貴方の海に溺れたい

涙の海

この青い海に溺れることが出来たら、僕は、どんなに楽だろう。


恋の後悔に苛まれ、僕は何度も涙を流した。


その涙は、きっと、この青い海ほどに、深く、そして、冷たい。


僕の祈りはただ一つ。


いつか、あの青の青さに、溺れる程、感涙した日の事を、貴方に伝えられたらいいと……。


たった一度の綺麗うつくしい涙を、流したあの暑い夏の日に、貴方は、青い海を背に、僕に笑って見せた。


あの時に、僕は、あの青い海に、溺れてしまえれば良かったんだ……。


貴方は、今、誰に、笑いかけているだろう?


貴方は、今、どんな、青い海を見てるいるんだろう?


その瞳に、その青い海を、映し出したような、その綺麗うつくしい瞳に、今、一体、誰を、映しているんだろう?


貴方を失うと分かっていたら、僕は、あの日、あの青い海に、溺れただろう。


例え、戻れなくなったとしても……。


もう、人間であることすらもやめていい。


そう。いっそ、僕自身が、青い海になれれば、この悲しみを、涙を、一緒に連れて、溺れてしまえるのかも、知れない。


それほどに、貴方を、愛していた。


それ以上に、貴方を、愛している。


この愛は、誰も、追いつけるはずなどないと、思っていた。


だけど……、僕の想いは、確かにだったけれど、


貴方にとっては、こんな風に、暑い暑い、夏だけ、必要とされる、青い青い海のように、ではなく、だった。


過ぎ去りし、恋。


過ぎ去りし、夏。


過ぎ去りし、想い。


過ぎ去りし、貴方。


過ぎ去りし、青い海に溺れた僕。


青い空に、映された、青い海は、僕と貴方のようだった。


おんなじ色をしているかのように見えて、その、何もかもが違う。


ずっと、交わる事の無い、青と青。


僕は、交われないのなら、青い海になって、どこまでも、どこまでも、貴方の涙の海に溺れたい。


それが、僕を想った涙ではなくても。


それが、僕を愛した涙ではなくても。


それが、僕を失った涙ではなくても……。


僕は、貴方の、青い海に溺れたい……。

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