エンディング

 ――数カ月後。

 俺の自宅はすっかり異世界の出先機関、事務所と化していた。

 もはや、元自宅と言ってもいいだろう。


 俺はNRを外したあと、しばらくして感覚を取り戻す。

 なんかまた書類の壁が増えてるなぁ。


 おっといけない。異世界で起きたことをマイさんに報告しないと。


 この報告はいつもの日課だ。

 だが、俺が戻るとマイさんはいつもタブレットで遊んでいる。

 というか、この姿しか見たことがない。


 この人、なんでクビにならんのやろか。


「――っていう事があったんですよ」


「それで、また何もかも、こっちに丸投げするわけじゃな」


「毎度大変お世話になりまして……」


「ま、ええわ。おかげでうざったいマスクを付けなくて良くなったわけじゃし」


 数ヶ月前、俺たちはグラングリモアと対話して、ある約束を結んだ。

 それは俺たちが異世界に科学技術を渡し、そのかわりに創造魔法を受け取る。

 そういった約束だ。


 しかし、表向きは誰もこのことを知らない。

 ただ少し世界がちょっとづつマシになっているだけだ。


 なぜか悪性インフルエンザにかかる人が減った。

 なぜか世界中の砂漠化が解決しだしている

 なぜか国際的な紛争の解決が進み始めている。


 というのも……


『仕事のふりかたが毎回雑すぎる。もう少し真面目にだな……』


 グラン・グリモアが世界を行来するたびに「お土産」を持ってきているからだ。


「俺が下手に考えるよりも、専門家に考えてもらったほうがいいですし」


「といってものぉ……おや、例の公判が始まるぞ」


「あれま。結局裁判になっちゃったんですか」


「未成年とはいえ、強盗して回ったわけじゃからのう。罰はまぬがれんて」


「エイドスもなー……分かってれば……やらないとはいえねぇな」


『暴君だったからな』


 異世界の存在はすでにエネルケイアを通して世界にバレてしまった。

 なので、もはや公然と存在が認められている。


 外交関係も樹立された。

 結果、エイドスのやったことはバッチリ犯罪になってしまった。


 マイさんがタブレットに映った画面をこちらに見せる。

 映像にあるエイドスの姿は、ゲームの中と似ても似つかない。

 いかにもこじんまりとした様子の少年だ。


「子供っぽいなぁと思ったら、本当の子供だったなんてなぁ」


「ま、そのうち学んでいくじゃろ」


「だといいんですけどね」


『それで、次の問題なんだが……まだあってな』


「ええー? 今度はなんです?」


『あぁ、話せば長いんだが――』


「他に行けるものもおらんしなぁ。ちゃんと聞いといてやってくれ」


「マイさん、話が長くなるからって逃げようとしてますね?!」


「そそ、そんなワケないじゃろ!」


「逃さん!」


『ふぅ……まったく騒がしいな』


 俺たちの世界はゲームを通して異世界とつながった。


 最初は大騒ぎになったが、今はすっかり落ち着いた。

 このままいく月、幾年と時が過ぎゆくだけだろう。


 なにせ2つの世界はお互いになにもできない。


 何にも持ってくることができないし、何も持っていくことができないのだ。

 だから、ただ時間が過ぎゆくよりほかはない。


 ただ、僕たちの世界は孤独じゃなくなった。

 それだけだ。


 これからどうなるのか、それはわからない。

 ただそれは以前と変わらないことだ。


 世界は続く。

 僕が求めようと求めまいと、そんな事はお構いなしに。





※作者コメント※

最後までお読みいただきありがとうございます!

スケジュールの関係でここで一旦終了となります。

反省会は近況ノートに書こうと思います。

ではでは! ここまで本当にありがとうございました!

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【クロス・ワールド】~MMOが異世界につながったらどうなるのっと…~ ねくろん@カクヨム @nechron_kkym

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