第3話 悪魔との邂逅 ③

俺の振ったサイコロは、激しく回転し2を上に止まった。


俺は、二マス進み問題文を読み上げた。


「五分以内に、モンスターを4匹揃えて消せ…?ぷよぷよのような要領か…?」


俺は、仮面の男から傘サイズの巨大なタッチペンを渡された。


ー大丈夫だ…ぷよぷよやテトリスはよくやり込めていたから、何とかなるー。


俺の目の前に巨大なスクリーンが映し出された。


そして、スクリーン内に小さなドラゴンの赤ちゃんが次々と落ちてきた。


俺がタッチペンをふるい揃えると、子ドラゴンが鳴き声を上げ消えていった。



落ちていくスピードは、徐々に短くなっていき俺は焦りながらも冷静に状況を把握し、連弾した。

そして、時間内に全てのドラゴンを揃えて消した。




山田、木村、江崎、俺の4人で、残りの30分をゲームに費やした。



木村は、ゾンビの集団を次々と打ち殺していた所で手強いボスと遭遇し、時間が間に合わず、ゼウスの雷により命を落とした。


江崎は、大蛇と格闘していたが、最終的に飲み込まれ命を落とした。


どうやら、このゲームは力任せにやるより頭脳もそれなりに使うと、俺は見た。

敵の特徴や弱点を把握し次の動きを先読みしなくてはならないらしい。


ゲームの関係者らは、一体、何を意図しているのだろうー?


もしかして、俺たちを試しているとか、他に見ている人がいるというのだろうかー?


彼らは、ゲームに相当の自信とこだわりがあったのか、俺と山田野助けを必要とはしなかった。


3回までの手助けは、許されてはいたのだが…




そして、とうとう最終的に俺と山田の2人が生き残った。


俺たちは、強運だった。


アクションゲームは、俺の得意分野で力ずくでモンスターをパンチし続けた。


厄介なゲームはなく、クイズ問題は、雑学的な知識のある山田が時折助け舟を出してくれた。


パワーの俺と、知識の山田でお互いに補いあった。



俺たちがゴールまで辿り着くと、ケット・シーはパンパン手を叩き、


「ブラボー!」


と、歓声を上げた。



「このゲーム、実は、多くの脱落者が出たんですよ?あなた方は、正に強く素晴らしい!」


ケット・シーの手をパチパチ叩く音は益々強くなった。


3人の仮面の男達は、真顔で手をパンパン叩いている。


コイツらは、明らかにイカれてやがる…




俺と山田は、ゴーグルとヘッドホン、スピーカーが内蔵されているヘルメットを外した。


目の前の光景を目の当たりにし、俺と山田は戦慄した。



目の前には、無惨にも血塗れの仲間たちの遺体があった。



矢張、ゲーム内と現実世界は感覚器官全てがリンクしていたようだった。


すると、奥の方から映写機を持参した仮面の男達が無言でやってきて、映写機のスイッチを押し巨大なスクリーンに映像を映し出した。



スクリーンには、手をパンパン叩くケット・シーの姿が映し出された。


彼は、豪勢な椅子に座り右脚を組んでワインを嗜んでる。


彼の右手側には、フルーツの盛り合わせが置かれており、奴の居る豪勢な洋間といい、その光景が、妙に癪に触った。



「生き残った皆さん、お疲れ様です。」


無邪気な子供のような声に、妙にニヤけたこの口元は、相変わらず不気味で不快である。


コイツの悠長にリンゴを齧っている様を見て、俺は思考が停止され腹の底から強い不快感を覚えた。


「皆さんには、報酬として25ルビーを支給したいと思います。

そこで、ステージの難易度に合わせて、支給するルビーの数は変わってきます。沢山のルビーでハイリスクハイリターンを取るか、少ないルビーでコツコツ何年もゲームを続けていくかは、あなた方にお任せしたいと思います。因みに、借金額分のルビー溜まれば、あなた方の借金は、全てチャラです!ブラボー!」


ケット・シーは、はしゃいだ声で手をパンパン叩き脚を組みながら悠長にワインに口をつけた。


今まで、沢山の残酷なゲームが繰り広げられてきたというのに、コイツは呑気で楽天的である。


しかも、俺たちの目の前には、人の死体が三体横たわっている。


コイツは、今まで沢山の死体を見てきた筈だが目が爛々と輝いているようであり、ただのゲームとばかりに弄び楽しんでいる。


大抵の人は恐怖や戦慄を感じるであろう、このゲームを、コイツは、その光景を何とも思わないどころか無邪気な子供のようにはしゃいで喜んでいる。


如何にも他人事のようであり、彼は、サイコパスそのものである。


「えー、実を言うとですね…さっきまでのゲームは、ふるいにかけただけなんですよ…ゲームは、個人の資質も問われますが…何せ、アドベンチャーワールドは、殆どがチームプレーですので、協調性のない人は富裕層も退屈でしょうからら、初っ端から切り捨ててきました…」


沈黙が流れる中ー、ケット・シーのリンゴをカシュっと齧る音がこだました。



「彼ら富裕層は、知識人なのでチームの輪を乱す者は好みません。そこで、次回からは、そこまで厄介な問題は出さないつもりです。クイズやなぞなぞばかりだと、皆退屈しますので…それに、死人が予想外に多過ぎて、我々は、死体の処理に手間が掛かったしまいましてね…多少の協調性の乱れは見逃す事としましょう。」


「…」

「…」


「まぁ、それは良いとして…彼ら富裕層、刺激を求めると共に、あなた方が考え悩み抜く様を堪能したいのですよ…どうか、落胆させないで下さいね。我々もあなた方のご健闘をお祈りしてますからね?では、次回お会い出来るのを、楽しみにしてます!」


ケット・シーは、無邪気な声で優しい口調で話しながら再び手をパンパン叩きグラスのワインを飲み干した。



俺と山田は、呆然としながら互いに顔を見合わせた。


そして、仮面の男たちからそれぞれ25ルビーを支給され、部屋へと戻った。

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