第25話 ある日の手紙
コリーヌ様
お言葉に甘えて、ご挨拶ぬきのお手紙を送らせていただきます。
私の庭ですが、先日、変わったことがおこりました。
なんと、違う種類の種から育った花が同時に咲き、同時に消えていったのです。
邪気をとった相手も違い、種を植えた時期も違うのに、花が一斉に咲いて、一斉に消えるというのは初めてです。
とても、驚いてしまいました。
どうやら、一つの強い種の影響で、他の種から育っていた植物もつられて咲いて、そして消えていったのではと考えています。
その種は、父が仕事で隣国に行っていた時、つけて帰ってきた邪気から生まれた種です。
その種は、手に持つと、びりびりと痛くて、種に生まれ変わったことに、抗っているような印象を受けました。こんな種は初めてでした。
私がその種を触るたびに、痛いと言うものだから、アルは、心配のあまり「すぐに、捨てろ!」と叫んでいました。
が、もちろん、こんな珍しい種を捨てられるはずがありません。
(まあ、どんな種であっても捨てられないのですが……)
私は、色々な素材の手袋をして、その種をさわってみました。
不思議なことに、手袋の素材や厚さや固さに関係なく、びりびりする感覚は同じ強さで伝わってきます。
私は思いました。この種は、いまだ、邪気のようなものを発しているのかもしれないと。まあ、邪気といっても、触ると痛いくらいで、弱いものですが。
そこで、以前、コリーヌ様から贈っていただいた手袋も試してみました。
隣国にしかいない珍しい動物マーラが、春になる時に落とす貴重な冬毛を収穫して手袋にしたとお聞きしたあの手袋です。
驚くほど暖かいので、真冬に愛用させていただいています。
私は、ふと、同じ隣国なら、何かつながりがあるかもしれないと思ったのです。
マーラの手袋をしてさわってみたところ、種がびりびりするのをやめて、光りはじめました。
理由はさっぱりわかりません。
そして、その種を植えた時も、庭の地面が光りました。
その種は、どんどん成長し、何故か、まわりの植物も、その種の成長速度にあわせるようになっていったのです。
早く育っていた植物は、育つスピードが遅くなり、まるで、その種の成長を待っているかのように。
そして、その種より後で植えた花は、猛スピードで育ち、その種の成長に追いつくかのように。
どう考えても偶然とは思えない状況でした。
このように、摩訶不思議な出来事が起きることも、邪気から生まれ変わった花の種のおもしろいところです。
先日の花はとても珍しかったので、スケッチしました。アルにスケッチブックを託しておきます。
絵は上手ではありませんが、どんな花がどんなふうに咲いたのか、少しでもお伝えできれば嬉しいです。
では、またお会いできる日を楽しみにしております。
ライラ・シャンドリア
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