第10話 ありえない

ジェットコースターもそうだが。

この遊園地は地元ながらも本格的な遊園地さながらのアクションが.....ある。

例えば上に昇ってから落ちる様な。

そんなアクションもある。


「.....しかしまあ」


俺はそんな事を呟きながらアクションを楽しみに行った2人を見送る。

そしてベンチに腰掛けてぼーっとその方角を見ていると。

え、と声がした。

声の聞こえた方角を見ると.....何故か成瀬が。

俺はその姿に目線を鋭くする。


「.....えっと.....」

「奇遇だな。.....元カノさん」

「.....」


成瀬は言い淀む感じで黙る。

それから持っていた飲み物容器を見ながら、ね、ねえ、と言ってくる。

俺は、何だ。今は忙しい、と話す。

成瀬は、そんな訳ないよね。遊園地に居るんだもん、と切り出してくる。


「あくまで私が悪かったって言っているじゃん」

「.....申し訳ないが俺はお前とは二度と関わらない」


そして俺は吐き捨てる様にしながら立ち上がる。

それから歩き出そうとした時。

後ろから掴まれた。

待って。本当に私が悪かったって、と切り出してくる。

しつこいもんだな、と思っていると。


「.....何故貴方が居るんですか」


そう声が聞こえた。

冷めた声で、だ。

俺は友美の冷めた様な声を聞きながら。

そのまま腕を友美に掴まれる。


「行こう。恭三郎」

「.....そうだな。じゃあな。成瀬」

「.....」


成瀬は難しい顔をする。

それから呆然と俺達を見送っていた.....のだが。

飲み物を落とす音がした。

そして、待って。わ、私とまた付き合ったらお金が.....入るよ?、と言ってくる。


恭三郎ってあまりお金持ってないでしょ?、という感じで。

確かにな。

親父がFXだっけか。


それで成功して小金持ちだしなコイツ。

確か全ての資産が30億円だった.....気がする。

いやどうでも良いか。


「それがどうしたんだ?」

「そ、それでも見殺しにするの?大金が。私と.....お金が入るんだよ?」

「.....」


見殺しね。

すると今度は久城がやって来た。

そして、彼を離してください、と言う。

それから目を細める。


「久城?」

「裏切りはお金で済む問題ではないと思います。.....噂に関して聞きました。.....友美先輩に、です。これは全て貴方が招いた自業自得では?」

「.....」

「それに彼はお金で釣られる様な人じゃ無いです。私も知りましたから」

「.....」


成瀬は俯いた。

そして、.....分かった。今は退くけど、と言ってくる。

それから顔を上げてから、後悔しない事だね、と言ってくる。

コイツ何言ってんの?

全部コイツが悪いよね?、という感じで見る。


「.....私は全てを失ったんだよ?.....女子に情けをかけないとか。お金に興味ないとか意味わからない。貴方は本当に男の子?」

「俺としてはお前が何を言って居るか訳がわからない」

「.....」


気晴らしで来たのに不愉快になった、と逆ギレの様に言う成瀬。

いや全部コイツが悪い。

意味が分からない。


思いながら俺は哀れみの目で見る。

こんなにも情けない奴だとはな。

ここまでくるともう.....何も言えない。


「もう良いですか」

「.....」

「行きましょう。中西さん」


それから俺達はその場を去る。

成瀬を置いてから怒る友美。

そして複雑な顔をする久城と一緒に。

何をするかと思ったら2人は俺を観覧車に乗せた。


「時間を潰しましょう。.....じゃないと成瀬さんがまた現れるかもですから」


そういう事だった。

俺は、確かにな、という感じで大観覧車に乗る。

それから街中を見る。

海が見える。

街も見える感じだ。


「.....それにしてもしつこいね。.....あの女」

「まあそうだな。結構しつこいな。どこにでも居る感じで」

「.....」


友美は悲しげな顔で外を見る。

すると久城が、その、と切り出してきた。

それから顔を上げて俺達を見る。

俺は、どうした?久城、と聞いてみると。

久城は複雑な感じで俺を見る。


「.....そういう事があるって知らなかったです」

「話す必要もなかったしな」

「.....実は.....告白すると私もそうです。私も浮気されました」

「.....え?」


俺達は衝撃を受けて顔を見合わせる。

それから久城を見つめる。

久城はゴンドラの窓の外を見ながら、私。信じていたんですけどね、と言いながら涙を浮かべる。

だから男の人っていうのも信じられなかったんですけど、とも言ってくる。

そしてまたゆっくり涙を人差し指で拭いながら複雑な顔をした。


「.....久城.....」

「私は愛しい人に裏切られました。だから全てが失った様に見えた。.....だけど」

「?」


俺達を見ながら微笑みを浮かべる。

それから俺と友美の手を左右で握ってくる。

あなた方に出会ってから私の人生は変わった気がします。私は.....あなた方に出会って良かったです、と強く握ってきた。

俺達は顔をまた見合わせながら。

友美は泣きそうな感じの複雑そうな顔を浮かべながら握り返す。


「.....久城さんがそんな事になっているなんて思わなかった」

「中西さんと同様です。私も話す必要がなかったですから。.....だけど今日思いました。話した方が良いなって。あくまで(仲間)ですから」

「そう思ってくれてありがとうな。久城」


言いながら俺は久城を見る。

すると久城は、はい、と柔和な感じを見せる。

そして赤くなる久城。


でも私はあくまで(仲間)であり(恋人)じゃないです、という感じで.....あ。

それを今言うか。

ピシッと何かが凍る。


「.....ちょっと?.....恭三郎?どういうこったかな?うん?」

「待て。.....落ち着け。友美」

「ほほう。裏切ったね?」

「.....裏切ってはない。そんな言い方をするな」


何でよぉ!、という感じでポカポカと殴ってくる友美。

俺はその姿に、痛い!お前マジ馬鹿力だからな!?、と否定しながら慌てる。

すると。

目の前の久城が、あ、あはは、と笑った。


「.....久城?お前.....笑えるんだな」

「.....あ.....」

「可愛い笑みだね」

「.....はい.....」


久城は恥ずかしい感じで俯く。

友美はその姿に笑顔になる。

俺もその姿を見て笑みを浮かべた。

そして大観覧車はゆっくりと降り始める。

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俺の幼馴染の彼女がNTRた。そして俺は彼氏をNTRた少女に出会った。 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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