/// 11.レッツショッピング!

「なんかすげーデカイとこだな!」

「そうですね」


サフィさんが見上げているのは、王都の最高級店『王都総合魔道センター・南出moreー瑠』であーる。


「1階は武器中心だから、まずは2階かな?」

「そっか!じゃあ早く行こうぜ!」


逸(はや)る気持ちのサフィさんと一緒に、防具中心の2階へ進む。

なぜ詳しいかというと、王都に戻った際に勇者たちが立ち寄ったので、各々おのおのが買い物をしているなか、もちろん何も買う予定の無い僕は、予定の時間いっぱいまで探索に明け暮れていたという過去があったからである。

買い物もしないしヒマだったからね・・・


2階へつくと、男性女性とコーナーが分かれていた。


「そっちは女性用だから何か気に入ったのあったら買っていいよ」

「分かった!」


白金貨5枚を手渡すと、笑顔に花を咲かせ、サフィさんは女性向けのコーナーへ走っていった。


「よし。じゃあ僕も何か見てみるか。最低3着ぐらいはほしいいな・・・指輪とかの魔道具は・・・追加の報酬が入ってからでいいか」


男性向けの防具コーナーに向かった僕は、魔法耐性が強くかかったものを中心に見て回っていた。


「こ、これ・・・素敵ね・・・」


僕が見ていた全魔法体制(強)のローブに手を添え、僕に向かって話しかけてきた人がいた。


「ひ、久しぶりね・・・大川くん・・・」

「えっ、あーえっと柏木さん、でよかったよね?」


声の主を確認すると、うっすらと記憶に残った元クラスメートの記憶から名前を何とか探し出した。

たしか佳苗(かなえ)の友達グループで良かったかな?


「うん。柏木加奈。大川くん、やっぱり生きてたんだね・・・よかった・・・」

「え、あっ、ちょっと・・・」


柏木さんは、涙声で・・・僕の胸に飛び込んできた。

戸惑う僕をよそに、柏木さんは僕にしがみつくと肩を震わせて声を漏らしていた。

泣いてる、のかな?

突然のことにそのままオロオロとしてしまう僕は、後ろからかけられた声によりさらにオロオロしてしまうのだった。


「おい!何イチャついてんだ?俺も混ぜろ!」

「うわちょっと!サフィさん?重っくないけども!」


後ろからしがみついたサフィさんに、胸の中にはあまり面識のなかった元クラスメート・・・もうパニックであった。


「ご、ごめんね・・・なんだか、嬉しくって・・・」

「そ、そうなんだ。じゃあ、うーん、ちょっと場所を変えようか・・・」


周りを見渡すと、すでに人の輪ができてしまっていた。その輪から逃げるように3人は4階の個室レストランへと向かった。

個室へと案内されると、僕とサフィさんが並んで座り、対面に柏木さんが座る。


「あ、あの・・・すみません・・・感極まってしまって・・・」

「いやーまあ逆にちょっと嬉しい、かな?」

「おい!いい加減俺にも紹介しろよ!」


何も説明なくここまで来たので若干サフィさんがイライラしていた。


「ごめんねサフィさん。こちら柏木さん。元クラスメート」

「は、はじめまして」

「そうか!ってことは・・・タケルをいじめてたってやつか!」


サフィさんが睨むので慌てて首を振る柏木さん。


「そんなことしてません!他の人達が大川くんに暴力を加えてたのを止めようとしたこともあります!・・・でも非力だからすぐはじき出されちゃいましたけど・・・」

「そうか!おまえ・・・いい奴なんだな!タケルの群れに入りたいのか?」


柏木さんの徐々に小さくなる言葉に、サフィさんはとんでもないことを口走っていた。


「えっ・・・ええええええ!」

「サフィさん何言ってるんですか!」

「えっ?違うのか?」


叫ぶ柏木さんに戸惑う僕、サフィさんんはきょとんとしていた。


「は、入ります!」

「えっ?」

「おっ!やっぱりな!」


どうなってんだ・・・僕はテーブルに突っ伏してしまった。

そしてそのタイミングで店員が注文を聞いてきた。


「お待たせしました!こちらメニューに・・・いかがいたしました?」

「あっ、大丈夫です・・・なんかおすすめを1人前で」

「私もそれで・・・」

「じゃあ俺は・・・適当に10人前でいいかな?」


注文を取りに来た店員は、戸惑いながらも復唱して戻っていった。


「柏木さん、さっきの話ってどういうつもりで返答したんですか?なんか色々誤解があるような・・・」

「私、大川くんの群れに入りたいなって答えたんですけど・・・」


僕はますます混乱してきた。


「サフィさんでよかったですよね?」

「ああ!そうだ!」

「サフィさんは大川くんの彼女さんなんですよね?」

「彼女?ツガイ?まあ、群れのメスだな!」


サフィさんの言い方に飲んでいた水を噴き出してしまった・・・そこは彼女じゃだめなんですか・・・


「私もその群れのメスに入ってもいいってことですよね?」

「おう!もちろんタケルがOKしたらだけどな!」

「おい!」


噴き出した水をおしぼりで拭きながら聞いていた僕は、つい大きな声で突込みを入れてしまったのだが、その後バタバタと走ってきた店員に「なんでもないです」と謝るのであった。


「柏木さん?どうしてそうなるのでしょうかね・・・」


小声で顔を近づけて聞く僕に、顔を赤らめもじもじとしだした柏木さんが「すき・・・なんです」と消え入りそうな声で言ったので、僕は空耳かな?と思って聞き直してしまった。


「私!ずっと好きだったんです!どんな形でもでもいいです!私も、ツガイたい!」

「おいー!!!」


大きな声でとんでもない返答をした柏木さんにまた全力で突っ込んでしまった僕。突込みキャラじゃないはずなのに・・・

あっ、ごめんなさい、名も知らぬ店員さん。あ、サイードさんっておっしゃるのですね。名札付けてますね。もう大丈夫です滅多なことでは叫びませんから・・・

僕は心の声で謝罪していた。

それを見てサフィさんは楽しそうに笑っていた。


「あの、僕はサフィさんとまあその関係がありますが、柏木さんはいいんですか?」

「はい・・・一緒にいられればなんでも・・・2号でも10号でも・・・」

「10号って・・・じゃ、じゃあサフィさん!サフィさんはいいんですか?その、柏木さんが群れ?に加わるのに・・・」

「おお!もちろんだ!強いオスがメスを侍(はべ)らせるのは当然の権利だ!まあメスのトップの座は譲らないけどな!」


僕は常識がおかしくなったのかと頭を抱えていた。


「お待ちどうさまです!本日のおすすめ『鳥の丸焼きと季節のフルーツ。どちらもシェフの今日の気分で作ったソースをぶっかけてみたw』が3つと、豚丼牛丼天津丼カツ丼その他ドンドンドーンとあるので食べたらここからとってくださいね!」


そんなタイミングでなんか色々ワゴンにのって運ばれてきた。

僕はその訳の分からないシェフの気分で作られたおすすめ料理を口に運びながら、どうしたもんかと考えていた。

同じように気まずそうに食べる柏木さんと、次々とどんぶりを流し込んでいくサフィさんを眺めながら・・・


結局、食事を終えると今後のことを話し合うため、三人で宿に戻った。


柏木さんは高級感のある部屋に驚きながらもちゃっかりとベットの上に顔を赤らめながら座った。

話し合いですよね?一応まだ昼過ぎですよ?

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