1章から4章外伝第2話

 今の俺の領地は小さいが目立った争いごともなく、また兄様達の内部分裂もないことから平和な日々が続いていた。


 俺はただ外で出かけているだけなのに民は俺を慕っている。俺は困っている民がいたら救ってあげるし手を差し伸べる。あと定期的に飯と金を与えている。だから民から慕われているっていうのもあるかもしれないし、反乱も起きない。


 豊かな生活というものだ。


 俺とナナがプライベートで俺の領地を歩いていると1人の民が俺に話しかける。


「これはワンダラー皇太子にナナ様、今日は広場で宴会です。花火なども上げる予定でして」


 そんな話は知らない。民が何をしようと勝手。反乱を起こしてくれなければ。宴会くらいはいいものだ。しかしなぜ宴会をするのだろうか。俺は民に聞く。


「宴会だと? そんな予定は聞いていないが」


「ワンダラー皇太子の日頃の恩返しです。ワンダラー皇太子のおかげで我々は裕福に暮らすことが出来ます。それでお金に余裕が出来たもので、宴会を開こうと思うのです」


「そうか、それは面白いのだな?」


「はい、精一杯おもてなしをいたします。さあこちらに」


 俺とナナは民の案内で広場に招待された。


 広場には様々な料理を作っているテントにビールが用意されているテント、ワインが用意されているテントなど様々なテントがある。


 乾杯をするのはまだ先だが、俺とナナが来たことでその広場を管理する村長がかけつける。村長は老人。すでに70歳だというのに宴会でいきいきしている。


「おお、これはこれはワンダラー皇太子にナナ様。よくぞおいでくださいました」


「村長、年を考えろって。こんな時に大規模な宴会なんて体を壊すぞ」


「私のような者にお体の心配をしてくださりありがとうございます。今日は滅多に出来ない宴会です。この村の者達でワンダラー皇太子のお力を象徴する宴会を開こうと思っております」


「ほうほう、それで先ほどの村人は俺とナナを招待したわけだな」


「さようでございます」


 これについて私は話をナナに振る。


「どうだ? これはいいことか?」


「はい、我らの領地の民がこのようにワンダラー皇太子のために宴会をお開きになるというのは喜ばしい事です。これを断るようなら領地の主として恥ずべき事。必ず出席するべきです」


「おお、分かったぞ」


 宴会の広間にある豪華な高台。赤いカーペットの上に黄金の玉座と赤い玉座。


 黄金は俺の席で赤はナナ。どちらも座りごこちの良い玉座だ。


 俺とナナはそれぞれの椅子に座ると、17歳くらいの若い女の子の村人が俺とナナのためにワイングラスを用意してくれた。そしてワイングラスに赤ワインを注ぐとこのように言う。


「ごゆっくりおすごしください」


 さらに村の役人もやってくる。その役人の名前はダース。俺が信頼する部下の1人だ。


「ワンダラー皇太子殿下、ナナ様。本日はお忙しい中お越しいただきありがとうございます」


「別に俺とナナは忙しくない。暇で領土をウロウロしてたらこの村の民によってこの宴会に招待されただけだ」


「絶対に退屈などさせません。必ずやここにきてワンダラー皇太子殿下、ナナ様に大満足と言える宴会にいたします」


「その言葉、忘れるな。言っておくが俺は酒を大量に飲み飯を多く食うだけの宴会では満たされんぞ。そんなことは誰でも出来ることだ」


「分かっております。必ずや大満足の宴会といたします」


 そう言ってダースは大きな声を出せる魔法道具でこの村の民に演説を行う。


「皆の者。今日は宴会の準備ご苦労だった。今宵はワンダラー皇太子殿下、ナナ様のご苦労をねぎらうため、このように宴会を行うことにした。この宴会にはワンダラー皇太子殿下、ナナ様の好物だけではなく、そなたらが思う存分満足に食えるほどの料理を用意した。もちろん料理だけではない。舞姫に芸人、さらには模擬戦などといったものでワンダラー皇太子殿下、ナナ様には朝まで楽しんでもらう」


 朝まで俺とナナが楽しめるように、この玉座の後ろのテントに俺とナナ専用のベッドがある。


 酔いつぶれて眠くなったらそこに寝かせる配慮だろう。


 ダースは俺に民に一声話すようお願いされた。俺はそれに答えて演説をする。


「皆大義、このような宴会に誘ってくれたことを感謝する。今後もこのような宴会が続けられるように努力を重ねる。お前達に負担はかけさせない。もしも不満があれば遠慮なく言ってくれればいい。必ず即解決しよう」


 これに民たちは声援をあげる。中には解決してほしいことを言ってくるものもいた。


「では、お金が足りません。我々に施しをお願いします」


 これにダースは激怒するも俺は止める。


「貴様、ワンダラー皇太子殿下を侮辱するか!」


「いい、不満があれば言ってくれと言ったのは俺だ。あの民はその不満を言っただけだ。よかろう。今後は施しに必要な金を倍にする、税金も3分の1にする」


 これには民は喜んだ。それに加えさらに俺はこんな話をする。


「今日は俺とナナを楽しませれば今後の税金は半分にしよう」


 これには民は全員喜んだ。そして俺が乾杯と叫ぶと全員で乾杯という大きな声がこだました。

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