第5話 探し人

「だれが入っていいと言った」

青年というよりももっと繊細な声がする。

ハーブの中でうずくまっていたフリルのついたシャツに黒いズボンの少年が振り返る。

と、少年はまず停止した。

風が吹いて。

白と、茶、そして黒のまだらもようの髪の乙女が、飾り気もない深緑の服を着てスカートをひらめかせていた。

「あなたなの?あなたじゃなさそうね」

そう言い放ってやりたかったが、相手は高貴な方らしい。服装がというより、立ち振る舞いや仕草が自分たちと違う。けして手すりに肘をかけたりしないとか、とにかく隙を見せない。恭しささえも備えている。だが、そういう人種だというだけで。

「どこの者だ」

「城下の村からやって参りました、ミケという者です。特徴は、この三毛猫模様の髪です」

「かえれ」

「水の国の者の占術、信託で、わたしはここに『特別な人』を探しに来たのです。ハーブ園にいると聞きましたが、他に人は?」

少年は顔を赤くした後、呼吸を苦しそうにして、小屋にもたれかかる。近づこうとすると手で制された。

「庭師の、ダンのことじゃないのか?」

苦しんだ後、やはり繊細で村や町の男たちよりずっと澄んだ声で少年が答える。

「そうですね、あなたじゃないでしょう。私の髪を気味悪がる人ではないと信じています!」

少年の上下していた肩がゆっくりおさまる。なんだろう。

「庭師の方はどこに?」

「……黒薔薇の園だろう」

「……案内できなさそうですね」

睨んでやりたい気持ちと、その通りで弱々しくもある気持ち。少年の胸の中が透けて見えるようだった。

「反対方向だ。日当たりのいい場所を目指せ……」

「むしろ、日光に当たった方がよいのは、」

あなたなのでは。

すると、意地悪そうで、いたずら好きそうな顔をした先程の短い髪のメイドが小屋を周りこちらへやってきて、

「コクヨウ様?!どうして!」

「気安く呼ぶな」

ひっつくメイドを引き剥がし、ハーブ園から城の中へと移動していった。

「あなた!コクヨウ様と!まさか!」

「今の方は庭師の方ではなさそうね、具合が悪そうだったから、……行ってあげるといいわ」

私は特別な人を探しているのだから。


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