2-3
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その年の入団試験があと二週間ほどに
「試験会場は皇都!?」
アグネス侯爵家の騎士団からこっそり手に入れた、試験の
(皇都って、どうやって行けばいいんだ?)
まだ小さかった頃にしか行ったことのない皇都。行き方はおろか、行く手段すら思いつかない。
「この世界にもバイクがあったら解決すんのになあ」
前世ぶりにバイクに乗って走りたい
(馬……そうだ!)
ソファで横になっていたダリアは、勢いよく起き上がった。
(確かこの家にも、
ダリアはにんまりとほくそ笑む。
バイクがないなら、馬に乗ればいいのだ! 乗馬の経験はなかったが、彼女には前世の愛車で夜の町を走り回った
さっそく、今日の夜にでも馬の下見に行こうと計画を立てていると、
そろそろ夕食の時間だ。侍女が食事を持ってきたのだろう。
「失礼いたします」
「えっ……」
しかし部屋に入ってきたのはいつもの侍女ではなく、食事を持った
「食事担当の侍女の体調がすぐれないようで、代わりにお持ちしました」
「そ、そうですか……」
他のメイドに任せればいいのにと思いつつ、笑顔を作る。執事長とは、剣を買いに行って朝帰りして以来初めて顔を合わせる。皇都から帰ってきた父親たちにも特にダリアのことを報告している様子はなかったので、勝手に味方だと思っていた。しかし、実際のところ確認したわけではないし、執事長にどのような顔をすればいいのかわからなかった。
(いっそのこと、ぶっちゃけて
この際、白黒はっきりつけようと思い、口を開こうとしたが……。
「ダリアお嬢様は、皇室騎士団入りを目指していらっしゃるのですか」
「!!」
執事長は
「はい。執事長も私を止めますか?」
「何を仰いますか。私にも協力させてください」
執事長のあまりに意外な一言に、ダリアは一瞬思考が停止する。
「え? 協力……してくれるんですか?」
「入団試験は皇都で行われると
「そうなんです! あのクソば……お
反対されるどころか、
皇都から帰ってきた継母たちは、ダリアを虐めるタイミングを見計らっていた。しかしダリアが波風を立てないよう、部屋に
「ご安心ください。
「いいのですか!?」
ダリアは執事長の提案に食いつく。
「でも、もし手伝ってくれたことがクソば……お義母様に知られでもしたら、執事長が危険では」
「私は今まで、何ひとつダリアお嬢様のお力になれませんでした。もう
「執事長は何も悪くありません。お父様やお義母様からの圧力があったのでしょう?」
「ダリアお嬢様……痛み入ります」
決行は三日後の夜。屋敷から少し離れた場所に馬車を用意するということで話はまとまった。
「執事長。おかげで無事に皇都へ行けそうです。貴方がいなければ、私はこの家の馬を借りて、気合で行こうと考えていました」
「ダリアお嬢様は、乗馬の経験がおありで?」
「いえ、ありません。ですが馬と心を通わせればいけるかなと思ったんです」
ダリアの自信満々だけどとんちんかんな返答に、執事長は一瞬目を丸くして
「それは、少々
安堵したような表情を浮かべる執事長を見て、ダリアはどれだけ自分が無計画であったかを反省した。
「では三日後、
「ありがとうございます」
「……ダリアお嬢様」
部屋を出る前に、執事長は改まった様子でダリアに質問した。
「旦那様のことを恨んでおられますか?」
ダリアはもちろんだと
「先ほどのお言葉、一部
執事長の話は噓だろうと思った。ダリアのことを考え、大切にしようと思うなら、継母たちに虐められているのを無視するはずがない。
「
「都合のいい話だとわかっています。ですが旦那様はずっと、ダリアお嬢様のことを考えておられます」
万が一、本当だったとしたら、きっとゲームのダリアは喜ぶのだろう。
「すぐには信じられませんが……話していただきありがとうございます」
ダリアとしての記憶が
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