魔族と人間の橋渡しは科学です

ナギさん

第1話 さて、こいつはなんだ?

「力も魔法も・・・・・・科学なんだよ!!」


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ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ


「ん、ん・・・・・・ん・・・・・・もう朝か」


俺は体を起こして頭をかく。


「なんか、変な夢を見たな・・・・・・どこか、別の世界のような・・・・・・もしかして俺の願望か何かか?いや、んなわけねぇか」


そして、あくびをしながらベッドから降りる。


「あーあ、今日も一日憂鬱だ、ちょっと寝不足だし」


そんな事を呟きながら寝巻きを脱ぎ、ワイシャツを着てスボンを履きネクタイを締める。


「ま、研究もあと少しだ。頑張るかな」


そして俺は家を出て、バイクで研究所へ向かう。




「はあ、着いてしまった」


目をこすりながら憂鬱な気持ちでその建物に入る。


「この件が終わればしばらく休みだ・・・・・・早く終わらせてかえって寝る、絶対に寝る」


そう心に決め、扉を開け中に入っていく。

カバンの中に入っていた白衣を取り出し、袖に腕を通し、ボタンを締めて更に奥の鉄の厳重な扉の中に入っていく。


「始めるか」


俺はその言葉とともに、厳重なラボ内にあった金属にピンセットで触れる。それから数時間の時が流れて・・・・・・。


「最後の工程、ここさえ終われば帰って寝れる」


そう呟いたその瞬間


コトンッ


室内にそのような音が響き渡った瞬間、俺の意識は途絶えたのである。





佐藤叶大さとうかなた、目を覚ますのです」

「ん・・・・・・んん?・・・・・・ふあぁぁよく寝たよく寝た。頭の回転がかなり早く感じるな・・・・・・どこだここ?」

「佐藤叶大、あなたは死にました」

「・・・・・・あー、なるほど。眼の前が真っ白になった記憶があるわ」

「そ、そんなにすぐに受け入れられるものなのですか・・・・・・?」

「ま、実験中に死ぬことなんてざらにある話だ。それに、生きてても死んでもどっちでもいい。まともな人生は一ミリも送らなかったから」

「えっと、ごめんなさい」

「別に謝らなくてもいいし別にどうでもいい。そんなことよりも、ここはどこだ?今俺の状況はどうなってる?」

「どうでもいいんですね・・・・・・今あなたが居るのは神界・・・・・・」

「え?深海?」

「・・・・・・あなた、そんな冗談言うんですね。まあいいです。ここは神界という場所であり、神々が存在している場です。すべての神がここに存在し、誰何時でも手を出すことは叶いません」

「へー、それじゃあんたも神なんか」

「そうです、それなりに偉い神様なんですよ?」

「へーそうか」

「あまり興味なさげですね」

「いや、興味はある。ただ、神って存在を俺はあまり信じてこなかった。科学の世界に神は200万年お留守だったからな」

「根っからの科学者なのですね」

「ま、自分の好きなことができて楽しかったってのはあるな。仕事になってもそれなりにやってたし」

「・・・・・・その科学で死んでしまったのですよ?」

「だからさっきも言っただろ?実験中に死ぬことなんてざらにあるって。それも承知の上でやってるんだ、だから気にすることはないさ」

「・・・・・・」


そこで、神と名乗る少女はうつむく。なぜかは全くわからない。


「・・・・・・あなたはよく頑張りました。朝早くから実験室に向かい、眠たい目を凝らしながら人のために実験を続けてきました。わたしはあなたを尊敬します」

「・・・・・・俺なんかを肯定してくれてありがとうな、それだけで今までの人生が意味のあるものだったって実感できるし、報われて成仏できるってもんだわ」


誰かに認められて消えるのであればそれ以上に幸福な死に方はないだろう。今までやってきた実験が心残りだが、誰かが頑張ってくれることを願おう。

と、そんな事を考えているとき、目の前の神がこのようなことを言った。


「・・・・・・叶大さん、もう一度人生をやり直すきはありませんか?」

「・・・・・・? やり直す?」


やり直すとは?いややり直すの意味がわからないわけじゃないぞ、言っていることが理解できないだけだ。


「あなたを今まで居た世界と違う世界、いわゆる異世界に転生させるということです」

「なるほど・・・・・・でもなんで異世界なんだ? 現世に帰ることはできないのか?」

「それは叶いません。魂を元の世界に返すことは神の中の法に反すことなのです」

「神様にも法ってあるんだ、以外だな」

「どのような場所でさえ、法がないと無法地帯になりかねませんから」

「まあそりゃそうだ」

「それで、どうなさいますか? 異世界に転生いたしますか?」

「・・・・・・」


現世じゃ俺は、ただの社畜だった。朝起きて飯食って働く、ただの社会人。嬉しいことに自分の好きなことが職業になったがそうだとしてもかなりハードな人生を過ごしてきたと思っている。だからこの際、別の世界に行くのもありなのではと思う。


そんな事を数十秒考えて俺は結論を出す。


「この際、その選択もありかもしれない」

「では、異世界に転生するということでいいのですね?」

「ああ、よろしく頼む」

「それでは、あなたが異世界に転生するに当たってなにか要望はありますか?」

「要望って?」

「例えば『世界一の知恵が欲しい』や『異世界で無双したい』などですね」


なるほど。つまり異世界に行くときに、なにか能力をもらうことや、どのような生活が送りたいという願望をこの時点で叶えてくれるってことか。


「それなら、向こうで生活するに当たってなんの不自由もないくらいの肉体が欲しいかな。行って死んでも意味ないと思ってるし」

「わかりました。その要望を適用いたします」

「おう、サンキュー」

「それでは転生いたします」

「ああ、またな」


そうして俺の意識は遠のいていく。遠のいていく意識の中で、このような言葉を聞いた。


「大切な何かと、巡り会えますように」


と。

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