忙殺

逢初あい

忙しさに殺される

今日は、なんて日だろう。出勤前に上司に仕事を押し付けられるとは。今日の会議で使う資料の作成を当日の朝になって押し付けるなんて、やはりあの上司は無能だ。しかし、そんなことを言っても埒が明かない。会社に着くまでに終わらせなければならない。

 俺は、すぐさま準備を済ませ自宅を出た。俺は、無能な上司に対する恨み言を言いながらも、与えられた仕事をこなしていく。そして、今日は非常に幸運だ。いつもなら、挨拶をせがむ隣人や道を塞ぐように歩く学生が多く居るものだが、今日は殆ど出会さない。全く、いつもこうなら、俺はもっと気分がよく仕事ができるのに。タブレットを片手に仕事をしていると、気がつけばもう駅に着いた。間に合うだろうか。電車に乗り、また少し歩けばもう会社だ。

 電車を待つ間も、俺は仕事を続ける。電車に乗り込む。これまた幸運だ。席が空いているではないか。誰かに盗られる前に席に座る。これで集中して作業ができる。そうして、電車に揺られること数十分。会社の最寄駅に着いた。作業は殆ど終えることが出来ており、後は最終確認だけだ。相変わらずタブレットを片手に、俺は足早に会社へ向かう。階段の前で壁か何かにぶつかってしまい、危うくタブレットを落とすところだった。階段は気をつけて降りなければ。改札を抜け、会社へ向かう。もうすぐ作業は終わりだ。もう間も無く会社、と言うところで全ての作業が終わった。

 よし!なんとか間に合った。俺はほっと胸を撫で下ろした。すると、奇妙なことが起きているのに気がついた。周囲の音がだんだん近づいてくるようなそんな感覚に襲われたのだ。

なるほど、俺はそれほどまでに集中をしていたのだな。それにしても、車の音が凄まじいな。俺はあまりの音に思わず顔を顰めた。



・・・次のニュースです。今朝、駅構内でスーツ姿の男性とぶつかった高齢女性が階段から落ちて死亡しました。その男性は、そのまま改札を出ると、赤信号の横断歩道を渡りトラック

に轢かれ死亡しました。

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忙殺 逢初あい @aiui_Ai

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