第4話 マッチングアプリに登録してみた

 少しだけ遡り、地獄の職場でマッチングアプリに登録した頃。


 うわ~ん!職場怖いよぅ~!嫌だよぅ~~!!


 そんな気持ちでいっぱいであったものの、やっぱりどこかで「マッチングアプリ怖いよぅ~!」の気持ちも忘れていなかった私は、とりあえずどんなアプリがあるのか調べることにした。

 年代のせいなのか、ヒマちゃん以外で婚活はしていてもマッチングアプリに登録してみたよ、という友だちも知り合いもいなかった。

 こういうときはGoogle先生の登場だ!……ということで、ネットで適当に【婚活アプリ おすすめ】とかで検索してみた。

 そしたら沢山のアプリが出るわ出るわで、「うひゃぁ、こりゃ分からんぞ!」となった。マッチングアプリの普及と世の中の流れ恐るべし!


 とりあえずランキング形式でまとめているサイトの説明を元に、自分に合っていそうなものを探そうと思ったが、ここで“自分に合ってるって何だろう?”という根本的な疑問が浮かんできた。

 出会いたいから登録するくせに、「べ、別に結婚とかそういうんじゃなくていい人がいればいいかなぁ~ってだけだし!」という自分自身に向けた建前が真っ先に浮かんできたが、それが建物であることを重々承知しているもう一人の自分が顔を出す。

 「そんなこと言ってのらりくらり言い訳してるからの今なんでしょうが!!」……はい、その通りでございます。

 

 遙か昔に三十路を迎えてなお、遊び回っていた夢見るお花畑の私は無駄に勢いと思い切りの良さだけはあった。

 この歳で若いお嬢さん方みたいにマッチングアプリを活用することに羞恥心のようなものはあった。しかし、そのちっぽけな羞恥心をあっさりと受け入れた私はえぇい、恥がなんだぁ!と勢いよくアプリダウンロードをポチッとしたのであった。仕事辞めたくて切羽詰まってたしね。


 結果、数多のアプリを吟味するでもなく、アプリの評価を深堀りして検索するわけでもなく。ただ適当に検索して出てきたランキング形式サイトをあっさり信用して、登録するサイトを決めてしまった。

 ちなみに私の登録したアプリは、利用者の年齢層が高く、出会いや恋人探しというより結婚を意識した出会いを求める人が多いという評価がされていた。登録したアプリはこの1つきりで、生来の面倒くさがりが顔を出していくつかのアプリに登録する積極性はなかった。

 この、「勢いだけはあるが面倒くさがり」が曲者であることよなぁ、と自覚はしつつもなかなか改善できないのである。う~む……。


 その後、プロフィールの登録に進むのだが、早速の第一関門がユーザー名。


 マッチングアプリに必要以上の警戒心を抱いていた私は勿論本名や、本名に近いニックネームなんかは使用しない!

 部屋を見渡すと、丁度育てていた薔薇を切って飾っていたので適当に「ハナ」と入力した。ついでに花瓶ごとその薔薇の写真を撮ってプロフィール画像にして設定完了!

 自己紹介欄も、「お花と動物が好き」を少し丁寧に書いただけの簡素なもの。今思えば、やる気あるのか!?とツッコミ所しかない……。その他、アプリで準備されていた質問項目を埋めて、あっさりとマッチングアプリの登録は完了してしまったのであった。

 案ずるより産むが易し、とは言うが一歩踏み出せばマッチングアプリに登録すること自体はそんなに大変なことではなかった。

 高く感じるハードルや、二の足を踏むのは全て己の精神的な問題であることを痛感した。それでも、やはりどこかで警戒心を持つことや慎重になることは忘れてはいけないと思う。だってまだ死にたくないんだもの。


 その後、二人の人とメッセージのやりとりをしたが一人は自然消滅。もう一人も毎日特にやり取りが盛り上がることはなく、そのうちメッセージ自体が義務のように感じてきたため適当な理由をつけてやり取りを終了させた。

 こんな喪女とやり取りしてくれるのはありがたいという気持ちはあるのだが、そのうち「今日もいい天気ですね」とか、「お仕事頑張ってください」みたいな内容になってくるとやり取りする意味とは……?という気持ちがムクムク湧き上がってきた。


 いい人なんだろうけど、お互いに合うのは違う人なんだろう


 そういう感覚を初めて知った恋愛経験値最弱の私は、高校生でもとっくに知っていそうな教訓を得たのであった。

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