第2話 20時30分

 10月31日 23時30分


「何なんだよ…」

 俺は3人がけのソファに座り込み弱々しく呟く。

 部屋の窓から見える景色は真っ暗で。

 風の音と強い雨音が外の凄惨さを物語っていた。


 今、この部屋には俺しかいない。

 いや…正確に言えば、建物の中には俺しかいない。

 俺以外にもいたのだが、全員いなくなってしまった。


 それもたった8時間足らずのあいだにだ。


 4人の人間が…死んで…いや、殺されてしまった。

 ナニモノかの手によって。


「どうなってんだよ…おかしいだろ…警察早く来いよぉ…うっ、うぅ」

 俺は両手で顔を覆うと、弱々しい声で呟いた。


 俺はいま、山奥のペンションにいる。


 警察や消防に電話したが、ペンションまでの山道が土砂崩れを起こしてしまい、すぐに来られる状態ではないそうだ。

 この雨では救助ヘリも飛ばせないとのことだった。


「どこか鍵のかかる部屋でじっとしていてください。明日の朝すぐに救助に向かいます」

 怖くなって警察と消防に何度も電話をした。

 けれど、彼らは同じ言葉を繰り返すのみで、面倒くさそうに電話を切るのだった。


「まさか…イタズラだと思われてないよな…、くそぉ…このままじゃ俺まで…、なんなんだよ…、なんなんだよ…!」


 警察のいうとおり、応接室の鍵は閉めたし、このペンションのマスターキーは俺が持っているから外から開けられることは絶対にないだろう。

 万が一ドアが蹴破られないよう、ドア周辺を家具で補強もした。

 これでなんとか朝までやり過ごすしかないのだ。


 4人を殺した、ナニモノか、から。


 ガチャガチャ!!


「………!?」

 その時、突然ドアノブを激しく回す音が室内に響く。


「嘘だろ…!?殺人鬼が殺しに来た…!?」


「ねえ…、開けてよぉ」

「あ、あぁ…、」


 俺はその声を聞いて、扉を………。

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