1章第7話 港町マリンブルン

 私はH級の魔物であるスライムやブルーマウスにゴーストを倒していった。


 G級の魔物を圧倒できる私にとってH級の魔物は敵ではない。銅の剣でも簡単に倒せるし皮のドレスと黄色いリボンで素早さも上がり魔物の群れで襲われてもびくともしない。


 私が貯めているのは少しずつ溜まっていく経験値とお金。そのおかげで私は強くなっていく。


 魔物を倒しながら廃墟となった町を歩く。私は回復魔法を唱えるだけの気力は十分で傷もあまりない。


 それでも誰かの助けはない。私はただひたすらに歩き続けた。


 どれだけ歩いただろうか。町の外に出ると草原があり道のりを進む。


 魔物も襲ってくるがH級の魔物ばかり。私の敵ではない。


 魔物を倒しながら私は歩き続けた。


 どこへ行くとも分からず私は歩き続けた。


 どれくらいか歩いた時に1台の馬車が通る。


 その馬車は異世界のタクシーだ。手を挙げれば乗せてくれる馬車。後払いでお金がかかるが、乗っていればG級の魔物程度なら襲ってこない。これは馬車に魔除けのアイテムが置いてあるからだ。


 私は手を挙げて馬車に乗せてもらう。馬車の運転手は茶色いハッドを被ったおじさん。


「お嬢ちゃん1人かい? 行先は? 家はどこ?」


「家はない……」


「家はないって? パパは? ママは?」


「いない……別人になっちゃった」


 私は悲しみのあまり涙を流す。運転手のおじさんも困ってしまうが小さい子は置き去りに出来なかったのだろう。そこでこんな提案をしてくる。


「じゃあさ、港に行くかい? あそこなら施設とか生活出来る者もあるし、小さい子でも旅が出来るようなガイドさんもいる」


 この提案を受けるべきかと思うが、おじさんの親切な言葉に私は受け入れようと思う。


「うん。じゃあ……お願いします」


 私は馬車で港へ向かった。運転手のおじさんは私に港について教えてくる。


「いやあ、小さい女の子を港へ案内するなんて何年ぶりだろうか」


「私のような子って珍しいの?」


「そうだなあ。近頃生活は困窮だし学びの教会の運営もままならないからね。大人で文字が読めなくて計算が出来ない子は多いよ」


「私……文字読める。この国の言葉分かる」


「お嬢ちゃんは本が趣味なのかい?」


「うん」


「これから行く港、マリンブルンっていうんだけどさ。大きな図書館があるんだよ。でも本を借りる人はいないのと文字読めない人が多くて経営はよろしくないんだよね。国が税金の一部を与えているから保っている感じだよ」


 この世界の経済も政治もいいものではないようだ。だからこんな世界で私の両親のようにお金がたくさん手に入ったら嬉しくなって性格も悪くなってしまうのは仕方のない事なのかもしれない。


「おじさん……石鹸とかさ。贅沢な物が手に入ったらどうしたい?」


「贅沢? いやあ、贅沢なものねえ。確かに石鹸なんて本を読んで学ぶ人には作れるのだろうけれど、それくらいの才能があればおじさんもやってるって」


「そう……なんだ……」


「でも手に入ったら喜んじゃうね。金貨10枚の壺なんて手に入れたらみんなに自慢できる」


「贅沢は……良くない?」


「良くないとは言わないさ。でも貧乏でも出来る生活ってあるよね。働いて飯食って寝る。1日を何不自由なく暮らせるだけでも幸せなもんさ」


 私は運転手のおじさんと会話していてお姫様になることで何が大事なのかを理解する。


 お姫様になったら贅沢な暮らしが出来る。それは違う。困っている人を助ける。それもあるかもしれない。だけど違う。


 みんなが平等に不自由ない生活を作ること。これが正解かもしれない。


 私が転生前に絵本で見たおとぎ話のお姫様は綺麗なドレスをまとって綺麗なティアラを被る絶世の美少女。


 でもそんなものはお金があれば誰だってなれる。きっとそうじゃない。


 私はその答えを探るのと今後の生活に備えて家を去る時に持ってきた本を読む。


 その本には町での重要なことが書かれている。


 まじめに本を読む私を見て運転手のおじさんが色々と私に聞いてくる。


「お嬢ちゃん本当に本読んでるんだねえ。その文字の言葉難しくない?」


「いや、すぐに覚えちゃった。それに本を読んで調べるのは楽しい」


「変わってるねえ」


 私は町の事について様々なことを知った。料金の両替。そして身分証明書など。武器屋に衣服屋など様々だ。


 私は町に関する様々なことを知り、夕方、町に着いた。


 私は馬車を降りてお金を払う。


「ありがとう、おじさん」


「仕事だから当然さ。ところで、料金なんだけど」


「この銅貨何枚?」


「ああ、距離でいえば銅貨20枚だよ」


「じゃあ……」


 私は大きな袋の中にある銅貨を20枚運転手のおじさんに渡す。


「ありがとう。また乗る時があったら手を挙げてね」


「うん」


 そう言って運転手のおじさんは去っていった。


 まずは溜まりに溜まった銅貨をなんとかするために料金の両替所へ向かう。


 本の内容では銅貨100枚で金貨1枚。銅貨10枚で銀貨1枚の計算になる。


 私は銅貨を受付のおねえさんに渡して計算してもらった。


「すごい銅貨の量ね。ちょっと待っててね」


 私はしばらく待つ。すると金貨100枚と銀貨7枚という計算で帰ってきた。


「すごく魔物倒してきたの? 小さいのに凄いね」


 おねえさんは私を褒めてくれた。

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