素晴らしきアフロディーテ

ニャン太郎

素晴らしきアフロディーテ【1話完結】




桜の髪飾りでまとめられた長い金髪が、真っ白な背中がざっくり開いた桜のシースルーのマーメイドドレスとよく似合う。


「リリア!」


「あっ!イリス様」


リリアと呼ばれた少女は、王太子イリスに呼ばれ、イリスの手に手を重ねると壇上へとエスコートされた。


今日は、王太子イリスの婚約パーティーだ。

国内外の貴族が王宮に集い、王子の婚約を盛大に祝う。この王太子イリスの婚約者こそがリリアなのだ。


「お二人が並ぶと、はぁ、神々しい…」


「ん~~目の保養になるわ…」


王侯貴族達は、うっとりと若き二人を見つめる。


それもそのはず…

イリスは清純な金髪碧眼の見目麗しい王子。


国内外から見合いの申し込みが殺到する中、ある日、イリスは森で迷い込んだ少女に一目惚れした。


年齢はやや幼いが、リリアの大人びた容姿は誰もが息を呑むほど美しかった。リリアの素性が不明だと非難する王侯貴族も、リリアを一目見ると一瞬にして、自分の妻に、めかけに、侍女に、などと言い寄ったが、イリスはそれらを一蹴した。貴族達は、相手が国の王太子では微塵も太刀打ちできず、早々に諦めるしかなかったのだ。


二人は壇上から降りると、同じく壇上から降りた国王と王妃とともにしばらく談笑していた。

国王も王妃もなかなかの美男美女。二人とも四十代前半だが、国王はイリスよりも彫りが深いイケオジで、王妃は快活系でスタイリッシュなボディの美しい淑女であった。

この四人が揃う場面は滅多に見られない。

貴族達は皆、この煌びやかな光景を必死に目に焼き付ける。


その後、イリスは来賓の大臣達の元へ、王妃は王侯貴族の奥方達の元へと向かった。国王とリリアはしばらく二人で談笑すると、国王はリリアの手を取り、裏庭の薔薇園へと歩いていった。


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どれくらいの時間が経ったのだろうか。


小一時間して、やっと国王とリリアが戻って来た。リリアはぐったりしており、国王に抱き上げられていた。衛兵達がすぐに駆け付ける。


「陛下、私共がリリア様を救護室へとお連れ致します」


「いや、良い。リリアの具合に詳しいのは私だ。私がリリアを寝かせて来る」


「ですが…」


「何、心配はいらぬ。慣れない場所だからな、少し休まるだけだ。リリアの具合によっては戻れぬかもしれないが、その間よろしく頼むぞ、お前たち」


「はっ!!仰せのままに」


衛兵達は、揃って敬礼をする。その間に、イリスと王妃も急いで駆け付けた。


「私はリリアを休ませてくる」


「あっ、いえ、私がリリアを「その間、よろしく頼むぞ。お前には、少しでも多くの多様な人間を知り、学んでもらいたいのだ。イリス、お前には期待しているのだから」


イリスは一度躊躇ったが、従順で純心な彼はすぐに国王の言葉を従う。


「はっ、父上。ありがたきお言葉。では、リリアをよろしくお願いします。リリア、ゆっくり休むんだぞ」


「リリアさん、ここはイリスと私に任せておいてね。陛下、リリアさんをよろしくお願いします」


国王は、従順なイリスと頼もしい王妃の凛々しい姿に安堵の溜め息が出る。


「あぁ、じゃあよろしく頼む」


「ありがとう…ございます、イリス様、王妃様…」


そして、国王はリリアを抱いて、足早に場内から姿を消した。


国内外の有力貴族たちは、この王族たちのやり取りを見て、すっかり感心した。


「国王陛下は王太子殿下に絶大な信頼をしてらっしゃる」


「王太子殿下は頼もしい」


「王妃殿下は国王陛下をしっかりと支えていらっしゃる」


「国王陛下は婚約者のリリア様の体調も気遣っていらっしゃる」


「この国は安泰だ!万歳万歳!!」


あちこちから、この国の権力者たちをたたえる声が上がる。その日、国王とリリアが戻って来ることはなく、国王はリリアを三日三晩、看病していたという。この間、リリアを安心して休ませるため、衛兵達を部屋には近づけさせなかったとか。この噂を聞き付けた王侯貴族達はますます称賛の声を上げた。


