引きこもり信じる

 アユムくんは疲れたのか、昼寝をすると言って部屋に戻った。ススムはテレビを軽くザッピングしてから、


「……アユム、かわいそうだな」


 とつぶやいた。


「子供なのに義務があるなんて頑張って、聞きたくないだろう大人の話を聞いて。僕のせいで、アユムはかわいそうな目に遭ってる」


「そうかな。アユムくんは責任感の強い子なんだと思うよ。悲しいのを我慢しても、自分のことをちゃんと知りたいんだと思うんだ」


「……それもそうだ。しかし、アユムに本当の親のことを知る必要があったのかな。僕とあおいの間で秘密にしておくこともできたのに。本当の父親が反社なんて知りたくないだろ、どう考えても」


「それは確かにそうかもしれない。けれど、いままでアユムくんは自分の責任を全うしようとしてきた。だから学校行かなきゃいけないのかな、って悩んできたし、毎日チビ太のご飯を計りまで使って用意してる」


「うん……」


「アユムくんが我々を信じてるんだからさ、我々もアユムくんを信じようよ」


「……そうだな。親には絶対に会わせない。一緒に暮らそうなんて断固拒否だ」


 その意気その意気。ススムはなにやら冷蔵庫から缶ビールを出してきた。もう一杯始めるらしい。

 まあ毎日忙しく働いているススムだ、日曜くらい昼から飲んでも許されるだろう。薄いガラスのグラスにビールを注ぐ。しゅわしゅわとおいしそうな泡が立つ。


「あおい、なんかゲームを実家にアマゾンしたんじゃなかったっけ?」


「ああ、それならこっちにレタパで送ってもらった。でもストーリー覚えてるからあんまりやる気しなくて。アユムくんがもうちょっと大きくなったら人生初のRPGとしてやってもらおうと思ってる」


「ああ、『新鮮な感想が欲しい』ってやつだな」


「まさにそれ」


 ススムは笑った。相変わらず爽やかに笑うやつだ。


「それともアユムくんがもうちょっと大きくなるころには新しいハードが出てスイッチなんて古くなってるのかな。そうかもしれないな」


「互換性のあるハードが近々出るって噂だぞ」


 そんな話をしたあと、ススムは椅子でくたっと寝てしまった。しょうがない、日々の労働で疲れている上に酔っ払っているのだから。


 さて。

 わたしは「エクソダス」を書き始めた。平和な楽園にいた女の子が、異世界人に導かれて楽園を出て、過酷な世界で生きていく物語だ。

 わたしの文章力が「ハリウッド式脚本術」とかを勉強して役立てられる水準でないのは分かっている。とにかく、練習でも書いてみなくてはならない。

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