/// 18.修行という名の養殖活動

翌日、同じように加奈を連れて装備を買い込んだ。

「この範囲で」と三人と同じように袋を渡すと、中を確認した後、目をトロンとさせて僕に擦り寄り「ありがとうタケルく~ん」と甘えた声でお礼をいってきた。また違った反応に少し戸惑う。

例のピンクなセット装備があるのだが、さすがにあれではまずいだろうとそれなりの装備に買い換えた。もちろんトータル1億ほどの物、まあ少し足はでた程度の物なのでこの店では最高級にあたる装備であった。

お昼前、予定より少し早めに帰宅したのだが、昼食と片付けが終わると、佳苗の部屋に集まって四人がファッションショーのようにしていたので、さりげなく部屋に入り込んでは素知らぬ顔をしてこっそり眺めていた。眼福である。


◆◇◆◇◆


さらに翌日、僕らはまず佳苗と加奈を連れて、サフィさんとダンジョンの70階層までポータルを使ってやってきた。佳苗と加奈の二人はもう怖くて僕にしがみついている。

その二人の指には先日購入した竜石の指輪(命)がはめられている。何かあったら困るからね。


「大丈夫。心配ないから。サフィさんは二人を頼むね」

「おう!任せとけ!」


そう言うと、僕から引き離した二人を隅の方に連れていくと、壁を背に二人を立たせ、守りを固めるように前に立った。

これでどんな魔物が来ようと、二人の安全は確保された。いざという時には【竜鱗の障壁】という防御壁を張るスキルに頼れば完全にセーフゾーンとなるだろう。まあそこにずっと引き篭もっているわけにはいかないけれどね。


「じゃあ行ってくる」


そう言うと僕は軽い足取りでダンジョンの奥の方まで進んでいった。


数分後、僕は3体ほどの雷狼(ライロウ)という魔物を引き連れってきた。というより今そいつらは僕の両肩と尻に牙をたて、引きずられている。そのことに悲鳴をあげながら佳苗と加奈は駆け寄ろうとしているが、サフィさんに押さえられて動けないようだ。


「よっ!と・・・」


僕はその雷狼(ライロウ)を【人体操作】をつかって手足口の力を奪い取った。力なく地面へ落ち横たわった3体を見て、サフィさんは二人を開放した。

恐る恐る近くまで来た二人だが、まずは佳苗に金剛石の魔刀(死)を持たせる。何やら刀身が黒いオーラを放っている短刀ではあるが、安らかな死を与える即死攻撃が付与されているため、何度か刺せば討伐も容易いであろう。

雷狼(ライロウ)を選んだのは、動けなければ比較的外皮が柔らかなこともあってであった。他の岩竜やガーゴイル、ベビーデーモンといった魔物もいたが、二人はもう少し強くなるまでは、とその場で僕が倒していた。


そして1体の雷狼(ライロウ)の頭を押さえ、佳苗に「ここをスバッとやっちゃっていいよ」と伝えると、はじめは躊躇していたが、レベル上げ、と最初に伝えていたのでそれなりに覚悟はしていたようだ。しかしそれが60階層の魔物になるとは思っていなかったようだが・・・

3体の雷狼(ライロウ)を倒したことにより、20であった佳苗のレベルは50台までアップしていた。錬金術師は錬金術を使用することでレベルが上がる。だがここまでの戦力差のある魔物を討伐するのであれば、そのレベルアップ速度は段違いであった。

レベルアップ後、佳苗はかなり体が軽くなったといっていた。その能力アップの実感に喜びつつ、僕はまたダンジョン奥まで行っては雷狼(ライロウ)を引き連れて戻ってきた。雷狼(ライロウ)ホイホイとでも言おうか・・・


途中で昼食をはさみつつ、後半戦へと突入した。サフィさんが護衛のみで退屈しないかな?と思っていたのだが、群れのメスがパワーアップするのを見守るのも群れのメスのトップとしての務め、と種族としてのギャップを感じつつ、まあ本人が良いのならと安堵していた。


午後からは岩竜、ガーゴイル、ベビーデーモンといった魔物も構わずに引き連れてきて、討伐させていったのでそのレベルアップ速度はかなりのハイペースとなっていた。

さすがに岩竜はレベルが上がった二人にも固かったので、そこはサフィさんが頭皮をガリっと【牙】で削れば後は何度か突き刺すだけの簡単なお仕事と化していた。でもそのやり方は見た目ちょっと引くよね・・・


気づけば二人とも100オーバーの上級冒険者として生まれ変わってしまった。これで一人でも多少の困難にぶち当たっても切り抜けられるだろう。

暫くは急激にレベルアップしたことによるギャップで、日常生活に注意が必要であったが、それは追々慣れるしかないので仕方がないと思って頑張ってもらおう。


◆◇◆◇◆


翌日は悠衣子ちゃんと康代ちゃんの二人を代わりに引き連れての養殖プレー。

さすがに元々冒険者として活動していたのでレベルもすでに50オーバーであったため、最初から雷狼(ライロウ)だけでなく、岩竜、ガーゴイル、ベビーデーモンも引き連れて戻ってきた。

さすがに最初はびっくりしすぎて気絶してしまった、この辺りは実際に冒険者として活動していた分、魔物の恐怖というものが分かっているからなのだろうか・・・


それでも二人はすぐになれ、比較的早い段階でレベル100を突破していた。

午前中にはある程度のめどがついたので、一度外まで戻すと、さすがに我慢できなくなったサフィさんと一緒に80階層まで戻ってストレス発散をした。一気に100階層まで行って、ハイグレーターデーモンや黒魔竜、ガーゴイルキングといった魔物を楽しそうに粉砕していくサフィさんを眺めていた。


一撃とは言わないまでも、3~5回程度で頭をゴキリと砕いていく。さすがに違和感を感じて視てみると・・・スキル使ってないことが判明・・・サフィさんやっぱストレス溜まってたんだな・・・

20体ほどの魔物の頭を砕いたところで、スッキリとした笑顔を携えて戻ってきたサフィさんを出迎えつつ倒した魔物はちゃんと回収していく僕は「スキルなしでもサフィさんは強いね」と褒めたら嬉しそうに体をこすり付けてきたので、急ぎ帰ることとなってしまった。

美女の汗の匂い。いいよね!


◆◇◆◇◆


そんなこんなで1週間ほどこの養殖作業は続き、四人全員が200オーバーとなっていた。そろそろいいだろう。というかやりすぎた感がある・・・

それぞれの武器もしっかりと購入した。いつまでも金剛石の魔刀(死)の使いまわしじゃいかんしね。


次はどうしようかな?やりたいことがいっぱいあって止まらない妄想の中へと飛び立つ。

実は、最近の僕は・・・特に佳苗と結ばれてからの僕は「なんかさー、好きなことを気兼ねなく自由に謳歌するのって・・・いいよね!」と解放された気分に乗ってラノベで見た『異世界チートで大冒険』みたいなことを考え出すと止まらなくなっていた。これもマグマ生活約一年の反動なのか・・・


強くなった。お金もある。素敵なパートナーたちもいる。最高に浮かれていた結果、少し忘れていたんだ。この世界も理不尽なことがたくさんあるってことを・・・

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