後悔【ラフィーネ視点】

<ラフィーネは振り返る> 




 目を覚ますと。


 馬車に揺られていました。



 …………地下牢とかではなく?なぜ??



 後ろ手に、縛られている、ようで。身動きがとりづらい。


 体が起こせない。



 最後の記憶は、夜会の場で捕えられたところだったはず。


 そこから……随分時間が、経っている、ような。



「おはようございます。ラフィーネ様」



 少し上から降ってきた声は。



「…………ティナ嬢、だったかしら。


 なぜ。私は、どうなるの?」



 乙女ゲームヒロインのかわいらしさが欠片もない、怜悧な顔の男爵令嬢。



「私が嘆願し、ラフィーネ様を減刑していただきました。


 代わりと言ってはなんですが、当男爵家もお取り潰しです」


「はぁ!?なぜそのような」


「王国は主戦場になる。


 このままいては、私の家族も犠牲になるので。


 取り潰しは表向きの沙汰で、ただの爵位の返上です」



 本当に、先の場の通り、なら。


 そんなことが、通る、はずが。



「……納得いきません」


「国が戦場になるなんて、ですか?」



 …………それよりも、もっと。


 私が、納得、できないのは。


 わからないのは。



 あなたの、目的。



「いいえ。ならあなた一人で逃げればいいでしょう。


 なぜ減刑嘆願までして、私を連れ出したのです」



 私はある意味、破れた。


 そのはずなのに。



「私を貶めたのは、あなたなのではないですか?」


「そうですよ」



 まさか、とは思っていたけど。


 やっぱり、ヒロイン・ティナは――――!!



「ではなぜ!」


「あなたが欲しかったからです」



 予想外の答えに。


 本当にほんとうに、夢にも思わなかった、こたえに。



 私は動けなくなった。



「…………………………………………は?」



 かすれたような、声が出た。



 喉が急に乾いて。


 瞬きが減って、目も乾いて。


 息が、言葉が、続かない。



「ああ、もちろんこう……性的な意味で、です。


 お嫌でしょうが、抵抗少なくお願いいたします。


 傷つけたくは、ありませんので」



 私の心は、深く深く、傷ついた。



 なら私は、あんなことしてる場合じゃ、なかったのに。



「では……いいですね?」


「……………………ぇぇ」



 馬車が、ゆっくりと郊外の小さな屋敷の前に止まり。


 私は拘束されたまま、中に連れ込まれ。


 慰みものに、された。

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