24 ラディアント魔宝石学園へようこそ
「シトア!」
呼びかけた私の声にシトアは振り返る。
「私のこと、受け持ってくれてありがとう! これからもっともっと頑張るね!」
シトアは私のことをじっと見つめた後、ゆっくりこっちに歩いて来た。
廊下の窓から差し込む日差しが、シトアの金色の髪を輝かせている。
「みかげ……」
「はい?」
「お前、なんか受かる気になってないか?」
「え!?」
呆れたようにジトっと見てくるその眼差しが、なんだろう。
心にグサッと刺さった。
「クォーツしか作ってないし、ハッキリ言って下から数えた方が早いかもしれない。今日は結構精鋭揃いだったぞ」
「うそ!?」
「ほんと。まぁそういう事だから、ドンマイ」
あはは。と笑ってシトアが去って行く。
随分とあっさりした別れに私は固まった。
え……勝手に戦友的な気持ちになってたのは……。
私だけ?
真昼間なのに夕暮れのようにカラスが鳴いている。
私はなんとも言えない気持ちで帰路についたのだった。
そして、試験が終わった次の土曜日。
私はお姉ちゃん達と一緒に駅前のカフェに赴いていた。
「よし、それじゃあ。試験おつかれー! カンパーイ!」
琥珀ねぇの掛け声で私たち三人はグラスを合わせる。
私はトロピカルサラマンダーオレンジジュースを一気飲みして、その勢いで立ち上がった。
「あのね。私瑠璃ねぇに言わないといけないことがあるんだ!!」
「え? なぁに?」
「この前、放っておいてなんて言っちゃってごめんなさい」
なんとなく仲直りはできていたけれど、まだきちんと謝っていなかったから。
けじめとして私は頭を下げた。
瑠璃ねぇのリアクションはどうなるだろう。
そう緊張したけど、瑠璃ねぇはいつものように優しく微笑んでくれた。
「なんだそのことね。いいのよ」
「本当……?」
「ええ、気にしてないわ」
「良かった良かったぁ〜! これで本当の仲直りだな! あたしも板挟みでけっこう辛かったんだぞ〜」
と、琥珀ねぇは笑いながら私と瑠璃ねぇと肩を組んだ。
琥珀ねぇにも二人で「ごめんね」って謝って笑い合う。
お姉ちゃんたちと一緒にいるとやっぱり楽しいな。
どんなに私が落ちこぼれでも、私のことを信じて見守ってくれた私のお姉ちゃん達。
生まれた時からずーっとそばにいる、私の宝物。
「あのね、私目標がもう一つできたんだ」
「あら、何かしら?」
瑠璃ねぇが尋ねる。
琥珀ねぇもジュースを飲みながら私に注目していた。
「私ね。私にとっての家族みたいに……誰かの大切な人が幸せに暮らせるように、魔法石を作りたい」
ドキドキしながらそう言うと、琥珀ねぇは肩で私をつついた。
「へぇ、かっこいいじゃんそれ」
「私も、すごく素敵だと思うわ」
「えへへ。ありがと」
私は照れ隠しにテーブルにあったポテトを貪った。
それにつられて琥珀ねぇもポテトに手を付ける。
「それでさ瑠璃ねぇ、実際どうなりそうなんだ? みかげは」
「え!? 琥珀ねぇ、その話題はやめよ!?」
「いいじゃん。今更結果は変わらないんだから」
「うーん、そうねぇ。詳しくは言えないけどシトアくんがだいぶ頑張ってくれたわ」
と、瑠璃ねぇはぼかして伝えた。
が、頑張った……?
私何かフォローされるような感じだったの!?
「へぇ〜。まぁ受かろうが落ちようがみかげが頑張ったのは事実だよ!」
「そうね、どうなろうと私はみかげちゃんのことを誇りに思うわ」
「え、う、うん。ありがとう……」
なんだろう。
慰められているような気がする。
やっぱり私ってダメだったの?
合格発表は一週間後だ。
琥珀ねぇの言う通り結果は変わらないから考えたって仕方がないのに、試験のことが気になって仕方がない。
私は一週間、史上最高に悶々とする日々を送った。
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