新たな世界

温かみを感じる。

目を開けると天井が見える。白塗りの天井にシャンデリア。目を横に向ける窓からは日差しが差し込んでいた。温かみの正体はこれだった。

辺りを見回すと部屋は豪華な造りで、窓から外を見ると広く手入れされた庭園が広がっている。翔太はこの光景に驚いた。


「ここは一体どこ!?」

思わず大声で叫んでしまった。かなり響いただろう。


すると、重厚な扉の向こうからドタドタと足音が聞こえてくる。どうやら慌ただしく走ってきているようだ。足音はこの部屋の扉の前で止まり、ノックをし、その人物は部屋に入ってきた。


「アルス!目が覚めたのですね!!」


慌てた様子で部屋に入ってきたのは、黒髪ロングでドレスを着た美女だ。


「アルス!わかる?あなたの母よ!?」


部屋に入ってきていきなり抱きついてきた。

どうやらこの人は僕の母親で、僕の名前はアルスというらしい。


「母様、わかります。わかりますから離してください。くるぅしぃ...」


アルスはあまりの苦しさに耐え切れそうになかった。すると、部屋に丸眼鏡をかけた執事の男性が入ってきた。歳は60くらいだろうか。


「奥様、アルス様が苦しそうですので、抱擁はそのくらいしましょう。まだ体力も万全ではないでしょうし。」


「そ、そうね。アルス、体調は大丈夫ですか?」


執事のアシストでアルスは解放された。


「はい、母様。大丈夫です。ところで僕に何か起きたのでしょうか?」


なぜ自分が心配されているのか知らないアルスは尋ねた。


「アルス様は、10歳の誕生日のパーティーのあと突然高熱を出して倒れられたのです。3日も目を覚まされず、私どもも慌てていたところでございます。ですが、無事目を覚まされ、とても安心しております。」


答えたのは執事であった。どうやらとても心配をかけてしまったようだ。母様は目に涙を滲ませている。


「母様、心配を掛けてしまい申し訳ありません。もう大丈夫ですので、安心してください。」


そう言うと、母様の涙腺が崩壊し、号泣しまた抱擁されてしまった。解放されたのは1時間後のことであった。


______________________________


母様に解放されたあとアルスは執事の男性に色々と質問をした。

まず、僕の名前はアルス・フォン・サーナス。

サーナス侯爵家の長男である。

ちなみに僕の住む国はマリアナ王国。国王を元首とする貴族制のある国だ。この世界の多くの国に貴族制はあるらしい。

父様はサノス・フォン・サーナス。サーナス侯爵家現当主であり、マリアナ王国の法務大臣を務めている。歳は32歳で黒髪でとてもイケメンだ。実は、母様の2度目の抱擁の最中に顔を出してくれて、母様から解放させてくれた。

母様はルナ・フォン・サーナス。30歳の美女だ。ちなみに、父様は母様が美人過ぎるからか、側室を設けていない。ほんと美人です。


そして、今僕に色々と教えてくれている執事がセシルさん。第1執事で家令を務めてくれている。基本は父様専属だが、これからは僕の勉強指導を担当してくれるらしい。

そして、今住んでいるサーナス領のこの屋敷には、他にも執事3名、メイド15名、料理人5名、庭師2名、馬丁2名が勤めている。屋敷の敷地内には専用の寮まで整備されている。この他にも王都の別邸に10名程度の使用人がいるようだ。


「セシル、色々と教えてくれてありがとう。」


そう感謝すると、


「いえいえ、アルス様。アルス様はとても覚えが良く聡明であると感じました。これからの勉強指導がとても楽しみですなぁ。早速明日から始めますので、よろしくお願い致します。それでは仕事がありますので下がらせていただきます。」


セシルはそういい笑顔で部屋から出ていった。明日からの勉強楽しみだなと思い、少し部屋を散策することにした。アルスの部屋は部屋と言ってもとてつもなく広い。さすが侯爵家の屋敷だと実感した。


すると、目の前に鏡を見つけた。

そう言えば転生してから見てなかったなと思い、自分の姿を鏡に映した。


そして一言、


「めちゃくちゃ整った顔やん。」


思わず、自分に見とれてしまうのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る