スーパーでの遭遇

2日目の学校が終わり家に帰ろ雨とした時突然、LINEがなった。


スマホを開いてみると、楓からだった。


どうかしたのかと思い、慌てて開くとそこには


“明日の弁当の食材がなかったから、買ってきて!お願い!”


と書かれていた。


「楓でもこんなミスするんだな」


普段完璧は楓がこんなミスをするなんて珍しい。


まぁ、特に用事があったわけでもなかったので、俺は同じ学校の人に会わないように家の先のスーパーまでいった。


このスーパーは特に大きいわけではないが、たくさんの種類があってなにより安い!


俺がいつも行っているおすすめ場所だ。


自動ドアをくぐり、買い物カゴを持ったところで前に俺が今着ている制服姿の女子が2人目に入った。


2人は話してるようでこっちに気付いてないようだったので、俺は2人の視界に入らないように移動して、顔を確認した。


それは2人とも俺のクラスで1人は茜だった。


やべぇ、バレないようにしないと。


ていうか、お嬢様がなんでこんなところにいるんだ?


俺は疑問に思いながらもバレないようにできるだけ2人に背を向けながら歩いて食材を見た。


楓にお願いされたものを全部、買い物カゴに入れ、レジに向かおうとすると、肩にドンっと何かがぶつかった。


「す、すみません」


「こちらこそすみません?」


顔を上げるとぶつかったのは栞だった。


「な、なんでこんなところにいるんですか!?」


栞は驚いているのか、今まで聞いたことがないような声量でそう言った。


「買い物だよ。明日の弁当の食材を買いに来たんだよ」


「そ、そうですよね。買い物以外にここ来る人いませんよね」


まぁ、買い物以外でスーパーに来る人はいないだろう。


「ってことは栞さんも買い物?」


「は、はいそうです」


大企業の社長令嬢が買い物と気になるところはあるが、弁当も自分で作っていると言ってたし、おかしくはないのか?


「お姉ちゃんも一緒に来てるんだね」


「はい、明日の弁当のおかずはなにがいいか一緒に見ながら選ぶので」


ということは栞は自分のと茜の2人分を作ってるってことか?


「お姉ちゃんと一緒に弁当作ったりはしないの?」


「お姉ちゃんは私と違って忙しいので、基本的には私が1人で作ってます。」


これは栞が好んでやっていることならいいが、それでないならただの召使いのような扱いだ。


「そうなんだ、えらいね」


「そういう楓さんも料理するんですか?」


「料理はするよ。でも、今日は妹が明日の弁当の食材を買い忘れたみたいでそれを買いに来たんだよ」


「優しいんですね」


「いやいや、最近は料理とか妹任せにしてしまってるし、これくらいはやらないとね」


そういえば、最近楓にばかり料理を作ってもらっていたな。


明日の朝は俺が作ろうかな?


そんなことを考えていた時だった。


「ちょっと何してるのよ!」


怒ったような口調で俺と栞の間に入ってきたのはさっきまでクラスメイトと話していたはずの茜だった。


「私の妹になんかよう?」


茜は明らかに俺に怒っているようだった。


俺は何もしていないはずだが、なんで怒ってるんだ?


「いや、友達にあったから挨拶しようと思っただけだよ?」


「ふん、庶民が私たちにこんな場所で話しかけないでくれる?」


それを聞いて俺は少し納得をした。


大企業やお偉いさんの子供にはよくいる自分は人とは違う選ばれた人だと勘違いして、普通の人を見下しているパターンだ。


だから、普通の人である俺が社長令嬢である栞に話しかけていることに対し、怒っているのだろう。


「友達に話しかけるのは悪いことなの?」


でも、だからと言って諦めるわけにはいかない。


ここで引いたら、「負けました。これからは話さないようにします」と言っているようなものだ。


「ええ、迷惑よ。それに会って2日で友達ってふざけてるの?」


「友達に時間は関係ないと思うけど?」


「あなたが栞の友達なんて私は認めないから」


俺は少しイライラが積もっていた。


2日でいきなり話していていきなりすぎると思うのはわかるが、認めないってどういうことだよ。


そういうのは本人の自由だ。


これじゃ、本当の意味で栞は縛られているみたいじゃないか。


「茜さんが認める認めないは関係ないんじゃない?」


「関係あるわよ。だって私たちは双子だもの」


別に双子だからって縛り付けていい理由にはならない。


俺と楓だってそうだ。


お互いがしたいことを尊重して、今まで生活してきた。


だからこそ、俺と楓は他の兄弟より何倍にも仲良いと思っている。


だから、双子だからって縛りつけるんじゃなくて、尊重しあう方がいいのだ。


「それは栞を縛りつけてるだけだよ」


「いいわ、どうせあんたにはわからないから」


そう言って、茜は踵を返した。


「そうなんだ、でも、栞とはこれからも話すつもりだから」


俺は茜が帰るまでにこれだけは言わないとと思った。


「勝手にするといいわ。でも、私はあなたを信用しないから」


茜は後ろを向いたままそう答えた。


それでもいい、大事なのは自分はどうしたいかしっかりいうことなのだ。


「それでいいよ、別に茜さんの信用が欲しいわけではないし」


「そう」


茜がそう呟くと俺の方にズカズカと近寄ってきて、俺のことを睨みつけた。


「じゃあ、栞のことはさん付けで呼びなさい。少しでもさん付けで読んでないところ見たら、本当に話すことも許さないから」


なんでそんなことをしなければならないのだろうか?


そんなのは私たちの勝手だ。


友達なら呼び捨てはするし、あだ名で呼び合ったりする仲になれるかもしれない。


「それは私の自由なんじゃないの?」


「そう思うなら、呼び捨てするといいわ。でも、それを見られたらしたら、どうなるかは覚えておきなさい」


しかし、茜はそこだけは許さないようだった。


「わかったよ。人の前で呼び捨てしなければいいんだね」


俺はここで引くべきだろうと思った。


茜がいうには人前で呼び捨てにしたければいいということだ。


昼休みに屋上で呼び捨てにするくらいならいいのだ。


それで収まるなら、十分だろう。


「わかればいいわ。じゃあ、行くわよ」


「あ、うん。楓ちゃんごめんね」


そういうと、茜は栞の手を引っ張って、レジの方に向かっていった。


今から、レジに行って会うのは気まずいなぁ。


そう思った俺は、もう少しスーパーの中をうろうろと見回りながら、ちゃん呼び嬉しいなぁとそんなことを考えるのだった。

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