第18話 ダイダロスの過去と魔王の影響
ダイダロス・カルドア・ディナライン
ディナライン国王の第二子として生を受けた
ダイダロスには歳の離れた姉ニルヴァーナが居た
産まれてまもなく母を亡くし姉が母親代わりのような役目も担っていた
ダイダロスが重度のシスコンになるのは必然であった
物心ついた頃には姉の側には隣の国の若き王であるリンスロットがいた
僅か10歳で国王になり王としての教えを乞うためにディナラインの王の元に通っていた彼を始めは妬ましく思っていた
父と共に戦場に赴き王としての振る舞いを仕込まれ姉にも慕われているリンスロットに憎しみを抱いていた
しかし話をして一緒に行動するようになると大好きな姉がリンスロットを慕う意味がわかるようになっていった
そしていつしかリンスロットが姉の夫になってくれれば良いと思い始めた
その願いは程なく叶う事になる
ダイダロスは幼い頃こそ姉と結婚したいと思っていたがリンスロットが相手なら許せると思うようになっていたのだ
リンスロットと姉の結婚式に出席した頃にはただ姉の幸せを願うようになっていた
そしてここで歪んだ愛情が顔を出した
姉の娘と結婚するのならば良いのでは…と思い始めるようになる
彼は思い違いをしていた
従姉妹ならそれは大丈夫なのだが叔父と姪は結婚出来ない事を知らなかったのだ
程なくして姉が妊娠した
ダイダロスは姉のお腹をさすりながらこう言うのだった
「女の子だったら大きくなったら僕のお嫁さんになるんだよ…」と
それを聞いた姉ニルヴァーナとリンスロットは驚きを隠せなかった
ただそれは冗談だと思っていた
リンダリアが産まれるまでは…
姉ニルヴァーナの娘が産まれた時に駆けつけたダイダロスはその赤ん坊をみるとこう言うのだった
「可愛いなぁ〜ねぇ…この子の名前は決まってるの?」
まだ決まってないとわかると続け様にこう言った
「今日から君の名前はリン=ダリアだよ〜大きくなったら僕のお嫁さんになってね♡」
その言葉を聞いたリンスロットとニルヴァーナは驚きダイダロスを説得するのだった
叔父と姪である2人は結婚出来ない事を教えて諦めさせようとした
しばらくの押し問答の末ダイダロスは諦めた…かに思えた
しかしリンダリアが成長し可愛らしい少女になる頃、ダイダロスは影から彼女を見守っていた
リンダリアは評判の美少女に成長し彼女に目を奪われる男が沢山いた
彼女を守る兵士も評判を聞いた近隣の国の王子もリンダリアとお近づきになりたいと思っていた
しかし影でダイダロスがそれを阻止していた
自分の目が黒いうちはなんとしてもリンダリアに悪い虫が付くのが嫌だったからだ
裏で手を回してリンダリアに求婚しようとした王子を粛正した事もあった
その事は誰にも知られずに遂行されていた
ディナラインの王子としての振る舞いを崩す事なく人知れずリンダリアにちょっかいかける男達を遠ざけていたのだ
リンダリアが年頃になるとリンスロット王が良い縁談話がないか近隣の国を探し始めた
流石にリンスロット王の行動には口を出さないダイダロスは焦りを感じていた
リンダリアが他の男のモノになるのが嫌だったからだ
幸いリンダリアは自分を慕ってくれていた
リンダリアが度々城を抜け出して自分の国に来る事を注意しながら内心は嬉しくて仕方なかったのだ
そしてある日リンダリアに縁談が決まった
ダイダロスはどうする事も出来なくなった事に悲観していた
リンダリアが他の男に抱かれる事になるのを嘆いた
しかしその前にリンダリアが自分の所にやって来てダイダロスに嫁ぐ前に抱いて欲しいと言って来たのだ
ダイダロスは戸惑ったが内心は嬉しくて飛び上がりそうになる気持ちを表に出さないようにリンダリアに接した
そして彼女を抱いた
始めは戸惑うフリをして段々と自分の欲望のままに身体を重ねた…朝まで何度も何度も…
そして嫁ぎ先が決まっていたリンダリアが妊娠しているのが判明したのが数ヶ月後だった
リンガイアは大騒ぎになった
父親が誰なのか問い詰められたリンダリアから衝撃の告白を受けたリンスロットとニルヴァーナは驚愕した
叔父であるダイダロスが父親だと聞かされてニルヴァーナはショックを隠せなかった
もちろんリンスロットも驚いたが彼はダイダロスの強かな性格も見抜いていた為に今後の事をどうするか思い悩んだ
ディナラインの王と話し合いをしてダイダロスに王位を譲った上でリンダリアを嫁がせる事にするしか無かった
それしか方法が無かったのだ
孕ったリンダリアを他の国の王子に嫁がせる事など到底無理だったからだ
こうしてまんまとダイダロスは愛するリンダリアを妻にする事に成功したのだった
歪んだ愛情だったが彼は妻を大切にして幸せを手に入れた
その話をダイダロスから聞いた極楽亭の店主の北川と錦野は驚愕するのだった
するとその場にやって来た人間の神から驚きの話を聞かされた
「何故そんな事が起こったのか理由はわかってるよ…ダイダロスとリンダリアが結ばれるのは決まっていた事だったんだよ。でも2人が産まれてくる時期を故意にずらされた為にこのような事態になったんだ」
「故意にずらされただって?」
「そうだよ…それが出来るのは1人だけ…」
そう言われた北川と錦野は考えた
そんな事を出来る可能性があるのは…
「まさか魔王が?そうだとしたら何の為に?」
そう問われた人間の神はこう結論づけた
「邪魔なリンガイアを滅ぼすきっかけを作る為だと思うよ…国の周りの魔物を活性化させてられたリンスロットを魔物討伐に行かせてニルヴァーナを孤独にさせその上で幸せだったダイダロスを亡き者してニルヴァーナを絶望させて自害するように仕向けた…結果リンダリアは故郷に追い返された…そしてエルフの里での悲劇も魔王の意のままに実行された…リンダリアはエルフを毛嫌いするようになり逆恨みして邪魔なエルフ王を暗殺するように仕向けた…そしてそのリンダリアをリンスロット王が裁く為に殺すように仕向けた…人間を精神的に弱くしてから内乱が起こりやすくして上でリンガイアを攻めたのさ」
「なんて手の込んだ事を…一つの国を滅ぼすのにそこまでするのか…」
ダイダロスはワナワナと震える腕を必死に抑えていた
「それだけリンガイアは普通に攻めても陥落させる事が難しかったからだね…魔法で強力な結界を張ってあったしね」
「それでも手の込んだ事をするんだな魔王も」
「それだけリンガイアは魔王にとって脅威だと言う事だよ…でもそこまでしたけど魔王は結果的にウィングナイト達に倒されてしまったね…いくら足掻いても迫り来る運命には勝てなかったと言う訳だね」
そう言い残して人間の神は極楽亭を後にするのだった
極楽亭に残されたダイダロスは何とも言えない表情をしていた
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