第8話(3)簡単な質疑応答

「はっはっは!」


 笑い声とともに、ジャージ姿の女性が入ってくる。


「ええっ⁉」


 凛が驚く。その女性は銅色の長い髪を二つにまとめていたのだ、頭の前方で。


「な、なんや、あの髪型は⁉」


「ストレートに言うな!」


 輝が躍を注意する。


「けったいな……」


「も、もうちょっとオブラートに包め!」


 輝が心をたしなめる。


「ツインテール? いや、ツインホーンか……」


「冷静に分析するな!」


 輝が秀に突っ込みを入れる。


「あっはっはっは!」


「ず、ずっと笑っているな!」


 輝が困惑する。


「わっはっはっは!」


「凛、対抗するな!」


「あっはっはっはっは!」


「わっはっはっはっは!」


「あっはっはっはっはっは!」


「わっはっはっはっはっは!」


「ただただ笑い合っている⁉」


「な、なんだ、この状況は?」


 躍と輝が戸惑う。


「人と人が笑い合える社会っていうのも案外不気味なもんどすな~」


「こ、心ちゃん、そんな冷たいことを言うてやんなや……」


「そもそも片方は人なのか?」


「秀さん、酷いことを言うな……」


「魔族かなんかじゃないか?」


「魔族ってことはないやろう」


「あ~はっはっはっはっは!」


「気持ち魔族っぽい笑い方に⁉」


「……」


「急に飽きた⁉」


 躍が困惑する。


「店先で何をしとんねん、早よ入ってきいや……」


「ああ……」


 彩に言われ、ジャージ姿の女性が店に入ってきて、凛たちの前に仁王立ちをする。


「こいつがハードトレーニングを課すやつや。ほら、自己紹介せえや」


「私の名前は鹿銅命ししどうみこと!」


「はあ……」


「よろしく!」


 命が右手を挙げる。


「よ、よろしくお願いします……」


「というわけで……」


「いや、ちょっと待ってや、司令官! 情報が少なすぎるわ!」


 躍が声を上げる。


「そうか?」


「そうですよ」


「それなら質疑応答の時間を設けるか……」


「是非、そうしてください」


「第1回! チキチキ! 鹿銅命に聞きたい100のこと~!」


「いや、そんなに聞きたくはないんですよ!」


「ええ?」


「一問ずつとかで良いんですよ」


「そうか……ほな、質問せーや……」


「えっと! 良いですか?」


 凛が率先して手を挙げる。


「ほい、シアン」


 彩が凛を指名する。


「ニックネームは?」


「最初に聞くことか?」


 彩が戸惑う。


「ミコッティだな」


「答えるんやな……」


「ミコッティって呼んで良いですか?」


「ダメだ。そういうのはもっと……関係性を深めてからだろう」


「ダメですか……では、今はまだミコッテですかね?」


「いや、ほぼ呼んでいるだろう、それ!」


 命が戸惑う。


「じゃあ続いての質問は……」


「はい……」


「オレンジ」


「ご出身は?」


「奈良県だ」


「ああ……分かりました。ありがとうございます」


「は~い」


「パープル」


「ご年齢は?」


「おいおい、それは失礼やないか?」


「彩さんよりは皆と近いです」


「おい! 自分も失礼やな!」


 彩が声を上げる。


「はい! はい!」


「……ブラウン」


「好きな食べ物は?」


「それ、どうしても聞きたいことか?」


 彩が首を捻る。


「……奈良漬け」


「またベタな答えやな……」


「よろしいですか?」


「グレー」


「その髪型は奈良公園の鹿にインスパイアされたものですか?」


「聞きづらいことを聞くな。まあ、気持ちは分かるけど……」


「そこに気付くとは……」


 命が自らの頭を抑える。


「いや、気付くやろ……」


「地元愛を貫くあまり、鹿と一体化したいという思いが溢れてしまったのだ……」


「完全にヤバいやつやんけ!」


「そのヤバいやつ呼んだの司令官ですけど⁉」


 躍が突っ込みを入れる。


「まあ、ちょっと変わっとるけど、腕は確かや……頼むで?」


「君たちに戦隊ヒーローとは何たるかを徹底的に叩き込む! ビシビシ厳しく行くので、覚悟するように!」


「‼」


 命の言葉を受け、凛たち五人の顔に緊張が走る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る