第5話(1)話は戻って

                  5


「……というわけでこの五人が揃ったんです」


「いや、ホンマに長いな!」


 スカルレディが声を上げる。


「ええっ⁉」


 シアンが驚く。


「もう昼近いで? 朝やなくなってきているわ」


「これでも大分端折ったんですけど……」


「端折ったんか……」


「その日の空模様とか……」


「あ~そんなん要らん要らん」


「その時、皆で食べたご飯とか……」


「要らん!」


「その時、皆がそれぞれ何を思ったか……」


「そんなん要らんねん!」


「い、要らんって……」


 シアンが戸惑う。


「一人一人の心理なんかいちいち聞いていられるか」


「そ、そうですか……」


「そうや」


「それで……」


「ん?」


「……どうだったでしょうか?」


 シアンがスカルレディに尋ねる。


「う~ん、30点かな」


 スカルレディが腕を組んで首を傾げながら告げる。


「満点ですか⁉」


「ちゃうわ! 100点満点中の30点や!」


「か~ら~の~?」


「増えへんよ!」


「もうちょっと上げてあげてよ~」


「〇ちゃんの仮装大賞ちゃうねん」


「残りの70点はクイズに正解することによって……」


「そんなややこしい加点方式とっておらんわ」


「え……っていうことは赤点ですか?」


 シアンがしゃがみ込んで、スカルレディを見上げるようにして尋ねる。


「そうや」


 スカルレディが頷く。


「え~」


 シアンが頭を抱える。スカルレディが呆れ気味に呟く。


「そないな風に頭を抱えられてもな……」


「うわ~一気にメジャーになれるかと思ったのに……」


「そんな甘くないやろ」


「ファンへのサインも考えていたのに……」


「ちょっと痛いな……」


「インタビューで何答えるかも決めていたのに……」


「大分痛いな……」


「悪の組織を倒した後、普通の女の子に戻った様子まで想像していたのに……」


「痛い通り越してんな! 捕らぬ狸のなんとやらや!」


「ええ?」


「ええ?とちゃうねん! なにをエンドロールまで想像膨らましとんねん! そんな甘いもんとちゃうで⁉」


「……甘いですか?」


「甘い、甘い!」


「それでは……どうすれば良いですか?」


 シアンが立ち上がって問う。


「うん?」


「修正点を教えてください。お願いします!」


 シアンが頭を下げる。


「う~ん……」


 スカルレディが首を捻る。


「なんでもします! ブラウンが!」


「ウチが⁉」


 ブラウンが驚く。


「いや、時間とか都合が一番つきやすいかなって……」


「フリーターへの偏見やめろや! 色々忙しいねん!」


「あ~あ~まあ、自分、落ち着いて……」


 スカルレディがブラウンを落ち着かせる。


「は、はい……」


「修正点やけどな……全部かな」


「ぜ、全部⁉」


 スカルレディの言葉にシアンは驚く。


「せや、全部や」


「全部ですか……」


「まず名前やな、なんやったっけ?」


「……『遊戯戦隊エレクトロニックフォース』です」


 シアンの代わりにオレンジが答える。


「長いな」


「長い?」


「それになんやややこしいわ。五人おるのにフォーって……」


「お言葉ですが……」


「あん?」


「この場合の『フォース』は――意訳に近いですが――『強い部隊』を意味します。複数形ならば『フォースズ』と名乗った方が良いですが……言いやすさを重視したものだと思われます。数字の四を意味するフォーではありません」


「お、おう……」


「その点はご理解頂きたいです」


「それにしてもやな……あれや、色や! レッドとかブルーが居らんのはアカンって!」


「ふっ、この『戦隊ヒーロー飽和時代』に極めてナンセンスな指摘だね……」


「む……」


「他と違いを見せるには色で差別化するのがもっとも分かりやすい方法だ。視覚的にもそれなりのインパクトを与えられる。君が引っかかったのが、何よりの証拠さ……」


「グ、グレーの自分が言うな! ほんでなんでため口やねん! ったく、後は戦い方や!」


「得意のeスポーツを活かした戦い方どすが……」


 パープルが口を開く。


「そう! それもなんやかんや分かりにくいな~」


「若い世代を中心にゲームに親しんでいる割合は高いどす。他との違いを見せ、なおかつインパクトを与えるには案外悪くないかと……どうも頭が固いようどすな~」


「一言多いねん! これは被り物や!」


 スカルレディは自らの頭を指差す。


「ぶぶ漬けいかがどす?」


「なんで帰らそうとしとんねん! 自分の家ちゃうやん!」


「あ~そういう決め台詞なんがあった方がやっぱりええですかね? バズるかも……」


「ぶぶ漬けいかがどす?がバズってたまるか!」


 ブラウンの言葉にスカルレディが突っ込む。シアンが口を開く。


「……ゲツアサは良いですよね?」


「それが一番アカンよ!」


 スカルレディが声を上げる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る