──こうして、王国の株は急上昇し、見事発展していった……めでたしめでたし。



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なんて………そんな上手い話、ある訳ないのだ。



実際には王国は国王諸共、滅亡。

原因は近隣諸国による侵攻だった。



元々は、他国から侵攻を受けるような傲慢な国でも卑怯な国でもなかった、ただの平凡な王国だ。


じゃあ、どうして侵攻されることになったのか…


その元凶は、王太子イリスの婚約者リリアにあった。

だが、実際にリリアは王国に対して直接的な何かを仕掛けた訳ではない。



───だが、リリアという絶世の美貌。


これこそが王国を滅亡に導いた要因なのだ。



リリアには、王太子イリスも知らない秘密があった。


それは、


国王の寵妃であること…



このことは、リリアと国王、その側近と直属の護衛のみが知る事実で、イリスにも王妃にも隠された極秘事項であった。

リリアが国王の寵妃であることを知らないほとんどの者たちには、義理の父親ととても仲の良い義娘に映っていることだろう。

まぁ、この解釈は、ある意味では間違っていないのだろうが……



国王は王妃と政略結婚で、その後イリスが生まれたが、リリアが現れるまではそれなりに家族仲は良かった。だが…息子であるイリスが婚約者を連れて来た時から、状況は狂い始めた。


イリスが王宮で国王に初めて、リリアを婚約者として紹介した時だ、国王にある感情が芽生えた。



──リリアを我がものに…



ただの欲望だった。

純粋な本能だった。




欲に埋もれ始めた国王は側近と護衛らに、ある命令を下した。


──リリアに伝えよ。イリスの婚約者と認める代わりに我が寵妃となれ。決して口外はするな、我が息子イリスにもだ。我が意に反する場合は、即刻処刑する。


いかにもむちゃくちゃな話ではあったが、常軌を逸した国王の言動は最早、誰にも止められなかった。国王の意に反した者、少しでも違和感を覚えた者、とにかく自分の意にそぐわない者は片っ端から処刑していった。それは、絶大な信頼の置ける側近、護衛にも及ぶ。国王の側近を通して伝えられたイリアは、イリスと既に恋仲になっており、イリスと離れたくない一心で、涙ながらにこの条件を受け入れた。


リリアが極秘に国王の寵妃となってから、国王は行動は凄まじかった。


国王は、最初、リリアを怖がらせることのないよう他愛のない会話から始めた。優しい口調で気さくに話しかけた。それに安心したリリアもポツリポツリ話すようになった。互いに趣味や好きなもの、家族のことなど、とにかく色々話をした。最初は怯えていたリリアも国王に心を開くようになり、積極的に自分のことを話すよう仲にまでなっていた。


スキンシップも自然な形から始めた。髪や服に付いたゴミやホコリを取る、から始め、次第に手を握る、髪を撫でる、にシフトし、それから徐々に、プレゼントを送る、身体を抱き締める、といわゆる恋人のディープな触れ合いへと形を変えた。


一ヶ月の間は、国王はリリアには手を出さず、息子とリリアの逢瀬を見守りながら、リリアとのプラトニックな関係を維持していた。見守り=監視、息子がリリアに手を出さないか、常に見張らせていた。それに加えて、優秀なイリスにほぼ全ての仕事を覚えさせた。国王代理としてイリスに仕事を任せるためだ。


