言葉に心がうんうんと頷く。


「しかし、そないな奴に目を付けられるとはな……なかなかやるやないか」


 彩が笑みを浮かべる。


「いやいや、笑いごとやないですよ……」


「なんでや、自分らもメジャーになってきたってことやろ? メジャーになるっちゅうことはああいう連中をどんどんと相手にせなアカンのやで?」


「う~ん、それは自信が無いかなあ……」


 躍が腕を組んで首を傾げながら苦笑する。


「そういう時こそトレーニングだ!」


 命が声を上げる。躍が手を左右に振る。


「いや、ハードなやつはちょっと……」


「ハードなトレーニングをこなしてこそ、自信もつくぞ!」


「分からなくもないですが、それで潰れてしまっては元も子もありません……」


「まったくその通りだね……」


 輝の言葉に秀が頷く。


「しかし、あの真・必殺技には驚いたで……どうやったん?」


 彩が凛に尋ねる。


「分かりません……」


「分かりませんって」


「体が勝手に動いたというか……」


「理論的に言えば、いわゆる『火事場のクソ力』というやつでしょう……」


 真白が眼鏡を抑えながら呟く。


「……理論的?」


 輝が首を傾げる。心が凛に尋ねる。


「あれ、もう一度出来はる?」


「いや、どうだろうね……」


「やはりトレーニングだ! 体にあの動きを覚え込ませれば良い!」


「そうですかね!」


「おい凛、ノリ気になんな! この人真に受けはるから! !」


「警報や! ……これは……救援要請や!」


「⁉」


「はあっ!」


「ふっ……」


「なっ⁉」


 センゴクレッドの繰り出した槍の上に狼怪人が乗っている。


「槍さばきに自信があるという話だったが、とんだ評判倒れだったな……」


「くっ……!」


「ふん!」


「がはっ⁉」


 狼怪人の蹴りを食らい、センゴクレッドが倒れる。


「レッド! おのれ!」


 バクマツダンダラが斬りかかる。狼怪人がそれをかわす。


「ふん……」


「は、速い⁉」


「……貴様が遅いだけだ!」


「ぐはっ⁉」


 狼怪人の拳を食らい、バクマツダンダラが倒れ込む。


「壬生狼も所詮まがいものの狼に過ぎんか……」


「ダンダラ! くっ! 『金閣寺フラッシュ』!」


「むっ⁉」


 ムロマチゴールドの放った輝きに、狼怪人が目をつむる。


「今だ! ……ごはっ⁉」


 飛び込んだムロマチゴールドの腹部に狼怪人のエルボーが決まる。


「視界を奪ったくらいで調子に乗るな……気配さえ感じればどうにでもなる……」


「ぐっ……」


 ムロマチゴールドが崩れ落ちる。


「ゴールド! これなら!」


 モモヤマピンクが右手を振ると、一面に花畑が広がる。


「くだらん……!」


 狼怪人が花畑を踏み荒らす。モモヤマピンクが驚く。


「そ、そんな⁉ 花々の美しさで戦意を失うはず……」


「俺がそんなわけないだろう!」


「ぶはっ⁉」


 狼怪人の蹴りでモモヤマピンクが倒れる。


「ピンク! 『キモノアタッ……ぼはっ⁉」


 狼怪人が自らの爪を光らせる。


「厄介な技を出される前に先手を打った……」


「つ、爪の斬撃……なんて破壊力なの……」


 着物を切り裂かれたヘイアンジュウニヒトエが倒れる。


「歴女戦隊ヒストリカルガールズ……存外大したことは無かったな……放っておいても良いのだが、色々とうるさいからな……一応始末しておくか……」


 狼怪人が手を掲げながら呟く。


「~~~♪」


 そこに大音量で曲が流れる。


「な、なんだ⁉ この音楽は⁉」


「『遊戯戦隊エレクトロニックフォース!』」


「エレク! トロ! ニック!」


「ワン! ツー! スリー! フォース!」


「もひとつ合わせて、エレクトロニックフォース!」


「走れ! 明日に向かって~!」


「戦え! 未知なる存在と~!」


「砕け! 恐怖と野望を~!」


「守れ! 平和と未来を~!」


「遊べ! 戯れ! eスポーツ!」


「チームワークを育め~オンラインゲーム~」


「楽しさ面白さの洪水~ソーシャルゲーム~」


「腰をじっくりすえて~コンシューマーゲーム~」


「腕試しだよ~アーケードゲーム~」


「色とりどりのゲームとヒーロー~」


「オレンジ色の光~」


「茶色の大地~」


「水色の湖~」


「灰色の風~」


「紫色の楽園~」


「凛と輝く五色の戦士~」


「ラララ~」


「秀でた電脳戦~」


「希望と愛と夢を胸に抱き~」


「サイバーな風に心躍らせ~」


「頑張れ! 負けるな! 力の限り!」


「エレクトロニックフォース~!」


 凛たち五人が横並びに立つ。


「な、なんだ……」


 狼怪人が唖然とする。


「~フゥー……」


「まだ続いているのか⁉」


「ラブ&ピース……」


「な、何か囁いた!」


 狼怪人が困惑しながら凛たちを見つめる。


「……みんな、準備は良い?」


「……!」


 凛の問いに四人は揃って頷く。


「それじゃあ、変身だ!」


 凛たち五人がコントローラーを装着したコネクターに繋いで叫ぶ。


「「「「「『コントロールOK! ゲームスタート!』」」」」」


「⁉」


 凛たち五人が眩い光に包まれ、仮面とタイツで顔と体を覆う。


「『空の様に天衣無縫! 水の様に自由自在! EFシアン!』」


 シアンがワンツーパンチの後、右足で前蹴りを入れる。


「『元気サンサン! やる気マンマン! EFオレンジ!』」


 オレンジが銃を構える。


「『グー、チョキ、パー! EFパープル!』」


 パープルがじゃんけんをする。


「『ニッポン、茶々々! EFブラウン!』」


 ブラウンがチアダンス風に踊る。


「『君とボクのシンデレラストーリー! EFグレー!』」


 グレーが左手で胸を抑え、右手を差し出す。


「PEACEボタン連打‼ 五人揃って……」


「「「「「『遊戯戦隊エレクトロニックフォース‼』」」」」」


「ボ~ン‼」


「いや、爆破音、自分で言うんか~い!」


 シアンの叫びにブラウンがすかさず突っ込みを入れる。


「……?」


 狼怪人が首を傾げる。


「あ、あの、今のは、緊急出動の為に爆破の許可申請が出来なかったので、セルフで爆破音を言っちゃうっていう……」


「い、いや、だからシアン! いちいち説明するのはサブいって!」


「誰かと思えば、いつぞやの雑魚戦隊か……」


 狼怪人がエレクトロニックフォースの方に向き直る。

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