3 普通の女の子に戻ろう
お父さんは何と言うだろうか?
私は緊張して胃がぎゅっとなった。
「そうか……成績表を見ればいつかはそうなると思ってたんだ。でも、みかげが頑張れるところまでやればいいと思って見守っていたんだよ」
なぜか、急に悲しくなってきて目に涙が滲んでくる。
お父さんにそう言われて退学が現実的に思えたから?
私がどんな感情でいるか分かったのか、お父さんは優しい顔で笑った。
「大丈夫、他にも楽しい学校がいっぱいあるよ。すぐには帰れないけど、なるべく早く戻るから一緒に探そう」
その後短いやりとりをして、電話は切れた。
家の中はしんとしている。
あぁ、私こういう空気苦手だ。
……うん、大丈夫だよ。
魔法学校はロイヤル魔法学校だけじゃないんだし、元気出していこう!
「よし、まずは高校受験のことを考えなくっちゃね!」
私が明るく振る舞うと、瑠璃ねぇと琥珀ねぇは少しホッとしたような表情を見せた。
「そうだな。みかげはどんな高校に行きたいんだ?」
「私、将来は宝石師になりたいから魔宝石コースがある魔法学校に入学したいんだ」
「そっかそっか、魔法の才能だって後から伸びてくる可能性は十分あるし、良いじゃん」
琥珀ねぇは私を励ますように何度も頷いている。
担任の松田先生も言っていたけれど、宝石師になるための学校は国からスカウトされなければ入学すら叶わない。
だから高校生のうちに何としても結果を残さなきゃ。
そう考えたらやる気が出て来たけれど、瑠璃ねぇは一人だけ難しい顔をしていた。
「みかげちゃん……あのね」
そして、言いづらそうに口を開く。
あ、どうしよう。
この雰囲気は悪いことを言われる時だ。
「今の魔法学校を辞めてしまったら宝石師どころか魔法師になる事もできないわ」
予感は的中した。
嫌なくらいに。
「る、瑠璃ねぇ。なんで!?」
「魔法学校は全て初等部から高等部、その後の専門学部までエスカレーター式だから途中受験はできないのよ」
「嘘ぉ!?」
「え? そしたら大きくなってから魔法が使えるようなった人はどうするんだ?」
琥珀ねぇの言う通りだ。
だって、いつ魔法に目覚めるかは人それぞれだから。
私たち二人の視線を浴びて、瑠璃ねぇは静かに目を閉じた。
「そもそも魔法学校は、魔法を学ぶための場所じゃないの」
「どういうこと?」
瑠璃ねぇか目を開ける。
でも視線は合わなくて、その黒目がちの綺麗な瞳はじっと床を見つめていた。
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