第12話 極楽亭の1日

極楽亭の店主北川の1日の様子を見てみる事にしよう


朝は神様に食材を用意してもらいそれに伴ってどう調理するか決めていく



「今日はこんなの作ったけど使えるかな?」



「これは立派な…鮭ですかね?」



「聞いたイメージを形にするのはけっこう難しくてね〜何度かやると君の望みのモノに出来るんだけどね」



「とりあえず捌いてみますよ」



「じゃあ頑張ってね〜あとで私も食事しに来るから材料残しといてね〜」



(食べる満々なのかよ?)



夜の開店に向けて仕込みをしていると誰か尋ねてきた



「すみません…営業時間は夕方の5時からなんです」



「店の客じゃ無いぜ…久しぶりだなぁ尋?」



「お前…錦野諭か?」



「覚えててくれたのか?嬉しいなぁ」



「なんでお前がここに?」



「実はよお…俺も死んじまってさ〜気がついたらこの世界に居たんだ…そしたら神様って奴にここに行ってみろって言われてさ〜そしたらお前が仕込みしてるじゃんか〜びっくりしたわ」



「びっくりしたのはお互い様だ!そうか…立ち話も何だから店の隅の席に座っててくれ」


「忙しそうだな…手伝おうか?」


「え?お前、料理出来るのか?」


「独り暮らしが長いからなぁ…仕込みくらいなら手伝えるぜ?」


「なら頼むよ…助かるわ」



錦野諭とは幼馴染であった



お互い就職するまではよくつるんでいた仲だったが大人になり疎遠になっていった


「お前が事故死したって聞いてよ〜線香上げに行った帰りに事故っちまって気がつけばこれだよ」


「そ…そうなのか?なんか悪かったなぁ…こっちに呼んだみたいになって」


「でも良かったぜ…あの世でお前に会えるなんてついていたぜ」


(果たしてそうなのか?どうも仕組まれる気がするのは気のせいなのか?)


北川尋は疑問を感じながらも仕込み作業を続けていった



そして営業時間になりいつものように常連客で賑わいを見せ始めた



「いらっしゃいませ〜おやリンダリアさん…ダイダロスさんも…いつものテーブル席でよろしいですか?」


「ありがとう!相変わらず人気ね〜あらそちらの方は?」


北川の隣に居た錦野を見たリンダリアが不思議そうな顔をした



「たまたまこっちに来てしまった私の幼馴染ですよ」


「錦野諭と言います。気軽に「さとる」って呼んで下さい」



その丁度一時間後…神様がやって来た



「おやおや…満席のようですね」



「神様〜相席で良かったら私達の所に来て良いよ」



「リンダリアさん?良いのですか?」



「もちろん!」



「キタ〜このイカめんたいおかわり頂戴!あと鮭の塩焼きも美味しいからそれもお願い」



「かしこまりました」




「いつもこんなに忙しいのか?」


「まぁな…新作出すと客が押し寄せるよ」


北川は笑顔でそう答えた


それを見た錦野は幸せそうな北川に安心していた


「良かった…お前が幸せそうで…生きてる時は死にかけたような顔してたからさ」


「え?そうなのか?って俺が働いてる所見た事あるのか?」


「ああ…営業マンとして忙しなく動いていただろ?俺は好きな仕事してたから申し訳なくてさ」


「そんな事思ってたのか?」




営業終了して店の片隅で賄いを食べながら今後の事を話し合った


「ここで働かせてくれないか?」


「良いのか?他にやりたい事あるんじゃ…」


「今日…お前と一緒に働いて楽しかったんだ…頼むよ」


「分かった…宜しく頼むよ」



こうして『極楽亭』は新たな従業員錦野諭を加えて新たな一歩を踏み出したのだった

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