第3話 サボりは禁止です。

「ねー?何その不適な笑い…?」


「いんや〜、べ〜つに〜?」ニヨニヨ


とまあ、康ちゃんは昨日からこの調子である。俺と由ちゃんを見てはこのふざけた顔で…


昨日何があったんだ?


昨日は康ちゃんが来るまでそのまま眠っていたらしく叩き起こされた。それからの康ちゃんのふざけた顔芸が始まってしまった。となれば、俺が眠っていた間に何かがあった事が何となく分かる。でも由ちゃんと俺を交互に見る訳が分からない…は!?もしかしたら寝言で俺は何か言ってしまったのではないか?それなら由ちゃんと俺を交互に見るという事にも納得してしまう。ならその内容は由ちゃんに纏わる何か(・・)という訳だが…やばい、思い出せない。


「康ちゃ〜んって居ないし…」


後ろを振り返るがそこには康ちゃんの姿はもうなくなっていた。そして辺りを見まわし俺は気づく。


「あ、移動教室か…」


立ちあがろうとするも俺のお尻は椅子を離さない。いや、椅子が俺のお尻を離してくれないのかもしれない。


「もうサボろうかな〜」


俺のモットーは無気力だから授業をサボるという行いに思う事は無い。このまま眠ってしまいたい。そう思い机に突っ伏し寝る体制をとると頭上から声が投げられる。


「ダメに決まってるでしょ!」


「わぁ、なんだ。由ちゃんか…先生かと思ってびっくりした」


「こら!早く準備して行くわよ。授業に遅れちゃう」


再び寝ようと体を沈めるが由ちゃんの声で現実へと呼び戻される。


「仁太」


「…!?」


「ほら、早く行くわよ」


そう言い俺の手を引く彼女。その彼女の手は成長した俺の手よりも小さくずっと壊れやすそうであった。

そして、俺の心を強く打ち付けるように前を見て、顔の見えない彼女の耳はタコのように赤くなっていた。


(お、俺のモットーが…崩されていく…)


教室を出ていく由花と仁太を見送る一つの影。


「いや〜いい仕事したぜ…」


(仁太は奥手で、由花ちゃんは恥ずかしがり屋っぽいからな。俺が2人の仲を取り持ってやらないとな!)


そう心に決め行動した。いつも一緒である俺は先に教室を出て行きその様子を見る。てな感じでやってみたけどまさかこんなに効果的だとは思わなかったぜ。


キーン、コーン、カーン、コーン…


「やば!俺が遅れる!」

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