第11話(4)月曜朝の戦い(ただし早朝)

                  ♢


「おいっ! なんで全員集合していないんだ⁉ お前ら二人だけとはどういうことだ⁉」


 喫茶店近くのグラウンドで命が輝と躍に問う。


「ええっと……」


 輝が後頭部を抑える。


「たるんでいるんじゃないのか⁉」


「それについては否定しませんが……」


「まったく……どういうことなんだ⁉」


「そんなん答えは簡単ですよ……」


 躍が口を開く。


「なんだ?」


「……朝早すぎますって!」


「そうか?」


 命が腕を組んで首を捻る。


「そうですって! 今何時やと思っているんですか⁉」


 命が時計を確認する。


「……4時だな」


「人によってはまだ深夜!」


 躍が声を上げる。命も負けじと声を上げる。


「仕方がないだろう!」


「何が仕方ないんですか⁉」


「お前ら全員の都合がつくのが、月曜日の朝しかないのだから!」


「そ、それは……」


「それともなにか⁉ 個別にトレーニングするか⁉ 別にそれでも構わんぞ⁉」


「マ、マンツーマンはちょっと嫌やな……」


 躍が小声で呟く。


「おはよう……」


「おはようさん……」


「お、おはようございます……」


 そこに秀と心と凛が寝ぼけ眼のままグラウンドに現れる。命が頷く。


「よし、全員揃ったな! それではトレーニングを始めるぞ!」


「あ、あの! ウチらはeスポーツなんですよ……? 体がキツいのはちょっと……」


 躍が恐る恐る確認する。命が再度頷く。


「分かっている! ちゃんとそれ用にメニューを組んだ! まずは『仁狼』だ!」


「朝から頭使うやつはキツいっす! おっ! 警報や! それじゃあ出動してきます!」


 五人はこれ幸いとグラウンドを後にする。


「ふははっ!」


 公園で怪人が派手に暴れている。


「そこまでだ!」


「んんっ⁉」


 怪人が暴れているところにエレクトロニックフォースが駆け付ける。


「お、お前は……!」


 グレーが怪人を見て驚く。


「ふん……」


「エビ怪人の……復活怪人!」


「えっ⁉」


 シアンの意外な言葉にエビ怪人が面食らう。


「あら? 違った?」


 シアンが首を捻る。


「なんでそこまで再生怪人をかたくなに避けるんだ……」


 オレンジが呆れ気味に呟く。


「ま、まあいい! 来ると思っていたぞ、エレクトロニックフォース!」


「へえ、わたくしらがお目当てどすか?」


 パープルが不思議そうに首を傾げる。


「この時間帯ならば貴様らが高確率で出動してくると思ったからな!」


「! げ、月曜日の朝にした甲斐があった……!」


 シアンが目の辺りを抑える。


「何を目頭熱くしとんねん!」


 ブラウンが声を上げる。シアンがそれにすかさず反応する。


「アタシたちの認知度が上がってきたんだよ⁉ これを喜ばないで何を喜ぶの⁉」


「お、おう……」


 シアンにブラウンが気圧される。


「そっちで勝手に盛り上がるな! 貴様らを倒す!」


 エビ怪人が公園の噴水に入り、そこでぴちぴちと飛び跳ねる。すると、水滴が銃弾のような鋭さでエレクトロニックフォースに襲いかかる。シアンが驚く。


「うわっ⁉」


 エレクトロニックフォースはなんとかそれをかわす。物陰に隠れてオレンジが呟く。


「まさかあのような攻撃をしてくるとはな……」


「なかなかに厄介どすなあ……」


 パープルが顎をさすりながら呟く。


「以前は戦闘員に戦わせていたが、単体でもやるね。なるほど、パワーアップしている……」


 グレーが腕を組んで頷く。


「どないするんや⁉ 容易には近づけんで⁉」


 ブラウンが皆に声をかける。


「まあ、それでも戦いようはあるさ……皆、こっちの物陰に来てくれ!」


 グレーが手を空に掲げる。大きい武器が降ってくる。五人は集まった物陰でそれを受け止める。シアンがグレーに尋ねる。


「グレー! これは⁉」


「弓矢さ!」


「弓矢⁉」


「そうだ! 皆、弓の部分を持って、上の方に向けてくれ!」


「こ、こう⁉」


「良いぞ! ボクが矢を引っ張る! ……それっ!」


「ぐあっ⁉」


 シアンが矢を離す。弓から放たれた矢が山なりの軌道を描いて、エビ怪人に突き刺さる。エビ怪人は倒れて地面に転がる。グレーが腰に両手を当てる。


「これが『エレクトロニックアロー』さ……」


「物陰から山なりに放たれたら、意外と反応するのは難しいな……」


 オレンジが頷く。


「ぬおおっ!」 


 エビ怪人が咆哮とともに巨大化した。シアンが声をかける。


「よし! 皆、エレクトロニックインパクト出撃だよ!」


 五人が合体したエレクトロニックインパクトに乗り込む。エビ怪人がさらに咆哮する。


「ぬおおおっ!」


「ふむ、いつもより派手に飛び跳ねてますなあ……」


「いつもを知っとんのかい」


 パープルの呟きにブラウンが突っ込みを入れる。


「グレー! お願い出来るかな⁉」


「任せておいてくれたまえ!」


 シアンの指示を受け、グレーが左腕を操作し、腰部から鞭を取り出す。


「⁉」


「ちょっと大人しくしたまえ!」


「ぬおおおおっ⁉」


 エレクトロニックインパクトが鞭を振るい、エビ怪人に当てる。攻撃を食らったエビ怪人が仰向けに倒れて爆散する。


「やったあ! 決まった! 『インパクトブレイク』!」


「ざっとこんなものさ……」


 ガッツポーズを取るシアンと対照的にグレーがクールに振る舞う。

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