1章から4章外伝第3話

 宴会が始まって俺とナナはワインを飲む。俺とナナの席にはすぐに様々な料理が用意され、俺はそれらを楽しむ。ワインを全部飲み切っても近くにいる17歳くらいの女の子の民がワインを注いでくれる。


 そのそばで役人のダースは立ったままで食事もしないで様子を見る。俺はダースに声をかける。


「ダースは飲み食いをしないのか?」


「ワンダラー皇太子陛下、我がお酒を飲みますと司会が出来なくなります。お誘いは感謝いたしますが飲酒はご遠慮願います」


「酔わなければいいのだな。じゃあお前」


 俺は17歳くらいの女の子の民に命を下す。


「はい!」


「ダースにぶどうジジュースを与えろ。グラスはワイングラスだ」


「かしこまりました!」


 17歳くらいの女の子の民はワイングラスとぶどうジュースの瓶を持ってくると、ワイングラスをダースに渡し、そのグラスにぶどうジュースを注ぐ。


「どうぞ」


「感謝する」


 ダースはぶどうジュースを飲む。俺はダースに質問する。


「どうだ? ジュースか? ワインか?」


「色はワインらしいですがアルコールの味がしません。ジュースですな」


「そうだろうな」


 俺はそんな話をして盛り上がる。すでにナナは酔いつぶれていた。ワイングラスでワイン4杯も飲んでいろんな料理を食っていた。


「美味しいです。この村の者達のお力はまさにワンダラー皇太子のお力そのものと言えるでしょう!」


「税金を半減し施しを増やせばさらに美味い料理になるだろう」


「あのう、それを行うと我々が困窮します」


「良い、俺は贅沢を好まない。そんなことをして楽しいと思った事はない」


「なんと……では私にも贅沢は我慢しろと?」


「そんなことは言っていない。いつもどおりの給料は用意する」


「かたじけないです」


 ナナも働いている。飯とか水とか生活していける金は必要だ。


 俺は贅沢は出来ない。贅沢は今やっているたまにの宴会だけでよい。


 酒で話が進んだ頃、ダースが俺とナナに声をかける。


「満足ですか? お酒もそれなりに飲まれておられますか?」


「ああ、ダース。俺もナナも酔っている」


「かしこまりました。あちらの民も酔う者やそうでないものも楽しんできましたからねえ」


「そうだな。それでどうすんだ?」


「はい。最初のイベントを開きます」


 ダースは民や自分の部下に準備をさせる。広場の中央に闘技場のように見せる柵があるがあれが関係しているのだろう。中央に縄で縛られた女の子がダースの部下によって連行されて打ち捨てられ、ダースの指示でダースの部下によって縄を解かれる。


 よく見たらその女の子は見たことある。俺を暗殺しようとした暗殺女だった。


 俺が返り討ちにしたことで捕縛し、ダースに任せていた。見た目は14歳くらいの少女でピンク色の短髪に露出度の高い服装。それなりの暗殺者だろうか。


 俺はダースに質問する。


「奴は何なんだ?」


「それが、拷問しても口を割らないどころか俺に対して殺意の目を向ける者でして、恐ろしいと思ったのです。それだけではなく、可愛い顔して笑うこともあり不気味です」


「マジか。まあいい。そういう奴は死んで当然だな。口を割らないということは死ぬことも覚悟しているのだろう」


「はい、この者にはワンダラー皇太子殿下がお喜びになるような無様な死を送ります」


「期待している」


 ダースは民全員にある話をした。


「皆の者、この者はワンダラー皇太子殿下を暗殺しようと企んだ愚か者。我が拷問をしたが口を割らず、今日ここで公開処刑をすることになった。皆に問うがこの者は処刑すべきかしないべきか」


 酔っている宴会でそんなことは決められない話。しかし民達の答えは決まっていた。


「そんなことは決まっている。処刑だ! 処刑以外にあり得ない」


「そうだそうだ!」


「皇太子殿下に刃を向けるとは罰当たりもいいところだ!」


 こうして全員が処刑を希望した。俺が本当の悪役なら、この俺のポジションはきっとクズ野郎だ。


 しかしこれは脅迫ではなく本当の民が願っていること。もはやこの暗殺女に生きる権利はない。


 俺はダースに暗殺女の処刑を命じた。


「処刑を許そう。ただ俺とナナが楽しめる公開処刑とするのだ」


「かしこまりました。すでに準備は整っております」


 ダースが用意したのは巨大な魔物だった。それは肌が緑色の悪魔系の魔物。


 全長4メートルはあるだろうか。巨大な棍棒を持ち大きなおたけびを上げる。


 俺はこの魔物が何なのかをダースに質問する。


「こいつは何だ?」


「ランクAの超上級魔物、ギガデビルでございます」


 巨体な体の悪魔の魔物で棍棒攻撃が得意。そして防御力に体力攻撃力は最強クラス。


 この魔物を見た暗殺女だが恐れない。


「何だ? 恐れていないぞ」


「それなりの暗殺者なのでしょうか? ワンダラー皇太子殿下にははるかに及びませんが。しかし保険はあるのでご安心ください」


「保険?」


「それはお楽しみです」


 こうして、ギガデビルと暗殺女の死闘がはじまった。この死闘で最初に暗殺女がボロボロにされるため民は全員笑いに笑った。この段階では俺とナナは笑う段階ではない。

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