転生してゾンビになったらシアワセになる義務から開放されてめっちゃ楽になりました!

ドロップ

第1話 ゾンビ固定なわたし

 もしも異世界転生できたら、一番はじめに叫ぼうと決めていた言葉がある。


 わたしは、その言葉を目一杯さけんだ。


「ステータス!」


 おお! やったぁー!


 わたしの視界に、ステータス画面が表示された。


 名前、LV、HP、MP……


 いろんな項目が並んでる!


 ・・・・・ってなにこれ。


 あらゆる項目がぜんぶ横棒表示。


 LV--HP--MP-- 

 ↑こんな感じ。


 ※普通は大体こう↓

 LV1 HP40 MP20


 え? 数字が入ってないんですけど。


 レベルが横棒ってどういうことですか?


 おかしいなと思って、画面のいろんなところを見て確認したら、理由がわかった。


 固定ステータスっていう欄があって、そこにゾンビと書いてあった。


 つまり私は、ゾンビ固定キャラとして異世界転生したのだ。


 ってオイ、嘘でしょ?


 なんでゾンビ?


 あっそうだ……。


 わたしは転生前の記憶を思い出した。


 わたしは自分のことをゾンビって呼んでたんだ。


 人の役にたたなきゃと思って、いろんな気遣いをがんばってきたけどことごとく裏目に出て、結局相手を不幸にする。


 その様は、まるでRPGゲームで、ゾンビになってしまったキャラみたいだった。


 敵味方関係なく攻撃してしまう。


 立って剣を振っているのに、戦闘不能扱い。


 生存者としてカウントしてもらえない……。


 わたしは、リアル世界でもゾンビ固定だった。


 ・・・・・だからってこんなの酷い!


 なんで異世界に転生してまで生前のステータスを引き継がなきゃいけないの?


 神様は残酷よ!


 わたしはそんな風に叫んでみたけど、誰もなんにも答えてくれなかった。


 だって、わたしが目を覚ました場所は、地底ダンジョンの奥の奥の奥だったんだから。


 この小さくて暗い部屋には、わたし以外誰もいなかったんだから。


 まぁそんな感じでわたしの暗い暗い異世界生活が始まった。


 どうなることやら…… 


 目を覚ましてすぐに「新ステータス獲得!」のおしらせウインドが目の前に浮かんだ。


 まだ一歩も動いてないんですけど。


 ウインドを開いてみると、


「おめでとうございます!

 新しい固定ステータス『孤独耐性』が追加されました!

 これであなたは『孤独が原因の自殺』を100%回避できます!」


 ・・・・・。


 いや……あの……これっておめでとうなんでしょうか。


 ってか、よっぽど辛かったら死なせて欲しい……。


 そのあと、続々と新固定ステータスが追加された。

  

「新しい固定ステータス『ノーメイク』が追加されました! 

 新しい固定ステータス『ノー洗顔』が追加されました! 

 新しい固定ステータス『ノーバスタイム』が追加されました!

 新しい固定ステータス『ノーシャンプー』が追加されました!

 新しい固定ステータス『ノーファッション』が追加されました!

 新しい固定ステータス『ノーダイエット』が追加されました!

 新しい固定ステータス『ノー女磨き』が追加されました!

 新しい固定ステータス『ノーミラー』が追加されました!

 これであなたは、イケてる女になれない現実への絶望を100%回避できます!

 

 そんなん回避できても嬉しないわ!


 ってか、ノーノーノーノー言われると、なんか傷付くからやめて……。


 それから、なんでぜんぶ固定なの?


 なんかの呪い?


 罰ゲーム?


 もういや……。


 新しい固定ステータスをぜんぶひっくるめると、要するに、化粧しなくて洗顔もしなくてお風呂に入らなくてシャンプーもしなくてプロポーションなんかどうでもよくて女磨き一切しなくて鏡で自分の身なりをチェックすることもしない。


 干物女やん……


「新しい固定ステータス『干物』が追加されました!」


 うっせぇーわ!


 ってか干物!?


 まぁゾンビだし、女子力とか関係ないよね。


 はぁー、とため息をつくとまたインフォメーションウインドが。


「今のため息で女子力が10下がりました」


 は?


 するとステータス画面が勝手に表示されて、ある項目が点滅していた。



 女子力 マイナス250 



 なんでステータスに女子力って項目があるの!?


 ってかぜんぶの項目が横棒なのに、なんで女子力だけ!?


 マイナス部分だけしか示してくれないなんて、そんなの毒親過ぎる……。


 まぁいっか。


 どうせゾンビだし、女子力なんかどうでも。


「新しいスキル『開き直り』を学習しました!」 

 

 ……この異世界のシステム、なんか悪意しか感じない。


「でも、もういい!

 どうせゾンビだ!

 開き直りスキル全開で生きよう!」


 と、誰もいない部屋でさけんで、明るい気分になるように自己暗示をかけてみた。


「新しいスキル『独り言』を学習しました!」 

「新しいスキル『惨めな自己暗示』を学習しました!」 


 勝手に「惨めな」をつけるな……。


 でも、その惨めなスキルの効果はちょっとだけあって、なんとなく動いてみる気になった。


 わたしは、はじまりの小さな部屋を抜け出して、外に出てみた。

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