勉強

あれから数週間が経ち、アルスの体調も完全に回復していた。

父サノスは王都に普段は法務大臣として滞在をしており、時折領地に戻ってくる。アルスが目覚めた数日後に急いで王都へと戻っていった。アルスの為に強制的に戻っており、かなりの仕事が溜まっていたらしい。

今朝は母のルナと朝食を取った後、セシルの指導による勉強だ。指導は一週間前から始まっていた。

この世界では、5歳のうちから読み書き、計算そして貴族の作法や言葉遣いなど同時並行で行わなければならないそうだ。かなり内容はハードである。そして10歳から学ぶ範囲は中学校レベルである。

アルスにとってこの世界に来て先ず助かったことがひとつある。それは文字である。創造神ザインのおかげで前世の日本の文字と全く一緒である。そのためら高校生程の頭脳であるアルスにとって、難なくこなすことが出来た。


「アルス様、この歳にしてここまでこなされるとは、奇才ですな。サーナス侯爵家も安泰でございます。ハッハッハッハ」


セシルは誇らしそうに笑っている。

なぜなら、王立学園に入学するために勉強すべき内容をすでマスターしたからである。

王立学園とは、マリアナ王国の国営の学校であり、18歳になったマリアナ王国の子供たちは受験資格を得る。貴族と庶民による身分差別はなく、完全実力主義である。難易度はマリアナ王国で1番高く、貴族にとってのベースラインとなっている。


「セシルの教え方が上手だからすぐ理解出来たよ!」


アルスは笑顔でセシルに応えてみせた。

中学校程度の勉強であり、簡単すぎる!なんて言えなかった。


さて、かなり暇になってしまった。本来数年かけて勉強する内容の殆どを1週間で終えてしまっている。アルスはこの世界のことを知りたくてセシルに教えるように催促した。


「セシル、もう入学に向けての勉強が終わったのならこの国の歴史や地理について教えてよ!」


「ほお、マリアナ王国の歴史、地理でございますか。良いでしょう。」


「ほんとに!やったー!!」


アルスは前世の知識はあっても、この世界の歴史や地理は一切分からなかった。

知らないことを勉強することから、アルスはとてもワクワクしていた。


______________________________


マリアナ王国の歴史、地理はとても興味深いものであった。

その為かアルスは必要以上に勉強をした。

そして、一通りの事は分かってきた。


まず、このマリアナ王国には騎士爵から公爵そして名誉貴族を含めて80家の家があることがわかった。内訳では、騎士爵家が26家、男爵家が18家、子爵家が12家、伯爵家が8家、侯爵家が5家、公爵家が2家、そして1代限りの名誉貴族が9家である。名誉貴族は一律名誉子爵であり、正式な子爵家と同格とされている。

この内、騎士爵家、名誉貴族は領地を持つことが出来ず、領地を持つ貴族の領地で代官を務めるか、王都で官僚になるか、他国と繋がる街道の関所の代官になる事が多い。


男爵家、子爵家、伯爵家、侯爵家、公爵家となると多くが領地を持ち、持たぬものは王都で中位官僚を務め、法衣貴族と呼ばれている。

また、伯爵家や侯爵家ともなると高級官僚つまり大臣を務めることが出来る。そして最後に公爵家である。公爵家は王室と繋がりが深い家に与えられる爵位である。現在大公家が存在しないため、王族を除く権力者としては公爵家が1番となっている。


そして人口だ。マリアナ王国の人口は全体で約800万人。この世界ではかなり多い方だという。この内、王都サルサには約105万人が住んでおり、人口規模は国内1位となっている。


そして、サーナス侯爵領についてだ。

サーナス侯爵領はマリアナ王国王都であるサルサよりコノマスとセムスの2つの領を経た先にある。西には山地、北と東には平野、そして南は海に面した領地である。領都スパムの人口は約32万人で領全体では約60万人を擁し、マリアナ王国3番目の規模を誇っている。基幹産業は農業と漁業と鉄鋼業である。領都は中央に位置し、北と東で農業、南で漁業、山地のある西で鉄鋼業とバランスの良い経済都市となっている。


アルスは、この他の領地のことやこの国の気候、更には他国のことまでかなり多くのことを学んだ。

そして、アルスが全てを学び覚えきるまでおよそ3ヶ月の月日を要した。


しかし、この勉強が今後とても役に立つとは、この時アルスは思いもしなかった。

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