プレイヤーイベント戦@中央1

「ゎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!」


〔そろそろですね〕


〔ね〕


 遠方から甲高い悲鳴が聞こえてきたかと思うと、急速に声が大きくなってきた。


「きゃァァァァァァァァ!!!!!!!!」


 地面が一直線に割れ、更なる悲鳴と共に何かが空へと打ち上がる。


「あ、『アクアクッション』!!!!」


 1時59分59秒。空から落ちてきた少女が、水のクッションによって着地した。


「はあ、はあ、はあ、、、死ぬかと思いました」


〔草です〕


〔運んできたのは氷室かな?相変わらずロロ以外は適当だねぇ〕


〔それでは、定刻となりました!イベント開始を開始致します!実況はワタクシ、リリィが!解説はマヌティノーゼでお送り致します!〕


〔さっきから気になってたんだけどさ、なにそのキャラ〕


〔実況は熱くやるもんだろ?〕


〔、、、そうだね?〕


「はあ、はあ、はあ、、、。落ち着きました。それでは、攻め込みます」


 乙姫の宣言と同時に魔力が溢れだし、またたくまに城が形成されていく。


「そうはさせないのです!」


 真っ先に飛び出したのは十六夜。黒色の、背中に桃色の月が輝く着物を着、ドスを手に持ったこの少女は、今回集まったプレイヤーのなかでは五本の指に入る実力を持つ。


「『赤いろうそく』。竜宮城・タイプ『攻広』。『セイレーンの歌』。トライデント『起動』」


「にゅ!?や、辞めるのです!」


〔乙姫が幾多もの支援効果を発動させていく!次の攻撃は恐ろしいものになりそうだぁぁぁ!!、、、飽きたな。普通にやるか〕


〔それがいいんじゃない?〕


「彼の米国でも、この厄災は日本と同じ呼び方をされているそうです。そう、『津 波TSUNAMI』と」


「ファ!?、、、です!」


 高さ45m程だろうか。横幅はもう果てすら見えない。確実に数キロに渡る長さの津波が、突如乙姫の後方から出現した。


 スキル『赤いろうそく』

 とある人魚の伝説に因んだもの。10分間、海属性の魔法の効果を40%上昇させる。また、それが広域攻撃魔法であるならば、更に威力を40%上昇させ、範囲を拡大する。


 竜宮城・タイプ『攻広』

 様々な支援効果を持つ竜宮城の特化形態の一つ。主な能力は、広域攻撃魔法のみ威力を80%上昇させること。また、それが海属性であるならばさらに威力を20%上昇させる。


 スキル『セイレーンの歌』

 とある人魚の伝説に因んだもの。海属性の広域攻撃魔法のみ効果を70%上昇させる。


 武器スキル『起動』

 トライデントの槍の効果、『突攻撃、海属性、広域攻撃の威力を50%上昇』を、更に150%上昇させる。


 つまり、今回の『津波TSUNAMI』の威力は、通常の5.5倍となる。


「あああ!!!!もう!舞い乱れろ!狂い咲け!『十六夜一刃』!!!!でぇす!」


 黒く濁った桃色の刃が飛び、迫る波へと触れる。

 そして、スパンッと、津波が上下に割れた。


〔割れたねぇ。上下に真っ二つ!ま、そりゃそうだよね~。『十六夜一刃』は十六夜ちゃんの奥義。これがファストを守っての戦いじゃなかったら、一撃乙姫に当たればそれだけで倒せるほどの威力があるからね~〕


〔惜しむらくは津波を無視して乙姫を攻撃してれば、ファストが滅んでゲームオーバーになるってことだな。あれ以外方法がないとはいえ、私だったら迷って打てなさそうだな。まあ、打ったとて〕


 止まるとは限らないがな。リリィの声と共に、速度と規模がいくぶんかマシになった津波が、再び迫りだす。

 十六夜一刃はあくまでも線の攻撃。点での攻撃よりは範囲が広いとはいえ、面の攻撃には遠く及ばない。

 津波が両断されたとはいえ、元は不定形の水。威力、速度は落とせても、完全に消し去るには至らなかった。


「わっブクブクブクブク、、、、、、」


「十六夜が波に呑まれた!援護しろ!それと、あの津波を誰か止めろ!!!」


〔うーん。初手に対象になければ詰む攻撃。乙姫、あいつ性格わりーな〕


〔そかね?あんぐらい対処出来なきゃ勝ち目なんてないと思うけど〕


「『アースウォール』」


 高い土の壁が現れ、津波と打ち合う。津波よりはいくぶんか低い壁であったため、完全に止まることはなかったが、その規模は激減。最早、津波がファストにたどり着くことは不可能となった。


「ふぅん。魔力をけちり過ぎた?まあいい。ファストお菓子の街は私が守るから。攻撃は任せたわ」


 つまらなさそうにほら、行きなさいと手をしっしっと振る少女、アノノ・ヘルメメート。今回攻撃禁止を言い渡されたベヒーモスである。


「うおー!後ろ取ったぞー!」


 いつのまにか乙姫の背後にいた槍ーカ。乙姫へと飛びかかり、


「げふぅ!」


 振り向かれもせずにトライデントを突き刺され、ポリゴンと化した。


((((((よ、弱ぇぇ))))))


 掲示板で、頼れるベータネキとして慕っていたプレイヤーが、少しだけ失望した瞬間だった。


「竜宮城・タイプ『慰域』。チャージ『氷杭』。『充填ロール』『充填ロール』『充填ロール』『充填ロール』『充填ロール』『充填ロール』『充填ロール』『充填ロール』『充填ロール』『充填ロール』『充填ロール』『充填ロール』『充填ロール』『充填ロール』『充填ロール』『充填ロール』『充填ロール』」


充填ロール』、そう唱えられる度に、数え切れない程に大量の氷杭が、空に浮かび上がった。


「射出」


 浮かび上がった氷杭が、一斉にプレイヤーへと降り注いだ。


「『アォォォォォオォォォン』!!!!!!!」


 スキル『遠吠え』

 獣系の種族の能力値10%上昇。


「お前ら、防いでろ!!」


 狼のプレイヤー、URUFUが、迫る氷杭を避けつつ乙姫へと駆け出す。


「余裕のない奴は防御。余裕のある奴はURUFUの支援にでろ!!」


「ピヨンドさん、盾に隠れながら言われてもかっこよくないっス!!!」


〔蹂躙してんなぁ。にしても、あんなに魔法使って大丈夫なのか?大規模魔法は回数制限されてっから節約なんだろうが、MP足りなくなるだろ〕


〔だからこその慰域だろうねー。あれで回復に専念しつつ、打てるときにしっかりダメージを与えていく。堅実ぅ!〕


 イベント開始から約10。まだ戦いは始まったばかりである。

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