第19話 新入社員なんて聞いてない!

 新しい朝がきた。昨日のゴタゴタがありつつも二号ちゃんの追跡をなんとか振り切りなんとか家に帰って即就寝したため、久しぶりの朝シャンタイムだ。

昨日は結局黒夢ロボも二号ちゃんのメロメロを穏便に解く方法は見出せなかったため、今日からは細心の注意を払って業務に勤しもう。

 

 朝ごはんをゼリー飲料で済ませ、歩いて会社に向かう。朝の町を歩いててふと思ったことがある。最近は俺のことを人間だからって二度見する鬼や仏も少なくなった気がするのだが二度見されるのは個人的な気持ち的にはあまり良くないので、まぁいいことだと捉えておこう。


いつも通りボロいビルの階段を駆け上がり、事務所のドアを開ける。


「おはようござい…あ」


 俺がこの場で最も目が合っちゃいけない人物というか、ロボが花園さんの隣にいた。


「神無さん、おはよう…」


「神無さーん!!!ウチ今日からここの社員になります!改めてよろしくお願いします〜!」


「ちょっと…!?」


二号ちゃんは職場にも関わらず全速力で俺の胸に飛び込んでくる。

誰にでも優しい花園さんも今日ばかりは厳しくしないとこのままでは俺は地獄行きの電車の特等席に乗せられてしまう。


「神無さんさっき二号さんが言った通り、彼女は部長の命令で今日いきなり新入社員として扱うようになったらしいです。そこで一つ相談なんですけど…教育係は神無さんに任せてもいいですか…?」


「え?俺が教育係にって…でも俺そんなに運転スキルがずば抜けて高いわけでも、長くここに勤めているわけでもないですよ…!?」


「そうなんだけど…この様子だとね…」


視線を移すと二号ちゃんは懐いた猫のように俺の胸に頭を擦りつける。このままでは完全にマーキングされてしまうが、この場合俺が距離を取るとよりこのメロメロ状態が酷くなる可能性がある。


歴戦の新入社員対応社員の花園さんもこのタイプは初めてだったようで、すっかり困り果てている。


「はぁ…このままたらい回しになってもしょうがないです、俺が二号ちゃんの教育係引き受けますよ」


二号ちゃんの目がさらに輝きを増す。


「ただ、二号ちゃん俺と新人研修を受けるにあたって何個か条件がある。」


「はい!ウチ神無さんに言われたことなら絶対守ります!」


そんなことを言いながらこのロボットはこの前観覧車で女性関係NGな俺にキスをかましたのだ。俺は続ける。


「そうか、その心がけはいいことだな…じゃあ、仕事中は俺が良いと言った時以外絶対触るな」


「うぐっ…」


「その二、ストーカーはマジでやめろ、いざとなったら黒夢部長に全部言いつけるからな。二号ちゃんが外出禁止になれば黒夢部長も会社に来るようになるだろうし」


「うぎゃっ…」


「まぁ今のところそんな感じだ、またなんか問題を起こしたらこれからも条件は増えるからな」


「…はい」


 あれ、思ったより素直に聞いてくれた。黒夢部長が職場に導入するにあたってなんか色々プログラムし直したのか?

まぁ肝心の黒夢部長は今日もデスクにはいないのだけども。


————「今日から冥界運行、に入った、えっと…二号さんです。自己紹介をしてください」


二号ちゃんの初の自己紹介のターンが来た。気づけばもう聞いている側になっていた。そういえば口帰課長は二号ちゃんとは初対面か、てか黒夢部長は二号ちゃんに偽名とか少しはつけてやれよ


「皆さん初めまして!二号です!種族はこう見えてロボットです、乗客の皆様の一日を支えられるよう元気に頑張ります!」


「二号さんはじゃあ、安楽の隣の机に…」


 うわ、安楽さんの横だとわかった瞬間露骨に嫌そうな顔した。

流石になんも関係ない安楽さんには迷惑かけないでくれよ…


 そんなこんなで冥界運行に新入社員のお騒がせロボットが入社した。

明日からは座学…本当にほぼ新入社員の俺が教えていいのか…!?

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地獄のラブコメなんて聞いてない! みけめがね @mikemegane

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