──リリアとの時間をいかにして得られるか。


気付けば、国王の中の指標は、全てこれになっていた。やがて、イリスの仕事は王太子の国王代理の公務が伸し掛かるようになった。この頃には、リリアのいる後宮に行くこともほとんどできなくなっていた。だが、イリスは国王である父を尊敬していたため文句一つ言わなかった。イリスは、国王に認められたい一心だったのだ。しかし、リリアの方はイリスの仕事に理解を示すものの、恋人のイリスに会えない寂しさから無性に人肌を恋しがった。




──そんなある日だった…


イリスも王妃も地方公務で出払っており、酷い雷雨で王宮に戻るのが数日かかると、王宮へ通達があった。

王宮には国王と寵妃であるリリアのみ、それと最低限の護衛と側近のみが残っていた。



──国王とリリアは初めて体を結んだ。


国王はこの一ヶ月の間、溜めていた欲望をぶつけるようにリリアを激しく抱いた。


この日を待っていたのだ!!

イリスと王妃の出張公務を荒天に調整したのは、他でもない国王だったからだ。そのように仕組まれているとは知らないリリアはイリスに会えない寂しさからイリスを国王に重ね、自分の中に受け入れた。



イリスと王妃が戻るまでの数日、国王はリリアの体を片時も離すことはなかった。イリスと王妃が王宮に戻ってからも、二人に監視を付けつつ隙を見てリリアを抱いた。


だが……


「父上、最近、リリアとずっと何しているのですか?」


「あなた、何とか言って。ほらリリアさんも」


国王とリリアの動きを不審に感じたイリスと王妃が問い詰めてくることが多くなってきた。

二人にバレるのも時間の問題だった。


だが、国王はリリアと関係を終わらせる気はさらさらない。こんな暴力的な甘やかな日常、誰が手放すものか、いや絶対に手放しはしない!


国王は、イリスと王妃を王宮から排除することにした。イリスには、王太子として無期限の留学をさせ、当分は王宮に近づけないようにさせた。王妃には食事に少量の毒を混ぜ、緩やかに体調を悪化させた。そして、療養のために隣国との国境付近の自然豊かな郊外の領地へと移させた。


こうして、忠誠心のある王直属の護衛と側近、リリアの女官を最低限に残した王宮では、国王のやりたい放題となった。国王はリリアを片時も手放さず、ある時は一ヶ月余り、私室から出ることはなかった。私室からは毎晩、ベッドの激しい軋み音と少女の艶めかしい嬌声が漏れていた。国王はリリアを毎晩、掻き抱き続けた。欲望が尽きるまで、何度も何度も己をリリアに受け入れさせた。いつ妊娠してもおかしくなかったが、何故かリリアは一度も国王の子を子宮に宿すことはなかった。



──それから一年が経った。


国内では国民のデモとストライキが各地で頻繁に起こっていた。原因は物価の急激な高騰と税金の価格上昇。それにここ最近では、作物の不作も続いていた。だが、その大元は国からの資金供給の激減であった。この頃には国王が国の予算を独断で決めており、そのほとんど全てをリリアのための上質な服やアクセサリー、装飾品などに当てていたのだ。国王は国民のことなど最早どうでもよくなっていた。


なす術もなくあっという間に荒廃した王国はその隙を突かれ、ある日近隣諸国に侵攻された。外交もほぼ断絶状態で、あろうことか国王は資金調達のため近隣諸国に攻め入ろうと画策していた。この情報が国外に漏れたため、その前に近隣で結託したというわけだ。初めて己の身を案じた国王はリリアを見捨て、自分だけ国外逃亡するも、途中で郊外の武装した農民たちに農具で滅多刺しにされ、死亡した。




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「皆の者、よく聞け!此度こたびの戦争をもって、この世の全てが救われた!あらゆる民は腐敗にまみれた政治から解放されたのだ、自由になったのだ!!これらは全てカエサル・クロード皇帝陛下の御尽力の賜物!!皆の者、クロード陛下を讃えよ~!!!」


