第6話 違いますよ

「うわあ、素敵!」


通されたお部屋には、あふれんばかりのお花がセンス良く飾られていた。

このあたりでは見たことがないお花がいっぱいある!


普段、不気味な花を育てている私だけど、もちろん、きれいなお花も大好きだ。

お花全般が大好きで、そばにあるだけで元気がもらえる。


喜ぶ私を見て、コリーヌ様が優しく微笑んだ。


「アルからね、ライラちゃんがお花が好きだって聞いていたから、珍しいお花を取り寄せてみたの」


アルを見ると、照れたように目をそらした。


「ありがとうございます、コリーヌ様! ありがとう、アル!」


満面の笑みで言うと、アルは目をそらした。

コリーヌ様は、そんな私たちを見て、フフッと笑いながら言った。


「ライラちゃん。帰りに花束にするから、好きなお花を好きなだけ持って帰ってね」


えっ!? このきれいなお花を好きなだけ⁉ 嬉しすぎる! 

私は全身で喜びながら、お礼を言った。


更に、テーブルには、これまた、見たことのないような素敵なお菓子が並び、最初は遠慮していた私も、気がついたら、もりもりと食べていた。


「すごい食べっぷりだな。令嬢がこんなに食べるのを初めて見た」

あきれたように言うアル。


え? そんなにかな?!


思わず、恥ずかしくなった私。

食べるのをやめると、コリーヌ様が優しく声をかけてくれた。


「ライラちゃんが美味しそうに食べてくれるから、見ているだけで楽しい気持ちになるわ。だからかしらね? 私は頭痛がずっと治らなくて、ここに療養に来ているのだけれど、さっきから急に楽になったの。不思議ね…」


あ、もしかして、さっき、少し黒い煙をとったからかな? 

それなら、良かった!


と、思ったら、アルが私の方を意味ありげに見た。


「ライラ。ちょっとこい」


そう言うなり、私を席から立たせて、部屋の隅の方へ連れて行く。


「あらあら、アルったら。ヤキモチかしら」

コリーヌ様の声に、微笑むメイドさんたち。


いやいや、全然違いますけどね……。


まわりに人がいないところまでくると、アルが聞いてきた。 


「ライラ。もしかして、能力を使ったのか?」


私はうなずいた。


「頭のあたりに、黒い煙があるよ。さっき、コリーヌ様の後ろを歩きながら、ほんの少しだけ吸い取った。でも、まだいっぱい残ってる。それも、かなり濃いから、コリーヌ様に私の能力を話して、しっかり取らせてもらいたいって思うんだけど。どうかな?」


「ライラはいいのか? ライラの秘密を俺の母に話しても。側妃だぞ。王族だぞ。利用されるかもしれないだろ?」


「それを言うなら、アルだって王子様じゃない? でも、コリーヌ様ならいいよ。だって、アルのお母様だもん。信用してる」

私がそう言うと、アルが嬉しそうに微笑んだ。


「ライラ、本当にありがとう」

アルが見たこともない優しい顔で、私の頭をなでた。


その瞬間、キャッ! と、声があがる。


見ると、離れたところから、みんなの視線が私たちに集中していた。

どうやら、メイドさんたちが声をあげたようだ。


うん、なんだろうね? 不思議と申し訳ない気持ちがわいてくる。

皆さんの想像する状況とは全く違うから。

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