第8話 花と与平

「ずっと、一緒だぁ・・・」


※※※※※※※※※※※※※※※


昔、ずっと遠い昔。


大変だった時代があったのだろう。

そんなことを、想像します。


毎日。

死ぬほど働いて。


それでも。

お腹いっぱい食べるなんて。


夢だった。

時代。


そんな時代の。

ラブストーリーを。


綴ってみました。


勘違いしているとは。

思いますが。


御読みいただければ。

幸いです。


※※※※※※※※※※※※※※※


第1話 憧れの君

「ギャーハハッハー・・・」

喧騒が狭い民家に響いています。


むせるような汗と、酒の臭い。


祭り以外での酒の味に。

男達はこれでもかと、喉を鳴らしています。


女達は。

宴会の料理や配膳に追われ。


遠巻きに眺めています。


霞んだ視界の中で。

ポツンと花嫁が座っています。


花婿の与平は。

廻りの男達に勧められるまま。


酒を煽り。

心の中で叫んでいます。


≪なんて、メンコイおなごなんじゃ・・・≫

チラチラと、花を眺めながら張り裂けそうな歓びを噛みしめているのです。


細い肩先。

小さな、あご。


ふくよかな頬。


何もかも。

与平が憧れていた。


大好きな。

初恋の女の子。


それが。

花、なのですから。


※※※※※※※※※※※※※※※


第2話 嫁いでみれば


足のしびれは、それほど気にはならなかった。

酒臭い息が充満する、嫁ぎ先の家屋での婚礼の喧噪も。


花にとってみれば、結婚という人生の一大イベントだったから。


チラリと見た旦那様。

若くて逞しく、結構、良い男。


花には十分すぎるほどの人に思えたのです。


だから。

終わりの見えない宴会が続く中も。


ジッと。

待っていたのでした。


※※※※※※※※※※※※※※※


第3話 それでも、幸せ


「痛いっ・・・」

花が指を押さえ、うずくまった。


「大丈夫か?」

急いで駆けつけた与平が心配そうに花の手をとる。


「草の棘がささっただけ・・・」

囁くような声に与平の胸にざわめきが起こる。


夫婦(めおと)になって二年になるというのに。


いまだに花を愛おしく思う自分が恥ずかしくなるほどに。

与平は花が大好きだったのです。


そんな。

夫の眼差しを見つめ返す花は。


幸せだな、と。

思うのでした。


※※※※※※※※※※※※※※※


第4話 これからが旅立ち


「うっ・・・」

膝を押さえた与平がうずくまります。


「大丈夫・・・?」

心配そうに見つめる花の瞳も、若い頃の輝きはありません。


それでも。

見つめ合う二人の眼差しは。


どんな恋の物語でも。

描き切れないエピソードが映っているのでした。


二人にとって。

これからの時間は。


ただ。

そう、ただ。


楽しいことだけが。

綴られていく。


幸せな。

旅。


なの、ですから。


※※※※※※※※※※※※※※※


あとがき

これは、余計だったですね。(笑)


折角、余韻をもって終わったのに。

僕が、貴方が、愛おしい人と終わりの時間を迎える瞬間を想像しました。


若い方々には。

想像もつかないでしょうね。


でも、僕達には時間が限られているのですよ。


人生の充電のインジケーターは。

もう、20%もないのだから。(笑)


一瞬、一瞬が愛おしい。


そんな思いで。

綴っております。


勿論。

酔っぱらっていますが。(笑)


星もハートもいらないですよ。(本当です)


読んでいただくだけで。

幸せなのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る