「「「「「クロード陛下!!クロード陛下!!バンザーイ!!バンザーイ!!」」」」」


今日は戦争の終結と平和の再来の七日間の祝祭の初日であった。皇都、郊外、貧民街どの地域でも祝祭のための出店や催し物で賑わっていた。国を救った英雄カエサル・クロードへの歓声を国中に響かせながら。


────────────────────


皇宮のとある寝室。

旧王国の王宮を一旦更地にした後、全て建て直した皇宮には新しい風が舞っていた。


「リリアちゃんありがとう、僕の願いがまた一つ叶ったよ」


「カエサル様、いつまで続けるのですか…こんなっ、んむっ、」


カエサルはベッドの淵に座ったままリリアの淡いピンクの唇を塞いだ。唇を絡め、荒々しく舌を舐め取る。


「んっ、ん、ぷはぁっ、」


「あぁ、カエサルって僕の名前だっけ?もういらないから忘れてたけど、リリアに呼ばれるとどんな名前でも嬉しいよね。でも、もう本名で呼んでほしいな、リ・リ・アっ??」


「えと…リヒト…様…」


「そうっ!!せいっかーい!!で、なぁに?僕のリリア姫」


「いつまでこんな「そんなの全部の国ぶっ潰してからに決まってるじゃんかっっ!!!!!」


「ううっ…ごめ…なさい…」


リリアは今にも泣き出しそうな顔でリヒトを見つめる。リヒトはすかさず、リリアを抱き締めた。


「あぁあぁ、よしよし、ごめんねリリアぁ。僕、強く言い過ぎちゃったね。でもね、僕たちが幸せになるにはこれしかないんだよ」


「でも…」


リヒトはリリアを離すと、今度は両肩に掴み掛かる。

顔同士をギリギリまで近づけると大声で叫び倒した。


「リーリーアーはーー、わーすれちゃったのーーー?!!!僕があの凌辱地獄から君を救ったこと""""ーーーーー!!!!!!!!」


リリアは掴まれた肩の痛みに耐えながら、言葉を一言一言紡ぎ出す。


「そ、そそれは…本当に本当に感謝してもしきれません、リヒト様のおかげです…でも…もう私……体が持ちません…この前だってあの国王様が私を毎晩…」


リリアは胸の前で手をギューッと握り締める。


「なぁぁぁに、まぁだ、あのクソジジイの話、俺の前でしてんの?!!!てかさ、俺のこと馬鹿にしてんのぉっ??あぁっ"""???」


リリアの髪をグワッと鷲掴んだ。リリアの顔は引っ張り上げられ、激痛が顔中に走る。


「い""いたい"いたい"いたいっ!!違うっ違うからっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい"!!!許してくださいっごめんなさいごめんなさい!!」


「リリアぁぁ、君ってさぁ、ほんと昔から僕を怒らせるのが好きだよねぇ。僕がこんなにも君を愛してるのに、君はすぐに他の男をたぶらかすんだよ。あのクソジジイも俺のリリアを毎晩汚してんじゃねぇよ。まぁ?どうせ良い思いした分、たっぷり痛め付けて殺してやったけどぉ?」


「私…たぶらかすなんて…そんなつもり……」


「君は僕の愛しい愛しい婚約者だったのにさ。君の兄弟から執事から幼馴染、リリアの父上まで君を求めていたじゃないか。てか、男ならほぼみんなだよなぁっ?!?!だけど、僕だけは至極冷静だったよ、君が野獣共に貪られる姿を見てもね。君は獣を堕とす才能があるよね。君はもっとそれを自覚しておくべきだったんだよ。でなければ、こんな歪みまくった、こんなクソみたいな男に引っかかることもなかったんだ。そして、大事な母国を滅ぼすこともっ、ね??」


