後日談

 後日、警察署に若い人妻から捜索願が提出された。

 最初、警察は事件であるかもしれないと色めいたが、失踪人の妻である頼子から事情聴取をおこなっていくと、警察官は顔を顰め、まるで興味が薄れたかのようだった。

 頼子は捜査を真剣に希望したこともあり、初動捜査が形式的に行われたものの、飯田駅の利用者よりスーツケースを持ち似た容姿の男性が電車に乗っていくのを見たという目撃証言が寄せられたため、それを基に最終的には一般家出人として処理された。

 何度も夫を探す様に警察へ押し掛ける妻の頼子に対して、精神的に不安定と判断した警察は両親へと連絡を取り事情を説明して引き取る様にアドバイスを行った。

結局、頼子は実家へと療養のために戻されることとなった。

 自宅アパートから離れることを拒む頼子に対して、女性警察官と両親で力づくで引きはがす様に連れ出したのち車に乗せられた頼子は、青白い顔をして爪を噛みながら「話を聞いたらすぐに帰らなきゃいけなかった…。きっと私に化けた何かが隆を連れてってしまった」と独り言を呟いていた。


 頼子が町を去った頃、飯田の行政機関より、連絡文がメールやFAXで特定受信者へ送信された。その文面は以下のとおりである。


  下記のような方を探しております。


 (例)「九澤 隆」さん(写真付き)失踪人


 ご一報ください。


  飯田 安全管理委員会 伝承係

 

 ※本件は細心の注意を払って管理して頂きますようお願い申し上げます。



この物語はフィクションです。

決してノンフィクションにするような行為を固く禁じます。

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落ち人伝承 鈴ノ木 鈴ノ子 @suzunokisuzunoki

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