第15話「護衛開始」

「……えっ!天ヶ瀬って…もしかしてあの天ヶ瀬?」

「はい、そうです」


 やっぱりか……これは随分と大物な父を持ってるんだなぁ……


「それで、天ヶ瀬組は日本で裏世界五大名家と呼ばれてるくらいですごく強いんです」


 それも知ってる……一般人でも知ってるんじゃないかってレベルで大きな組織だからな。


「そこでお父様の組を潰そうとしている他の組が私を誘拐してことを有利に進めようとしているそうなんです……」


 ほう?なるほどな、話はだいたいわかったぞ。


「でも今は私を守ってくれる人がいなくて……」

「理由…聞いてもいいか?」


 すると遥葵はゆっくりと頷いた。


「これは組内でも極わずかの人達しか知らないことなんですが」


 そんな事を俺に教えてもいいのか?という疑問が頭をよぎった。


 だがそんな俺の気持ちはよそに遥葵は続ける。


「先日父が病気で倒れたんです」

「……え?」


 遥葵が言った言葉は思いもよらないものだった。


「今は入院して容態もだいぶ落ち着いてきました」


 ですが、と言って続ける。


「父がいなくなった上層部は大忙しなんです」

「なるほどな…それで俺に助けを、」

「はい…もちろん渚沙さんが嫌なら無理強いはするつもりは無いので…」

「いや、やるよ。遥葵を狙ってくる他の組の奴らから守ればいいんだろ?」


 改めて問うと遥葵はコクリと頷く。


「組の人達からは明日まで待ってくれれば護衛をつけれると言われたので」

「そうか、じゃあ明日までの任務だな」

「はい、そういうことになります」


 正直ヤクザとかそっちの世界の住人と関わるのは御免だと思っていたが遥葵の本当に困っている顔を見てしまったら断ろうにも断れない。


 しかも天ヶ瀬組の組長といったら裏世界には相応しくないほどの優しさをもちあわせていて数多くの人たちからしたわれてるとか……


 まぁ高校生の俺に出来ることはたかが知れてるかもしれないが遥葵に危害が及ばないよう精一杯頑張ろう。


 たった2日だしな。


 ……あ、煌希達とはどうしよう。ま、あいつらならいっか。


 星那達とは3日目に沢山遊べばいいし何とかなるか。


 みんなにこのことを伝えて余計な心配かけるのも悪いし上手く誤魔化して伝えなきゃな。


「ん?どしたんだ?」


 目の前で遥葵がずっとモジモジしていたのを気になって声をかけた。


「すみません…ずっとお手洗いしたくて……」


 しまった、デリカシーに欠けていた……


「ごめん、俺は待ってるから行ってきていいよ」

「はい…すみません」


 さすがにトイレの中まで護衛する訳には行かないので女子トイレの前で待つことにした。


 ……これ不審者認定されないかな…?


 微かな不安を胸に少し周りに目を配る。


 人気のないトイレだったせいか人の姿は無い。


 そんな中足音が4つほど近づいてきた。


「はっ、早速かよ…」


 俺の目の前に現れた屈強な男たち4人。


「まずは俺から消そうってか」


 そりゃそうだよな、こんな高校生の護衛1人なんか簡単にやれそうだもんな。


「そこを退け」


 1番体の大きな男がドスの効いた声で言い放つ。


「残念だけどそれは出来ないね」


 俺はポケットの中に入れていた手を取りだして戦闘態勢に入る。


「じゃあ死ね」

「おいおい、俺の幼なじみラブコメにそんな物騒な言葉要らねぇよ」


 俺はただ幼なじみのみんなと楽しく過ごしたいだけなのにどうして毎回戦ってんだか。


 もしかして幼なじみラブコメじゃなくてヤクザとのアクション漫画だったのか?


 ……いや、ただ俺が巻き込まれ体質なだけか…


「何訳のわかんないことを言ってんだか、とっととくたばれ」

「くたばれはてめぇらだよ仁義も通せねぇクソヤクザがよっ!!」









    ー第3章 仁義なき戦い編ー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

嫌われてたと思っていた7人の幼なじみから本当は好かれてたことに気づいたいじめられっ子の俺は今まで俺の事をバカにしてたヤツらにざまぁ!!しようと思う 星宮 亜玖愛 @Akua_kaku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