リヒトはニカーッとリリアに笑いかける。そして、同時に掴んでいた髪を綺麗に[[rb:梳 > と]]かし始めた。


「うう…」


「僕はね、君を責めるつもりはないんだよ。ただ、僕の気持ちにちゃんと報いてほしいだけ」


「ごめ…なさい…リヒト様、でも、私…もう…」


リリアはリヒトの言葉にシクシクと泣き出した。

だが、リヒトは澄まし顔で構わず続ける。


「あっ、でもリリアのこといくら大好きだからって君を一生抱くことはないから。数多のクソゴミどもに食い散らされた体なんてクソ気持ち悪いじゃん?!今回も一応、リリアには避妊薬飲ませてたけど、あんのジジイ、僕のリリアを貪りやがって、許せねえっっ!!!ぜってー、殺す殺す殺す殺す殺す殺す…あぁ、もう殺したんだったぁ、あーぁわーすれたよ、あのクソジジイのことー!!!てか、今までリリア抱いてきたクソどもみんなこーろしたんだったわぁ、今、思い出した!!ねぇ、僕って優しくない?わざわざ思い出してあげたんだから」


「えっ、みんな…殺した…の?ひど…「えっ?僕、何か悪いことした?だって、あいつらにはみんな奥さんとか子どもとかいたよ?リリア抱いたら不貞だし、てかリリアに惚れた時点でそっ首だし。てか、僕優しいよね?リリアぁ、や・さ・し・いでしょ、僕」


「……う……やさ…しい」


「うんうん、ありがとう!リリアぁ!だーいすき!!まぁ、リリアも僕のこと大大大大大好きだしー、君がぜんぜーん悪いこしてないのももちろん知ってるけどぉ、何でかゴミクズを魅了しちゃうんだよー、リリアちゃーんはーー!!だから、無自覚に僕の心をどんどんドんドんド"""ーんド""""ーん痛めつけちゃうんだよぉ?僕はこれでも抑えてるんだ、リリアにはこの僕の気持ち分からないよねっ!?ねぇっ!!」


バンバンドンドンドンドンバンバンバンバン

ベッドボードを壁を穴が空くまで、拳で殴り続けた。


「うっ…んん…ごめ…ふぇん…ん」


リリアはリヒトの脅威に怯え、ひたすら泣きべそをかいていた。動くことすらままならないほどに。


「でも僕は、リリアのこと大大大大大大だーいすきだーかーら、ある日、良いこと思いついちゃったよねーー。リリアの、男どもを魅了する欲情的な美貌でいっそ、他の国のやつを籠絡して国を潰してさ、最後には民衆も王宮の奴らもまとめて消して僕たちの世界を作るんだ!!僕とリリアだけの世界だよ?ねっ!?楽しみだよねー!!!!!」


「もう、こんなの…いや…やめて、許して…」



ガッチャン


リヒトはいつの間にか、リリアの手に桜色のフサフサが付いた手錠と足枷をかけた。顔はニコニコしながらも目の奥を闇の中にギラつかせていた。


「はぁぁ"""??????許さないよ、リリア?俺はは一生お前のことを許さない。お前は俺を裏切ったんだ。一生、僕の言うことを聞くんだよ??リリアは僕の大切な大切ななんだからね??僕が死ぬ時、リリアも一緒に死のうね!!さぁて、次はこの国にしよっかなぁ~!!さぁ、早速準備しようねリリアちゃん、レッツゴー!!!!!」


おぞましい希望に満ち狂ったリヒトとは対照的に、リリアは終わりのない絶望感で溢れ返っていた。


リリアには、最早大声で泣き叫ぶ気力さえもなかった。

この先も、死ぬまでずっと……

決して終わることのない自らの愛と性への罰……

もう、苦しみ悶え続ける荒廃し切った人生しか待っていないのだ。これまでも、そして、これからも。


顔を覆った小さな掌の中で、誰にも分からない蚊の鳴くような声で渾身の叫びを放つ。






「もう……いやあぁぁ"""""""""""""""""""""""""""」


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