第18話 文句なしのろくでなし
些細な挙動も見逃すまいと、相手の身振りに細心の注意を払いながら、⑤班は
僅かに離れた地点から、様子見を兼ねて
挨拶の代わりだ。
対する
「⑤班じゃん! 元気していた? ってか、女の子もいるじゃん。いっけね、隠さね~と」
言うやいなや、
そのお気楽な態度に、
これから合流する④班が、もしも日本に戻りたくない派であったらば、いったいどうしようかと、人並みに警戒しながら歩いて来たこれまでの道程は、何だったというのか。
油断は禁物。とは言え、半分近くの緊張はすでに解けてしまった。
ほっと息を吐いたことを悟られないよう、注意深く辺りを見回した
「お前ひとりか? ほかのメンバーはどうしている?」
まるで事情を探るような聞き方であったが、
つまらないことを尋ねるなと言いたげでこそあったものの、こちらを疑うこともなく、正直に答えてくれた。
「ん? いや、
「
独り言ちるような返答に、
だが、それには何も答えず、
「別れた?」
「あ~。だってあいつ、こんなところにまで来て、『殺人がして~』とか言っているんだぜ? 頭おかし~だろう」
その言葉に、今度こそ
発言から察するに、そのフィニアスという何某は、十中八九戻りたくない派だろう。異世界での衣食住を整えるよりも前に、殺人衝動に駆られるような人間が、まともであるはずがない。間違っても、日本に戻ることなんぞ考えていないはずだ。
裏を返せば、フィニアスと離れたからには、
ラッキーだ。
正式な協力関係を築けていない以上、喜ぶのはまだ早いとしても、少なくとも、肩の荷をおろすことくらいは許されるだろう。
④班に話がある。そう言って、
茂みの先。
巨木の一部が天然の
いい場所だ。
こんなところを見つけていたのであれば、なるほど、そう簡単に移動はしないだろう。
「
「なんだ? どこかで会ったか」
これまたずいぶんと面倒臭そうに、
「
「えっ、そうなん?」
驚いた声で聞き返していたのは、同じ班員の
「ああ、こいつは懲役三十年を食らった大物だよ」
「よく知っているじゃねえか! 役満だぜ? 褒めてもいいぞ」
言って、
日本の懲役刑――つまり、罰として働けというペナルティーは、有期の場合だと、最大でも
有期というのは言葉どおりの意味で、期限が定まっているということである。したがって、期限の定まって
ゆえに、懲役三十年という数字は、上限いっぱいということであり、尋常ではない。
「何をやったんだ?」
「飲酒運転だ」
「常習犯か……」
そうでなければ、
「ハッハ! 酒も楽しい。車も楽しい。とくりゃ、飲んで運転するのが、一番楽しいに決まっているだろう? それだけの
「
手を叩いた
パースの調査員は、日本各地の死刑囚がベースとなっているが、その一部には、
「ちっ、余計なことまで喋ってんじゃねえよ。……それで、お前たちは何しに来た?」。
本題に入る。
その予感で一瞬、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます