第15話 勘違いです。

夏休み。中学の頃から夏休み最終日まで宿題などの提出物に全く手をつけない男なのだが、今年は何故か1日目にして


「終わってしまった…」


夏休み直前に由ちゃんと転校生こと野々鳴海、野々くんが放課後一緒に居るところを見てしまってから内心穏やかではなかった。そのモヤモヤを払いのける為何かに集中した結果がこれである。


「眠れてないし…」


そう、1日で終わらせたのである。その為、彼は眠っていない。時刻は10時を回っている。脳の整理ができずに居た彼は昨日に取り残されている。


「散歩行こ…」


そして、今日はバイトもない。眠ろうにも昨日の事が脳をよぎり眠れない。スッキリさせようと気分転換に家を出た。


出たのはいいのだが…


「あ…あづい…」(訳:暑い)


近所の家のテレビから今日の最高気温を通りかがりに聞いてしまいさらに憂鬱になる。


(今よりも暑くなるって事だよな…コンビニでアイスでも買って早めに帰って寝よう…)


足を早めコンビニに向かうと3人の女性に囲まれている野々くんを見かける。


(朝からあまり会いたくない人に出会ってしまった…気づかないふりしてコンビニに…)


そう思っていた。だけど、気づいてしまった。俺は彼に近づき手を取る。


「野々くんこんなとこ居た!待ち合わせ場所に居なかったから気づくの遅れた!ごめんねお姉さん達、では失礼」


「えっ、あ、ごめん!失礼します!」


野々くんは俺の考えを理解して合わせてくれたようだ。コンビニまで歩き手を離す。


「ごめん。困ってたみたいだから迷惑じゃなかった?」


「迷惑なんてとんでもない!むしろ感謝してます!ありがとう!」


どうやら杞憂ではなかったようだ。取り囲まれている野々くんは少し気分が悪そうだった。いや、あの表情は…


コンビニでアイスと水を買い野々くんに手渡す。


「ありがとう」


「もしかしてだけど女の人苦手?」


「えっと、うん。昔嫌な事があってそれから…話したり近づかれるのが怖くなっちゃって…」


思った通りだった。


「気づいてくれたの藤咲さんと槙野くんだけだ…」


由ちゃんの名前が出て少し身構える。けど、話を聞いていてそれは醜い嫉妬だと認識した。


「ごめん、俺なんも気づいてあげれなかった」


「え!?いやいや、こうやって話しかけてくれて嬉しかったよ!俺は女の人苦手で同学年の男子達ともそれの関係で仲良くできなかったから今こうやって話せて凄く嬉しいんだ」


なんだ、この子すごくいい子じゃん。それに比べて醜い嫉妬を剥き出しにしてた俺は…


「そっか。なら昔の嫌な事忘れるくらいこれからいい事があるよ〜」


「?」


「康ちゃんが休みの日一緒に遊びに行く約束してるんだけど一緒にいかない?」


「ぜひ!!」


新しく友達になった彼は、出会った時の印象はなく笑顔が似合う青年だった。

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