第11話

 うーん。あ!俺、寝ちまってたのか?ここってたしか、穴の中だよな?でも、なんかの部屋っぽい。

あれ、ふとんがかかってる。げ、そういや俺ってパンツいっちょうのままだった。

えーっと、たしかおっさんとレンガの街に来て、それから、そうだ、じーさんの話を聞いてるところだったんだっけ。


「目覚めたようだな。しっかり眠れたか?」


「あっじーさん、おはよう。ってか外が暗いじゃん。ここでもやっぱ、昼とか夜とかあるんだな」


「うむ、人工太陽によって制御しておる。おぬし達の世界の太陽と、役割はそう変わらぬよ。それより、腹は空いておらんか?」


あっ、そういえば俺、ユッキーと弁当食べてから完全に飲まず食わずだった。おっさんのせいでゼリーやビスケットも食べ損なってたし。


「ところでじーさん達って何食べてるんだ?今までおっさんが何かくちにしてるの見たことねーけど」


「うむ、まあ見てもらった方が早いだろう。儂らについてきてくれ」


なんだ、おっさんもいたのか。声かけてくれればいいのに。でもあのおっさんが、俺と最初に会ったおっさんかわかんないな。

格好はびみょうに違うっぽいけど、全く同じ顔だもんな。

って、うわ!?


「さあ、食事はもう用意してある。おぬしの口に合うかはわからぬが、どうぞ召し上がれ」


すっげえ。やけに広い部屋に、おっさん達がズラリとでっかいテーブルについてる。

メシは、なんか割と地味だな。未知のやべー料理が並んでるかもってちょっとだけ思ったけど、普段食べてるのと変わんないな。

ごはんに味噌汁、ヤサイに水?かあ。別に、ヤサイは言うほど嫌いじゃねーけどさ。でもなんか、あんまり見たことないようなヤサイな気がする。


「なあ、おっさん。ヤサイいる?別に無理にとは言わないけどさ」


「コラ!!」


「わあっ!ご、ごめんじーさん。ちゃんと残さず食うよ。せっかく用意してくれたのに、悪かったよ」


「うむ、それで良い。儂も怒鳴って悪かったな。いつもここではな、彼らには適切な栄養量を補給してもらっておる。

 食事の量を勝手に変えられるとまずいのだ。それに、おぬしの分に関してもな」


「悪かったよほんとうに。てか、すげー栄養バランスきっちり考えてんだな。

 いつも母ちゃんによく怒られてたよ。あんたのこと考えてメシつくってんだから、ちゃんと残さず食えって」


「うむ、そうか。食事という行為は大切なことだ。自力で自身のエネルギーを生み出す、尊い行為なのだ。

 だが今は、そういった話はよそう。きちんとお食べ」


「わかったよ、いただきます。ちなみにこのヤサイって、実はあまり俺の体質にあってなかったりとかって、ない?」


「少なくとも、体に大きな害は起きぬはずだ。おぬし達の世界の野菜と、元は同じだからな」


「大きな、ってことはちょっとは害あるのかよ」


「それはおぬし達の世界の食べ物も同じことだ。

 それに、必要なものと害というものは表裏一体なのだ。

 さあ、我慢して食べなさい」


「わかったって。って、なんだよこれ!めっちゃうまいじゃん!」


「うむ、満足してもらえて良かったわい。よほど空腹だったのだろう。

 味に関しては、気を遣った調整はできなかったからな」


「いやすげーよ。じーさんって、実は料理の天才?

 おっさん達も、いつもこんな料理を食えるなんて最高じゃん」


じーさんは大声で笑ってる。でも、おっさん達は無表情で食べ続けてる。

うまいから、一心不乱に食ってるのかもしれないけど、ちょっとは反応してくれてもいいじゃんか。


「どうやら彼らについて、何か思うところがあるようだな。

 とりあえず、食事を済ませてから話の続きをしよう」

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