第3.5話 休日

 一話より前の生活です


「ん〜、よく寝た」


 ユウヤは早くに起きる。そして、窓を開けて、太陽を浴びてから着替えをする。パジャマはタンスにしまって朝のストレッチをして飯を食べる。

 貧乏だが、テーブルや椅子はある。

 飯といっても適当な野菜と芋を使った物だし、飲料といったらビールだ。

 そして、クインと遊びに外に出かける。


「………」


 ユウヤは周囲への警戒は怠らない。

 下手したらどっかに売り飛ばされるからだ。売られても変わらない、それか借金は関係なくなると思うかもしれないが、ここはかなり奴隷に優しいところで、他のところでは本当にクソみたいな扱いだ。

 そして、ユウヤの家は異様にスラムと近い。

 ほぼ隣といって差し支えないだろう。なぜそれでもここに住むのかは家賃が安い。それなのに下水道はついているから。ユウヤにとってはとても有難いところだろう。

 


「あ、こんにちは。ユウヤくん」

「あら〜、大きくなったね」

「こんにちは〜」

「あ、はい。こんにちは〜」


 今、忌避感なく接してくれた三人衆は美人で優秀と言われている人達だ。順にテキシャ、カナミ、グノルだ。以前、彼女たちを攫おうと六人が襲ったが、返り討ちにあい金的をやられていたという。

 クインとはいつも広場で集まる。

 ちなみに午後に処刑がたまにあるだけなので、処刑の時に会うことはまずない。


「お〜い、ユウヤ〜、待たせたか?」

「ううん、待ってないよ」


 クインが手を振りながら走ってくる。クインはいつも不用心だ。装飾具を身に着けながら遊びに来るからである。しかも、いつも光っている指輪があるのだ。勇気があるなとユウヤは思っている。

 クインとはどこで遊んでいくかは、前日に決めることが多い。基本的にクインが娯楽施設に連れて行ってくれることがほとんどだが、他の子供達と鬼ごっこをしたりもする。

 ―――数少ない遊び相手だ。


「行こうか」

「うん」


 クインがそう言って移動していくので、ユウヤはクインに着いていった。場所はクインがいつも帰っていく方向―――富裕層と一般層の間にある。

 かなり豪華な娯楽施設だ。

 言ってしまえば見てくれは派手ではないが、大きな窓が付いていて、そこからシャンデリアが見えているし、丁度いいベランダもある。

 中に入るとかなりの人数がいた。良く見てみると、富裕層に混じって一般層にいた平民達もいた。

 娯楽施設で子供も多少いるが珍しいので、視線が集まってくる。


「どこ行く?」

「あぁ、ボードゲームでもしたいな」

「ボードゲームかぁ。何好きなんだ?」

「え?チェスとか、かな」

「おぉ!好きになってくれたか!チェス!さぁ、二階に行こうぜ」

「うん」


 クインと一緒に二階に行って、チェスをする。飽きた、もしくは昼になれば一階に降りて食事をする。

 食事をする場所の窓からは迷宮が見えている。

 ユウヤは思わず迷宮から目を逸らした。それは迷宮から何かを感じとっているからだ。


 ユウヤは基本、紅茶とサンドイッチなどを頼むことが多い。


「ユウヤって膜見るの好きだよな。はい、ミルク」

「ありがと」


 紅茶などは硬水になると、渋みが薄くなり色はコーヒーに近くなって膜のようなものが出来る。ユウヤはそれを眺めながら、ミルクを注ぎこんだ。

 もちろん、片手でサンドイッチを食べながら。

 この優雅さは借金がある者のようには見えなかった。

 ―――ただ、ユウヤは有名らしく、見ただけで避けられてしまう。


「それじゃあ、本、読みに行こう!」

「そうだな」


 食べた後は運動やユウヤの家に行く事が多いが、たまに本を読みに行く。この娯楽施設のように富裕層でなくとも図書館へ行けるのだ。

 図書館で本を読んだ後は、図書館で良く会う友人との感想会が始まる。

 それも終わればすっかり夕方になっていて、クインはユウヤの家まで着いていって、その後自分も帰る感じだ。


 風呂などは無い。諸々の理由としては、水が汚いので病気に掛かってしまうと思っているからだ。

 浄化自体は多少されている。

 一応、水魔法が使えればそんな事気にしなくて良い者はいるが、使えないのでタオルを使って垢を落とす。


「遊んでつかれた〜」


 ユウヤはそう言ってベッドに飛び込んだ。

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