第11話(3)完全なるオリジナル

                  ♢


「納得がいかないです!」


 輝がカウンター席のテーブルをドンと叩く。


「お店で暴れんといて~」


 躍が声をかける。


「あ、ああ、悪い……すみません、マスター」


 輝が躍とマスターに謝罪する。


「何が納得いかないんですか~?」


 輝の隣に座る真白が首を傾げる。


「何故、キャノンが無料ダウンロードコンテンツなんですか⁉」


「ああ、その件ですか……」


「結構気にしていたんやな……」


 真白が頷く側で躍が苦笑する。


「戦隊ヒーローに合体武器というのはわりとつきものです」


「ええ、それくらいは知っているつもりです」


「その中でもキャノン砲というのは定番です」


「そ、そうなんですか?」


「ただの定番じゃないですよ……ド定番です……!」


「ええっ⁉」


 輝が驚く。真白が話を続ける。


「それ故に無料ダウンロードコンテンツとさせて頂きました。サービス、ログインボーナスのようなものです。ご納得頂けましたか?」


「う、う~ん……」


「これはご相談にはなりますが、課金することでアップデートすることも出来ますが……」


「ぜ、是非ともお願いします!」


「ちょ、ちょっと! 課金はよう考えてからの方がええで!」


 前のめりになる輝を躍が慌てて止める。それを見て心が微笑む。


「博士はんはなかなかの商売上手どすな~」


「心くん、君のボムはなかなかお金がかかっていたようだね?」


「ええ、ここでケチっても仕方ありまへんから。目一杯課金させてもらいました」


 秀の問いに心が頷く。凛がテーブルに突っ伏す。


「う~ん、資金力じゃあ心ちゃんに敵わないよ~」


「凛くんは満足いく武器が手に入らなかったのかい?」


「いや、リーダー割が効いたから、結構安く良い武器が手に入りましたけど……」


「リ、リーダー割⁉ そ、そんなのがあるんだね……むっ! 警報か、出動だ!」


 五人が喫茶店を飛び出す。


「カカカッ!」


「そこまでやで!」


「むっ⁉」


 怪人が暴れているところにエレクトロニックフォースが駆け付ける。


「ア、アンタは……!」


 ブラウンが怪人を見て驚く。


「ふん……」


「カラス怪人の再生怪人……に憧れている怪人!」


「カアッ⁉」


 シアンの思わぬ言葉にカラス怪人が面食らう。


「シアン、ちょっと黙っといてくれ……」


 ブラウンが頭を抑える。


「あれ? 違った?」


 シアンが首を捻る。


「だからそんなややこしいことはしないだろう……」


 オレンジが呆れる。


「と、とにかく貴様らを倒すため、地獄の底から蘇ったカ~!」


「……う~ん、ワンパターンどすなあ……」


 パープルが呟く。


「カッ⁉」


「そう思いまへんか?」


 パープルがグレーに問う。


「そうだね、ボクもそう思った……あれなのかな? 一度地獄に行くと、同じような退屈なセリフしか言えない縛りでも出来るのかな?」


「あいにく地獄とは縁が無いからさっぱり分かりまへんけど……」


 グレーの問いにパープルが首を捻る。


「カアッー! 許せん!」


 カラス怪人が空に飛び上がり、翼を羽ばたかせ、強風を巻き起こす。


「おおっと⁉ どうやら随分とお怒りのようだね……」


「そうみたいどすなあ、なんでか知らんけど」


「アンタらが煽っとんねん!」


「え?」


「煽る……?」


 グレーとパープルが揃って首を傾げる。


「自覚ないんかい! 質悪いな!」


 ブラウンが声を上げる。


「ブラウン、それよりも相手のことを気にしろ!」


 オレンジが声をかける。


「せやな! 一気に決めさせてもらうで!」


 ブラウンが手を空に掲げる。大きい棒状の武器が降ってくる。五人はそれを受け止める。シアンがブラウンに尋ねる。


「ブラウン! これは⁉」


「棒や!」


「ぼ、棒⁉」


「せや! 剣としても、テニスラケットとしても、ゴルフクラブとしても使えるで!」


「それって、まるでwi……」


「シアン! 完全なるオリジナルやで!」


 ブラウンが語気を強める。その迫力にシアンがたじろぐ。グレーが尋ねる。


「これをどうするんだい?」


「全員の力で振りかざすんや! せ~の! ……それっ!」


「カア~⁉」


 五人が棒を振り下ろす。棒は剣と化し、斬撃を飛ばす。その斬撃を食らい、カラス怪人は空から落下し、地面に転がる。ブラウンが右手を高々と掲げる。


「どや! これが『エレクトロニックスティック』や!」


「カアアッ!」 


 カラス怪人が咆哮とともに巨大化した。シアンが声をかける。


「よし! エレクトロニックインパクト出撃だよ!」


 五人が合体したエレクトロニックインパクトに乗り込む。カラス怪人が翼を広げる。


「カアアアッ!」


「くっ……凄い風どすなあ……」


 パープルが呟く。


「ブラウン! お願い出来る⁉」


「任せとけ!」


 シアンの指示を受け、ブラウンが左脚を操作し、膝からボールを出してバウンドさせる。


「⁉」


「ボール、トモダチ!」


「カアアアアッ⁉」


 エレクトロニックインパクトがサッカーのボレーシュートのような体勢でボールを蹴り、カラス怪人に当てる。攻撃を食らったカラス怪人が仰向けに倒れて爆散する。


「やったあ! 決まった! 『インパクトシュート』!」


「あの武器……オリジナルなのか……?」


 ガッツポーズを取るシアンをよそにオレンジが首を捻る。

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