第43話何か欲しいものはありますか?
「エレノア、今日は流石に寒いと思うのでアゼンタイン侯爵邸の中で話をしませんか?雨も降って来そうですよ。」
私はベット押し倒し事件があってから、彼を侯爵邸の中に入れていない。
どうしてそんなことになったのか、レイモンドに私は自分で気がついて欲しいと思っていた。
「屋内に移動するならば、約束通り婚約を解消してください。毎日のように私とガーデンテラスで会話する必要もないと思います。王宮に戻り今後の対策を考えたらどうですか?周辺諸国が全て帝国領になったのですよ。今、まさにサム国は陸の孤島状態です。サム国の新聞の論調も変わって来ましたよ。帝国領になった国がどんどん豊かにになっているからです。」
今日は雨が降りそうどころか、風も強くて吹き飛ばされてしまいそうだ。
「エレノア、大丈夫ですか?あなたは小柄だから飛ばされてしまいそうです。もうすぐ14歳の誕生日ですね。何か欲しいものはありますか?」
レイモンドが私を膝の上にのせて、後ろから抱きしめてくる。
これで暖かいでしょとでも言いたげだ、私がどうして屋外にこだわっているのかまるで分かっていない。
侯爵邸に入って彼が部屋に移動したいと言ったら、使用人も侯爵夫人も彼に従うしかない。
そうすると私は彼と部屋で2人きりになってしまう、それが怖いのだ。
私が気絶していた2日間さえ、レイモンドはあの部屋にずっといたらしい。
眠るための部屋なのに、食事までベットサイドで私を眺めながらしていたというのだから驚きだ。
どうりで起きた時、食べ物の匂いがすると思った。
どうして王族であるのに、部屋の用途を守るという最低限のマナーを守れないのだろう。
2日後に私があの部屋から出て来た時、アゼンタイン侯爵夫人が非常に心配していた。
手が早くて有名な危険な王太子殿下と、私を2日間も密室で過ごさせてしまった罪の意識に苛まれていた。
泣きそうな顔で、アゼンタイン侯爵に私とレイモンドの婚約破棄をするよう訴えていた。
そんなアゼンタイン侯爵家の波乱の日があったことなんて教えたところで彼は何とも思わないのだろう。
「私の誕生日など、どうでも良いことです。もうすぐ、帝国の要職試験があります。世界中で受験資格がないのは帝国領になっていないサム国の民だけです。フィリップ王子なら、きっと帝国の要職試験を受けられるようにサム国を帝国に明け渡すと思います。このチャンスを逃すと次のチャンスは4年後になります。今回の帝国の要職試験の後、一気に王家への不満が高まると思います。王家としての体裁を保ちたいにしても、フィリップ王子を王太子にして国民にアピールするしかないです。レイモンドは貞淑を重んじるサム国の国民としては、どんなに仕事ができても尊敬に値する存在にはなれないのです。今更、女断ちしても過去にしてきたことは変えられません。」
国民人気の高いフィリップ王子が次期国王になるならば、王家としての人気は回復できる。
しかし、皮肉なことに彼ならば国民のことを考えて帝国にサム国を明け渡すだろう。
今の国王陛下は不慮の事故により兄と婚約者を亡くしている。
同情されるべき立場なのに、その後兄の婚約者だった女性と結婚しただけで憶測で噂がたち評判が悪い。
冷静に考えれば、兄の婚約者である王妃様は国王になる彼の兄の婚約者だっただけあり王妃教育を受けていた。
兄ではなく自分が国王になった時、王妃になる予定だった彼女と結婚するのは当たり前だ。
それよりも結婚前から兄の婚約者と繋がっていたと疑い評判が落ちるのがサム国なのだ。
それ程に強い貞操観念を持つ国で王太子という立場を持ちながら女遊び無双をして来たレイモンドは国民には受け入れ難い存在だろう。
本当は彼はサム国の領主ではなく、帝国の要職についてしまうのがベストだと思う。
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