想像・無人島

古 散太

想像・無人島

想像してみてください

あなたは無人島にいます

周囲は海に囲まれていて

水平線まで海しか見えません

そしてあなたはひとりきりです

もっとも古い記憶をたどっても

あなたはずっとひとりきりです


気候は緩やかな四季があります

野生の果実や野菜など

一年をとおして食べものには困りません

枯れることのない湧き水があり飲み水もあります

住居は洞窟ですが

雨の降りこまない天窓のような穴から光も射しこみ

基本的に快適です


あなたひとりなので

お金を稼ぐための仕事はありません

そもそも貨幣制度がありません

連絡をとる相手もいないので通信手段もありません

カレンダーや時計も生みだせないので

時間に追われることもありません

衣服は見つけていますが

ケガをしないための質素なものです

移動手段は徒歩のみです

あなたの頭で考えて

原始的だけどすこしだけ便利な道具を作ることができます

死ぬときは年齢に関係なくひっそりと死にます


社会がなくても人は生きることになります

なぜなら「生きる」ということが大前提だからです

まずあなたが生きている

その上で

社会があり 仕事があり 貨幣制度があり

利便性があり 世間体があり しがらみがあり

病気があり 事故があり 問題があり 死があります


無人島でひとり

あなたはどうやって生きていくでしょうか

そして今

あなたの人生の重心はどこにあるのでしょうか

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

想像・無人島 古 散太 @santafull

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